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カテゴリ:エッセイ
私は営業の仕事を28年間やってきましたが、私ほど営業に向かない人間はいないと思っています。
まず、人の機嫌をとることが嫌いです。 仕事の段取りとか、まったく無理です。 人付き合いが苦手です。 性格、暗いです。 すぐ、クヨクヨ悩みます。 要領が悪く、不器用で、小さいころから「お前は、何ひとつ満足にできない」と太鼓判を押されて育ちました。 だれが考えても営業なんかしてはいけない性格です。 でも、残念ながら、若い時からやりたいことが「武術」しかない。 いくらなんでも武術で飯は食えんでしょう。 それで、まあ、なんでも良かったんですけど、知り合いに会社の社長夫人がおられて、「どこにも行くとこなかったらうちへ来なさい」と言われたので、なんにも考えないで入社し、めでたく営業マンになったわけです。 仕事なんてなんでもいいと思っていたんです。 武術さえやれれば・・・・・。 でも、現実はそんなに甘くなかった。 営業マンである以上、営業ノルマがある。 そのノルマを達成しなければ、上司に叱られる。 それだけでなく、給料、ボーナスにも影響が出る。 なんで、こんな世界に入ってしまったんだろう? 日々後悔の日々でした。 いつやめようか、いつやめようかと思っていたんですが、私の先輩が辞めてしまい、そのお客さんを私が受け継ぐことになってしまった。 しまった!私もやめようと思っていたのに! 上司に「しっかりやれよ」と激を飛ばされ、思わず「はい、頑張ります!」と言ってしまった。 以来28年間、営業ノルマと客先のクレームと、メーカーさんの納期遅れに溺れながら、日々がんばってきました。 なんで続けることができたかといえば、負けん気が強かったからかもしれません。 なんにもできないのに、負けん気だけが強いって、とっても嫌な奴ですよね。 でも、そういうふうに生まれついたのだから仕方がない。 でも、やはりしんどい時が何度も何度もあって、クヨクヨもし、落ち込むこともありましたが、38年間って、すごいですよね。 だって、自分の最も苦手な分野で仕事をしてきて28年って、すごいと思いませんか? でも、なんとかやってこれたのは、武術のおかげだと思っています。 どんなに辛いことがあっても、日々、毎朝稽古しました。 そして毎週往復3時間以上かけて道場に通いました。 武術の稽古をすることが、私の生きがいでした。 武術の技の研究をし、いろいろ試して、工夫をして・・・・。 こういうことが楽しくてしかたがなかった。 仕事でどんなにつらいことがあっても、あ、また道場に行って武術の稽古ができると思うだけで、乗り越えていくことができた。 今、考えてみると、武術をやっていれば、仕事のことから技のことへ意識がフォーカスされて、いや、仕事のことを忘れているわけじゃないけど、意識の中心から外れていくのがわかります。 これって、武術をやっていなければ起きることではないのです。 あくまでも私の場合は・・・ですけど・・・・。 もし、私が武術をやっていなければ、毎日仕事のことで頭の中が一杯で、クヨクヨ考えてばかりいたでしょう。下手をすればうつ病とかになっていたかもしれません。 いつもフォーカスしているものから、別のものにフォーカスする。 こういうことができたから、私は自分を見失うことなく歩んでくることができた。 これは武術の技においても同じことで、関節技をかけられたとき、それを外そうと、「外すこと」にフォーカスするのではなく、相手に打撃を加えることにフォーカスする。 そうすると相手は意外と打撃に無防備で、打撃を食らってしまい、その隙に関節技を外すことができる。 関節技から打撃技にフォーカスチェンジするわけです。 これがフォーカスチェンジしないで、いつまでも関節技を外すことにフォーカスしていれば、自分を見失い、身動きができなくなってしまうでしょう。 武術は、私が社会の荒波を乗り越えて進んでいくための舟でした。 この船があったればこそ、今まで進んでこれた。 これからも、武術の舟をこいでいきたいと思います。 みなさんは、どんなふうに武術を人生に役立てていますか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.11.11 17:17:48
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