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林沖

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2020.11.11
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カテゴリ:エッセイ
私は営業の仕事を28年間やってきましたが、私ほど営業に向かない人間はいないと思っています。

まず、人の機嫌をとることが嫌いです。
仕事の段取りとか、まったく無理です。
人付き合いが苦手です。
性格、暗いです。
すぐ、クヨクヨ悩みます。
要領が悪く、不器用で、小さいころから「お前は、何ひとつ満足にできない」と太鼓判を押されて育ちました。

だれが考えても営業なんかしてはいけない性格です。
でも、残念ながら、若い時からやりたいことが「武術」しかない。

いくらなんでも武術で飯は食えんでしょう。

それで、まあ、なんでも良かったんですけど、知り合いに会社の社長夫人がおられて、「どこにも行くとこなかったらうちへ来なさい」と言われたので、なんにも考えないで入社し、めでたく営業マンになったわけです。

仕事なんてなんでもいいと思っていたんです。
武術さえやれれば・・・・・。

でも、現実はそんなに甘くなかった。

営業マンである以上、営業ノルマがある。

そのノルマを達成しなければ、上司に叱られる。
それだけでなく、給料、ボーナスにも影響が出る。

なんで、こんな世界に入ってしまったんだろう?
日々後悔の日々でした。

いつやめようか、いつやめようかと思っていたんですが、私の先輩が辞めてしまい、そのお客さんを私が受け継ぐことになってしまった。

しまった!私もやめようと思っていたのに!

上司に「しっかりやれよ」と激を飛ばされ、思わず「はい、頑張ります!」と言ってしまった。

以来28年間、営業ノルマと客先のクレームと、メーカーさんの納期遅れに溺れながら、日々がんばってきました。
なんで続けることができたかといえば、負けん気が強かったからかもしれません。
なんにもできないのに、負けん気だけが強いって、とっても嫌な奴ですよね。
でも、そういうふうに生まれついたのだから仕方がない。

でも、やはりしんどい時が何度も何度もあって、クヨクヨもし、落ち込むこともありましたが、38年間って、すごいですよね。
だって、自分の最も苦手な分野で仕事をしてきて28年って、すごいと思いませんか?

でも、なんとかやってこれたのは、武術のおかげだと思っています。

どんなに辛いことがあっても、日々、毎朝稽古しました。
そして毎週往復3時間以上かけて道場に通いました。

武術の稽古をすることが、私の生きがいでした。

武術の技の研究をし、いろいろ試して、工夫をして・・・・。
こういうことが楽しくてしかたがなかった。

仕事でどんなにつらいことがあっても、あ、また道場に行って武術の稽古ができると思うだけで、乗り越えていくことができた。

今、考えてみると、武術をやっていれば、仕事のことから技のことへ意識がフォーカスされて、いや、仕事のことを忘れているわけじゃないけど、意識の中心から外れていくのがわかります。

これって、武術をやっていなければ起きることではないのです。
あくまでも私の場合は・・・ですけど・・・・。

もし、私が武術をやっていなければ、毎日仕事のことで頭の中が一杯で、クヨクヨ考えてばかりいたでしょう。下手をすればうつ病とかになっていたかもしれません。

いつもフォーカスしているものから、別のものにフォーカスする。

こういうことができたから、私は自分を見失うことなく歩んでくることができた。

これは武術の技においても同じことで、関節技をかけられたとき、それを外そうと、「外すこと」にフォーカスするのではなく、相手に打撃を加えることにフォーカスする。

そうすると相手は意外と打撃に無防備で、打撃を食らってしまい、その隙に関節技を外すことができる。
関節技から打撃技にフォーカスチェンジするわけです。

これがフォーカスチェンジしないで、いつまでも関節技を外すことにフォーカスしていれば、自分を見失い、身動きができなくなってしまうでしょう。

武術は、私が社会の荒波を乗り越えて進んでいくための舟でした。
この船があったればこそ、今まで進んでこれた。

これからも、武術の舟をこいでいきたいと思います。


みなさんは、どんなふうに武術を人生に役立てていますか?





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Last updated  2020.11.11 17:17:48
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