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2011.09.26
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カテゴリ:映画感想

エミー リ・ロチャヌー「ジプシーは空にきえる」
(1976年 旧ソ連モルダヴィア共和国)


ウクライナとルーマニアの境にある、ワインで有名なモルドバ公国の
まさにドブロクのような映画です。ハマるひとはハマると思う。
特に、パラジャーノフの摩訶不思議なフォークロアに脳みそやられた人は
これ観るとさらにトランスできていいんじゃないかな。


◆ ◆ ◆

軍馬を盗むことを生業として
ジプシーの中で尊敬される若者・ゾバール。

軍人に追われて深手を負っていた彼を救い、
運命的な出会いを遂げた美女・ラーダは
近隣を移動する別部隊のジプシー娘であり「魔女」だった。

不思議な力と、あやしく光る黒い瞳を持つ彼女は
自らを荒馬にたとえるほどの激しい気性と気まぐれの持ち主。
定住者の金持ちまでを虜にするラーダの魅力にやられたゾバールは
彼女のために白い馬を盗み出し、死刑の処刑台から逃げ出しては
ひたすら情熱的にラーダを愛する。

結婚を望むゾバールとラーダだったが、
かれらはお互いに何よりも自由を重んじる性質の人間だった。

ジプシーは自由なようでいて、彼らなりに戒律は厳しく
一度結婚してしまうと到底自由とは言いがたい。
それを考慮してでも一緒になりたいと願うゾバールだったが、
ラーダは「結婚するなら皆の前で求婚して」「跪いて足にキスして」と
彼女自身の、おもに今後の自由のための面子にこだわる。

ゾバールもまた、ジプシーの中で「男の中の男」と言われるような
軍馬専門の盗賊の頭領をつとめあげた男。
衆目あるところで女に求婚し、ましてやひざまずく行為に
抵抗はあっても、いとしいラーダのためにできないことではない。

だがそれで今後、共同生活を営む集団の中で
はたして自分は「男」として扱われるのだろうか?

男女それぞれが集団内の
「女の女王」であり「男の中の男」であるがゆえ
余計に自分達のジェンダー(社会的性差&性役割)にはまっていく。

意を決して(言い訳をしながらも)一族の前でラーダに求婚し、
その前にひざまづいたゾバール。
皆が息を呑む中、ゾバールの
「これだけしたのだから言うことを聞け」という内心に気づいたのか
ラーダはゾバールに鞭をふるって転ばせ、皆の笑いものにする。
全てをかなぐり捨てて、再度ゾバールはラーダの前に立って求婚するが
そこでもまた「だめよ。ひざまづいてから」というラーダの声が。

気づくと彼は、逆上してラーダの胸を匕首でひと突きしていた。

ラーダの気まぐれと、一歩も引かない姿勢に逆上してしまったゾバール。
自分のしてしまった行為にいまさらながら慌て、
必死でラーダを介抱しようとするつかの間、背中に衝撃が走った。
傭兵上がりのラーダの父が、愛娘の敵とばかりにゾバールを刺したのだ。

愛し合っていたはずの二人は、折り重なって死を迎える。
折りしも明朝。ジプシーの集落からは煙が上がり、
彼らの魂も空へと消えていくのだった。

◆ ◆ ◆


ミュージカル仕立てのストーリーであり、セリフも少ないので
ちょっと補足を入れてあらすじは書きました。
原作「マカール・チュドラー」の細部も混ぜてます。
(※原作者はゴーリキーですが、マキシムの方じゃなくって
 もうちょい知名度が低い方の小説家ゴーリキーです)



ありていに言うと、ジプシー版カルメンのような話ですね。
わがままな美女とそれに振り回される男の、
相思相愛なんだけど…っていう悲劇。

ラーダ役スヴェトラーナ・トマのエキゾチックな美しさは必見。
当時学生だったのをスカウトされたそうですが
個人的に一番好きなタイプの顔立ちです。
遊牧民の男たちが持ち馬を飾り立てる(※参照:「乙嫁語り」)のは
ステータスとかの証、というのは色んなところで聞いていたけど
ジプシー女性たちの飾り立て具合は
もはや馬デコとでも呼びたい種類のもので
女子ってほんと身近なもん飾り立てるの好きだよね……と
なんか遠い異国の女子力を目の当たりにした気分。

役者の顔がみんな、気持ちいいほどイイ顔していて
観ていてストレス感じることがぜんぜんないのもいい。



ロケはザカルパチア地方のヴイノグラドフ市で決行。
監督自身もここが出身地のようです。
登場人物がほぼ全員恐ろしく情熱的で、歌は口パクとはいえ
踊りも素人っぽさがリアルで泥臭く素晴らしい。
監督と音楽担当のドガは、このために当時のソ連各地を旅して
ジプシー民謡を集めたらしく、口パクはともかく曲は最高です。

通常、ジプシー(正式名称ロマ)の女は
金貨や銀貨を飾りとして身につけますが
彼女らが一斉に仰向けになって体を震わせ、
コインを鳴らす様はエロかった。
ハンガリーのチャルダッシュと比べるとダンスの動きは緩慢で、
商業的な洗礼を受けずに発達した感じがあります。

細かなカットの一つ一つに制作側のセンスを感じる、
豊穣なイメージを持つ作品。
ダンスの最中に別のショットが映される辺りオシャレで、
ラブシーンにダンスシーンが挿入されるのはインド映画っぽい(笑)
見ていて楽しい、動き続ける生命力に満ちた映画です。

文化的に日本人である私にとって彼らの風俗生活は異質なものです。
郷愁の感じようはない。
けれど郷愁としか呼べない胸の高鳴りを感じる。

ジプシー映画や土俗的な作品を観るときの私たちの、
憧れと侮蔑と尊敬と優越感の入り混じった視線には確かに
「野蛮なるもの」への憧れという名の
一種のコンプレックスが潜んでいるように思います。
農耕民族による放浪への憧れってやつでしょうか。
単なるオリエンタリズムって気もしますが。

「天井桟敷の人々」で、
定住者のナタリーが流れ者の美女に向かって言う
「あなたはどこに行ってもお客様、みんなに歓待され、喜ばれる。
 あとに残されてずっとそこで生活する私の気持ちはわからない」
ってセリフが思い出されます。

放浪する側にもそれはそれで世間の目とか戒律があることに
私達が言葉以上の実感をすることは難しそうです。

いろんな気持ちが去来する、素敵な作品です。

ツタヤにあるはずなのでぜひ!





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Last updated  2013.06.22 01:36:00



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