《第22話》 【追突】(3)
≪3≫--------------------------------------------興奮と緊張と小雨の中にいる彼に向きなおっって言った。「あのねぇ・・今日のとこは何もなかったってことにしてもいいよ」追突してきた彼は「え?ええ?どういうことですか?」と、戸惑っているようだった。「オレの車もそんなに傷まなかったし、警察も呼ばないし、損害賠償もなしでいいと思ってる」そういうと追突君は、ぱぁっと表情が明るくなった。「ほ、本当すか?」「うん。ただ無罪放免にするには、条件が2つあるんだ」「条件?なんすか?条件って」追突君、ちょっと表情が曇ったかなと見えたので、安心させて落としてるのだから話を聞く態勢にはなったろう。「条件の1つはね、雨の降り始めは路面が滑りやすいってことを覚えてほしいんだ」「はあ?」出された条件は、自分に不利なことなのかと構えていた追突君は、きょとんとしている。「あのね、今回ぶつけたことで、雨の降り始めは道路がすべりやすいってことを、身をもって体験したろ。それをわすれないで、これから気をつけてほしいんだ」「あ、ああ、そういうことですか。わかりました・・それでもう1つの条件は?」よしよし、自分から聞いてきたな。これなら話は入りやすいだろう。「もう1つの条件はね、その雨の降り始めは危ないってことを、人に話してほしいんだ。いろんな人に伝えて広めてほしいんだ」「人に伝えて広める?・・それだけでいいんですか?」「うん、それだけでいいよ。これでボクとキミの事故もなんにもなしってこと」「本当すか?ありがとうございます」