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医療崩壊の真犯人/村上正泰・著 医療費に関する問題は、高齢化社会の進展等により増大する医療・介護費用の財源問題に尽きるように思います。 この本は厚生労働省の元官僚である著者が、小泉政権時代の医療費抑制政策の場面等に立ち会って、政策が如何に医療の崩壊を招いたかを綴っています。 報道でも一時期騒がれた、「患者のたらい回し」、「医療ミスの頻発」、「医師不足」、「地方病院の閉鎖による地域荒廃」などの実態が、すべて増大する医療費の抑制を目的とした小泉政権の「骨太の改革」から来ているという話なのです。 財源そのものの問題を解決しなければ、これはいずれ国家存続の問題になるわけですから、手をつけなければいけません。 一方で、財源問題に突っ込んでいくと、増税により国民全体に負担を強いることになるか、医療費の抑制により「患者」すなわち弱者にしわ寄せがいくことになる。 どちらかで考えれば当然、前者、つまり財源を増やしていく方法しかないわけですが、骨太の改革では、それ以前の問題として、社会福祉行政のひずみを解消することで、医療費を抑制できると考えたのでしょう。 つまり、昔はそれほど重症でもないのにすぐに入院させられたりとか、余計(と思われる)薬がたくさん出たりとか、病院が高齢者のたまり場になっているかと、そんな無駄と思われる話がいろいろありましたので、”効率化”によって医療費を抑制できるのではないかという考え方もあったと思いますし、現在もそうだと思います。 実際、入院期間や過剰な薬の問題はだいぶ改善されたという実感があります。 しかし、どうもこの本を読むと骨太の改革が進行する中で、厚生労働省内部では当然抵抗が多く、政策と行政省とがぶつかり合ううちに、大筋だけは政策の意図する通りに決まり、ディテールがほとんど議論されないで来てしまっているように感じます。 例えば、さんざん叩かれた「後期高齢者医療制度」の問題についても、考え方が閣議決定されてから5年、法律ができてから約2年の期間があったにも関わらず、この制度制定に関わった政権がなくなってからはあまりディテールに触れられなかったため、制度開始直前になっていろいろな問題が取り上げられ、批判が続出したわけです。 私も当時、スタート直前になってなぜあんなに騒いでいるのだろうと思いましたが、そもそも「良くなかった」と考えられている小泉政権時代の医療政策に、その後常に青色吐息の状態で来た時の政権が触れられるわけがないよと思いました。 しかし、自民党政権である以上、過去の政策を表立って曲げることはできないと思いますので、それはそれでひとつの考え方であるが、今の日本の社会制度で推し進めるには大変危険な医療費抑制政策を方向転換できるということは、民主党政権になったことが大きなプラスであると思います。 そうなると医療費の増大はある程度仕方がないとして、財源確保の手段として、無駄の排除、景気回復による歳入増加、増税、社会保障費の国民負担増といった方法があります。 これらはどれもやっていかなければならないことですが、鬼気迫る日本の財政再建について、アナウンスメントとして何か打ち出さなければならないとすれば、それは消費税率のアップなのだろうと思います。 管総理が就任当初に消費税率のアップを掲げて参院選は散々な結果でしたが、元厚生大臣でもあり、財務大臣でもあったという立場を考えますと、気持ちはわかるなあと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.09.26 07:04:51
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