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イアン・ハッキング『偶然を飼いならす』(楽天ブックスに再入荷したようです!)を読み始めた。
日記のタイトルは、『偶然を飼いならす』第3章のタイトルからの転載。 人口、離婚件数、出生率、偏差値、食料自給率、少年犯罪件数、我々の日常は統計にあふれている。 この本は、統計なるものが、近代国家の中で生成し、熱狂的に支持され、今や我々の生活と切っても切り離せないまでになったプロセス、そして我々が統計にいかに「支配」されているのか、ということを厚く精緻な記述で書ききったものである。 私はこの本を読んで、「平均」や「正規分布」やなどの統計学の基礎概念が、犯罪学と密接に結びついていたことを知った。 しばらく『偶然を飼いならす』についての日記を続けていこうと思うので、これについてはおいおい触れていくことにする。 ところで、この3章のタイトルを読んで、最近の年金に関するニュースを想起された方も多いだろう。 今も昔も「官僚は隠匿する」存在なのである。 もっともハッキングが扱ったのは名君で知られるフリードリッヒ1世時代の18世紀プロイセン。 当時のプロイセンは、統計の先端地であり、国力に関連する様々な項目に関して調査と集計が試みられていた。 例えば、家族についての分類項目:家長、女主人、男児、男女、職人、農場労働者、使用人、青年男子、未婚の女子。 職人以降の項目は、当然のことながら血縁に含まれる家族ではなく、「召使」や「小作人」の類である。 産業や建築に関しても綿密な統計が整備されつつあった。 当時の大陸ヨーロッパの政治状況を考えれば、国力に関する実態は極秘事項である。 ゆえに、「官僚は隠匿」したのである。 このように統計の最先端を行っていたプロイセンの影響で、ヨーロッパの知識人の間にもいろんな数値を集めるのが大流行。 ゲーテもその一人。 中には、旅先で有名な油絵を見ても、その絵のサイズを測ることに夢中で、絵そのものには興味のない人もいたという。 そして旅行記の中で様々な数に関するデータを公表することが、当時のイケてる知識人の条件だったようだ。 ゆえに「アマチュアは公表」するのだ。 国力を知られることが一国の盛衰を左右する時代にあって、「官僚は隠匿する」ことが、使命であり正義だったはずだ。 ずさんきわまりない年金制度を、国会期間中にギリギリ成立させるために少子化のデータを隠匿した厚生労働官僚に、正義はあるのだろうか? 追伸:あさっての投票は、白票でもいいので一票を投じにいきましょう! 私は、「官僚に隠匿させた」党には入れないつもりです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2004年07月10日 00時05分33秒
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