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通りすがり@ Re:故意犯と過失犯(07/01) 故意の殺人より過失致死の方が、法敵対性…

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June 3, 2007
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カテゴリ:その他雑記
年金の時効が話題になって少したちました。

で,少し冷静に,時効という制度がなぜあるのかを。

今問題となっている時効は,厳密に言うと,「消滅時効」というやつです。

時効には,消滅時効と取得時効というのがあります。

消滅時効というのは,一定の期間の経過によって,権利が消滅する(他方から見ると義務が消滅する)ものです。

取得時効というのは,一定の期間の経過によって,権利を取得するものです。

消滅時効の例は,国民が年金受給権という権利を有している(国は年金支払い義務を負っている)のに,期間の経過によって,国民が年金受給権という権利を失うのです。

取得時効の例としては,他人の土地をずっと利用している場合に,その土地の所有権を取得するというものがあります。

では,なぜ時効制度があるのか。

時効はいずれも,長い期間一定の状態が続いた場合に,その状態を確定させるものだといえます。
つまり,長い間権利が行使されなかったら,行使されないという状態を確定させる。
長い間,所有者として土地を利用すれば,所有者としての状態を法的権利として認める。

このように,永続した事実状態を尊重するものだといえます。

では,なぜ永続した事実状態を尊重するのか。それは,法律の世界では,法的安定のためといわれます。

 法的安定という言葉は抽象的で,漠然としているのですが,このようにいえましょう。
 長らく,権利が行使されないという状態が続けば,もう行使されないだろうという信頼が生じるし,また,何時までも行使できるとすると,何時までも権利関係が清算されず,事務処理が進まないということは,良くないという判断があるわけです。他方で,長く権利を行使しなかった人は,がなく権利を行使しなかったのは,権利を放棄したのと一緒だといえます(これを権利の上に眠った人は救わないなどといいます)

 また,消滅時効の場合は,次のような説明もされます。
例えば,本当はお金は返した。領収書は10年保存したけど11年目に棄てた。ところが,棄てた直後に,返したお金は返してもらっていないと主張され訴訟を提起された。領収書はないし困った。
 こんな場合に,債務者は,10年たったから時効なので払わなくて良い,だから,お金を払ったことを証明する必要はない,と反論できるようにする。
 
 こうすることで,真に払った人を救済する。
これが消滅時効だと。この制度によって,本当は払っていない人も義務を免れ利益を受けるが,それは,真に支払った人を救済するためには仕方がない。
 これは,誤判(無実の人を処罰する)の可能性があるからといって,刑罰を廃止できないと一緒だということです。社会の安全のためには刑罰制度が必要だが,その刑罰制度によって,損(誤判)をする人が出てくるが,それはやむを得ないのと一緒だ,というわけです。

 取得時効も同じようなことがいえます。
 本当に土地を買ったのだが,土地の登記を移転していなかった。20年後,売った人間が,土地を売っていないと主張した。このときに,勝った人間は,20年経過したから,その土地を取得時効によって取得した。だから,土地を買ったということを証明する必要はない。

 以上のように,時効というのは,証明の困難を救済し,また法的安定のために,永続した事実状態を尊重するためにあるということができます。
 
 しかし,これは時効の一般論です。
 
 国民年金の問題は,国民全員が問題となる極めて政治上重要な問題で,国の社会保障の根幹の問題ですね。
 国民は普通は,社会保障の素人で,制度について知っていることは期待できません。
 しかも,そもそも,国がきちんとしていれば,時効なんて問題とならない。
 
 だから,この問題は,時効の一般論は妥当しないといえるのではないかと思います。
 このような特異な問題に対処するために,時効を撤廃するのは全く妥当だと思います。

HP弁護士唯野仁の研究室

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Last updated  June 3, 2007 10:14:46 PM
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