たいらんの道 neo

あるラーメン屋さんの話。

ある処に、美味しいと評判のお店があったんですけど、知る人ぞ知るお店で口コミだけで、そこそこ繁盛していたんですが、ある時、その噂を聞いて、マスコミが取材しに来ました。

最初は取材を断っていたんですが、とうとう押しに押されて取材を受けることになりました。

後日、その模様はTVで紹介され、その後TVを見た人はお店に殺到しました。

かくして、行列ができるお店になった訳ですが・・・。


連日、目の回るのような忙しさ。

お客さんがたくさん来てくれるのは嬉しいですが、仕込みや用意もあって寝る暇もないほどで、さすがの店主さんも限界寸前。

で、店主さんは「ある決断」をしたのです。

それは、今まで、丁寧に時間と手間とをかけて作っていたスープを業務用スープに変更するというものでした。

業務用スープと言っても、最近の業務用は下手なお店よりもデキが良かったりしますから、侮れないんですけど、所詮は業務用、はたして、この変化にお客さんはどう思うのか・・・。

しかし、結果は以外にも、変化はなし。

むしろ、

「最近味が変わって美味しくなった？」

なんて、以前にも増してお客さんも増えたりして～。

だけど、昔からの常連さんの中にはその変化に気づいて、離れていった人も・・・。

業務用にしてからは、スープ切れになることもなく、スープを作る手間が無いので、その分の時間を休めるので、店主さんの負担も軽減されましたが、料理人としてのプライドとか、自分が苦労して作った美味しいものを提供して喜んでもらうという根本な部分を時間の代償として失ってしまうのは果たして良いことなのか？？？

味のブレに悩みながら、苦労している店主さんとか色々見ていると、なんかやるせない思いになってしまいます。

そして、業務用スープとなって、味が劣化したにも関わらず、自分の舌で判断せずに、マスコミが紹介したからって、盲目的に有難がっているお客さんもなんだか凄く不憫に思います。

そして、

今週末、いよいよ、「これが群馬のうまいラーメン」本が発売され、掲載されているお店は、しばらくはラーメン本景気に沸くと思いますけど、その景気を過ぎた時、本を見てきたお客さんたちをどれだけ、自身のお店の味で、引きとめることができるか否かで、真価が問われるので、各店大変な時期だとは思いますが、ブームに胡坐をかくことなく、日々精進し、美味しい味を維持し、さらに進化させていって欲しいなと切に願う次第です。

もちろん、美味しいと言っても、人には好みがあり、あっさりが好きだったり、こってりが好きだったり、醤油が好き、塩が好き、豚骨が好き、鶏が好きなど様々でしょうけど、どうか本の情報を鵜呑みにせずに、自身の舌で判断し、自分の中のベストなお店を見つけて欲しいなって思います。