不退転
2年前の第80回箱根駅伝。駒大は太田ー内田ー佐藤ー田中ー村上と繋いで往路優勝。復路は吉田ー斉藤ー本宮ー塩川ー糟谷と繋ぎ復路も優勝。往路・復路の完全優勝で、駒大は3連覇を成し遂げた。当時のスポーツ紙の見出しは、「強い。強すぎる。」である。<本宮隆良>当時は駒大の経済学部2年生。岩手県岩手郡出身。子どもの頃は毎日牛乳を飲んで育ち、小学校時代は長距離なら負け知らず。高校は福岡高校(岩手)に入学も部員が集まらず、高校駅伝のエントリーすら出来なかったという部活生活。それならばと、ぜひ箱根を走りたいと彼が入ったのは強豪駒澤大学である。しかも、スポーツ推薦ではない。一般入学で駒大陸上部に入部したのだ。しかし本宮は入って驚いた。周りは有名選手ばかりの駒大軍団。「ヤバイと思った、メンバーを見て…。みんな名前を知ってるんで、ちょっとこれはきついかなと思った」と言う。1年生から合宿に参加したが、力の差は歴然。同じ一年生にも差をつけられる。2月の合宿の距離走でも皆から離れてしまい、言われた言葉は”もっと頑張れ”ではない。 「帰れ!」陸上競技部の寮に入れるのはレギュラー組だけ、早速合宿から出された本宮はアパート暮らしとなる。炊事洗濯を自分でやりながら「辞めようか」とも思ったが、前年の箱根で同級生(1年)走ったのを思い出して、「もっとがんばんなけりゃと思った」と固い決意をしたと言う。その後は、積極的に強い選手と練習を共にした本宮。そして、ついに強豪駒大の10人のメンバー入り。走ったのは8区である。好きなピンクの手袋に、左手にはブレスレット。そのブレスレットは祖父・祖母・父・母・妹の5人が、1人、1色、1本づつ三編みしてくれたものをまとめたものだ。赤は太陽、緑は雑草・・。印象に残るのは20キロ過ぎ。ペースの上がらない本宮に大八木助監督の激が飛ぶ。「ヤレ!」「がんばれ!」「いけ!」技術論など不要である。必死の形相で走った本宮は「自分の努力」と「家族の後押し」で見事1位をキープし、優勝に貢献したのだった。無名選手だって、頑張れば箱根に出れるんだ。<不退転>ふたいてん。禅語くじけない。屈しない。固い決意。のことだ。夢を持とう。希望を持とう。そして、前に進んでいこう。自分に負けずに頑張っていこう。本宮は今年4年となった。去年(3年生)は、箱根は走れず悔し涙。しかし、彼の気持ちを汲み、本宮のお気に入りのピンクの手袋をつけて走った同級生糟谷は7区で東海大を大逆転。チームはその勢いで優勝した。そういう意味では、本宮も去年の4連覇メンバーと言っていい。今年は先日のエントリーで16名のリストに入った本宮隆良。もし本宮が走れば「3年連続」箱根出場である。目指せ5連覇!