スピリチュアルと物理学

2009/03/27(金)08:16

ばら蒔かれた記憶 桜

詩と随想(10)

【ばら蒔かれた記憶 桜】 桜の記憶は幾つもあるが それはそれぞれの年代と土地に ばら蒔かれている。 平戸の入り江で いまにも海に落ちそうな満開の桜が水面に写り 二重に揺れている姿 秋月の城跡で あたり一面に散ってゆく桜に溺れた日 数百年の昔からそこにあるという 阿蘇一心行の桜のもと どれも昔から 変わらぬ色を染め抜いている。   なかでもひと際鮮明に染められているものは 満開の桜の下で交わした言葉。  「わたし・・・遠くに行きます・・・」 大学の後輩で 1年近く一緒にいたひとだった。 精神が不安定で 目を離すとすぐ何処かに行ってしまい 血だらけの手首を懐に 倒れていた こともあった。 全ての刃物を処分し いつも側に付き添った。 暗闇が怖い という。 明日が嫌い という。 過ぎた想いに縛られ いまが流れていないひと。 うつろな目は時折宙を舞い 実体は何処か違うところにあるような気がしていた。  「・・・・・・」 私は 何かを言ったはずだが 記憶の中からは消えていた・・・ 数週間後 彼女は嫁いでいった。    満開の桜の樹の下では 幻影を見るという。 さながら 「桜の樹の下には屍体が埋まっている(梶井基次郎)」かのように。 ばら蒔かれた記憶は 満開の桜の花のなかに 消え入ってしまったのかもしれない。   ※写真は、Sotheiより。 <ブログランキング>   

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