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だいご家總本店

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障害児がともに学ぶ環境

障害児がともに学ぶ環境

保育園から、1通の署名依頼を受け取った。
発信者は、昨年拓が通った学校の同級生のご両親。
ダウン症で普通学級に通う彼、Sくん。
彼には、毎日お母さんがつきそって登校している。

彼のことは入学前からウチの外来で知っていた。
普通学級で学ばせたいと訴えるご両親に、当時の校長は
「学校から抜け出されたりしたら困るんですよね」と言ったらしい。
ダウン症に多動性はありません(-_-メ)
悔しさをこらえつつ、毎日保護者がつきそうことで入学の許可を取ったご両親。

拓と同じ学年だった彼の様子は、授業参観などで目にする機会もあった。
あたりまえだけど多動性など全くなく、クラスにもとけこめているように見えた。

このご両親が、毎日自分たちがつきそいをしなくてもいいように、と
介助員制度の導入を求める嘆願書を提出することになったようだ。
署名のお願いをもらって、できるだけたくさんの名前で埋めてあげようと思った私。
職場でお願いをすることにした。

でも、趣旨が書かれている文面を読んだ同僚の言葉は、思いの外厳しかった。
「教育にかけられる予算は決まっている。1人にかけるよりも
大勢にかけることに使うべき、という意見もあるんだよ」

彼女がこう言うのには、背景もある。
4年生になる彼女の息子さんのクラスには、知的障害か自閉傾向と思われる男の子がいる。
彼が普通学級にいるのは、統合教育を望むご両親の熱意に取るものではなく
ご両親の彼に対する知識不足によるもの。
家庭環境も複雑らしい。
保護者会では、彼へのクレームが上がることもたびたび、だという。
(彼の保護者はほとんど保護者会に参加していないから尚更なのかも)

お母さんにもいろんな種類がいるから、統合教育に対する理解がない人も多い。
学年が上がるに従って、シビアになってくるんだよ、というのが同僚の意見。

「子どもたちが一緒にいることが当たり前だと思えば、変わってくるんじゃないの?
クラスの雰囲気、先生の指導力なんじゃないの?」と反論しても
「それは低学年の内だけだよ」と。

そうなんだろうか・・・?
クラスに歩けない子がいたら迷惑?
勉強について来れない子がいたら邪魔?
そんな考えの元育っていく子どもたちの未来は、一体どうなってしまうんだろう?

そう考える私は甘いのだろうか?
障害児の母でもなく、障害児と一緒のクラスの子の母でもない私がどれだけ語っても、
実際経験している人の声には勝てないのだろうか?

同僚は、結局署名には応じてくれたが、仕方なく、という態度にも見えた。
Sくんが通う学校には、来年度、自発呼吸のない女の子が車いすで通う予定になっている。
現在学校にエレベーターはない。スロープもほとんどない。
呼吸器と酸素を搭載した車いすは、合計数十キロに達する。
彼女が心地よい学校生活を送れるようにハード面を変えるかどうかはまだ分からない。
その予算で、子どもたち1人1人が使えるパソコンを購入する計画があるとしたら
私はどっちを支持するか分からない、と同僚は言った・・・。

障害児のための病院で働くナースの、それが本音だろうか・・・

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