自然がいちばん
崎陽軒のシウマイは昭和三年の誕生以来、長きにわたり多くの皆様にご愛用をいただいております。 おいしさの秘密は、良質の国産豚肉とオホーツク海の帆立貝柱を塩、砂糖、胡椒の他は調味料を一切使わず、素材の旨みを活かし大切に仕上げているところにあります。 素材の旨みがぎっしり詰まった崎陽軒のシウマイをお召し上がりください。 突然、いったい何をと思われるかもしれないが、新幹線の売り場でシウマイを買ったさい、外箱に書いてあった日本語がいたく気にいったので、ここに転載させていただいた次第である。 何が気にいったか。 最初から最後まで、まったくの「自然体」で書かれていることだ。 人目を引くために、効果的な手段を用いるのはもちろんかまわないけれども、近頃は何が自然体で、何が効果体かがわかっていない人が多い。 効果を狙ってもいない文なのに、やたらに連体形のあとに「、」を打ちたがる者がいる。どんどんどんどん連体形を積み重ねる者がいる。変に他人のまねをして下手な翻訳まがいの日本語を書きたがる者がいる。 この文にはそうしたものがいっさいない。 これだけ力みのない文は、実はそう簡単に書けるものではない。「帆立貝柱を塩、砂糖、胡椒の他は調味料を一切使わず、」も、今の似非学者らはなまじっか表面だけ西洋の言語をかじっているものだから、意味の切れ目を構造的にわかりやすくしようと無用な工夫をする。「帆立貝柱を、塩・砂糖・胡椒の他は調味料を一切使わず、」 バカじゃないかと思う。「を」は何のために「お」ではなく「を」と書くのか。「、」などなくても「を」があれば切れ目はわかる。塩、砂糖、胡椒はどれも調味料だから、元の文の句読点の打ち方で意味の理解にまったく支障はない。 さらに似非学者の病が高じると、「塩・砂糖・胡椒を除くすべての調味料を使わず」などという「ふざけた」文を書くようになる。 こういう人にはつける薬がない。 崎陽軒のシウマイでも食べながら、料理も文も自然がいちばんであることを噛みしめてもらうほかない。 ←ランキングに登録しています。クリック、よろしくお願いします。