パトリス・ルコントの 『ぼくの大切なともだち』
大好きな監督パトリス・ルコントの 『ぼくの大切なともだち』を観てきた。 友達のいない骨董商が、 仕事のパートナーと、高価な壺を賭けて ある期日までに友達を紹介できるかどうかの賭けをする。 男はその日から、仕事そっちのけで友達探しに奔走する。 友達ってお金で買えるものでも、 方程式で作れるものでもない。 それがわからない男。 その苦悩する課程を、 コミカルで人情味溢れる演出で描く、 さすがルコント監督 「友達って何?」という疑問を観ている人にも問いかけているようで、 「もしかして私にも本当の友達はいないかも…」 と思わせるような不安な気持ちにさせる。 気がつくと、自分とその男を重ね合わせている。 もし、私の友達だったらこのときどう言うだろうか?とか こんな葬儀だったら来てくれるだろうか?とか…。 でも、フランス人特有(?)の笑える皮肉と、 真剣であるが故に笑える「友達作り」の失敗エピソードで 軽快にストーリーが進んでいく。 そして、最後には……ご想像の通りしかし、結局友達はできるんだけど すご~く盛り上がったシーンのあとすぐ 友達と抱き合ってエンドでないところがニクイ演出。 じんわり心が温かくなり、 幸せな気持ちになるエンディングだった。 ハリウッド映画のように派手なアクションも設定もなく、 地味なストーリー、日常のエピソードを坦々と描いているのに、 なぜか心に沁みる、まさにルコント映画 。そんなパトリス・ルコント監督は、 あと3本の映画で引退すると宣言している パンフレットのインタビュー記事によると 「私は今でも映画作りが好きですが、新鮮さを失う前に引退したいのです。 『髪結いの亭主』(←私の好きなルコント作品ベスト1)の アンナ・ガリエナが「愛は永遠でない」と気づいて身投げしたように……。」と言っている。 『髪結いの亭主』を観たときの衝撃は、一生忘れられない。 半日放心状態だった う~ん、アンナの気持ち分かる気がするから 監督の気持ちもわからないでもない。 でもやっぱり、映画撮るのやめないで~