魚群行動論

 15.12.12
 
 昨年は、日本沿岸のマイワシの水揚量の激減がマスコミで大きく取上げられた。
八戸、小名浜、清水から有力巻網船団の姿が消えつつある。晩秋の一夜、名物のイカ刺しをつまみ、同期で道庁練習船船長から聞いた話は更に深刻。10年来、イワシより鯖が見えないという。今秋は釧路から函館沖でもサンマが豊漁だが、小型で脂がのらず、とても刺身にはならないと嘆く。
 会社の近くで繁盛店の幕の内弁当の塩鯖が好物だが、知らなかった。最早日本近海物ではなく、ノルウェー産が50%強を占める。
 
 魚種の交代以上に、漁業資源管理が不在だと直感。30年以上も昔、北大水産学部の単位に魚群行動論というのがあった。漁業資源の中でもサバ、イワシ、サンマ、マグロ等の表層回遊魚や鯨で、食物連鎖を生物学的に統計処理し、水産資源量を科学的に推測する。

 我国漁業の退潮原因の解明が大切。ライフスタイルの変化や後継者不足が大きいことは知られているが、資源減少の主因は、人為的な要因を否定できない。
即ち、姿が見える限り取り捲るのが漁師の性。それを的確に指導・管理できなかった水産行政と業界。大漁魚価安の結果、養殖場の荒廃と海域汚染。

 先祖伝来の漁業技術と世界四大漁場の天然資源を枯渇させてはならない。今がぎりぎりのタイムリミットではない事を祈らずにいられない。12月3日の読売新聞にノルウェーの漁業資源管理の記事が鮮烈に目に飛び込んできた。1946年には、世界で最初に漁業省を設立。今や同国輸出の花形産業の有限海底石油資源より、再生持続可能な漁業を主力産業にするという政府の確固たる大方針の成果。

 石油を巡り、中東各国への内政干渉で世界中の嫌われ者に、アナン国連事務総長も堪忍袋の緒が切れた。歴史上最強の軍隊で力任せの某国と違う、成熟した独立平和国家の素晴らしい意志と見本の報道。漁業資源回復の良きモデル。

 グローバル化の今、日本の言動は世界の動きや経済とは無関係たり得ない。
 現地の人々が望みもしない行動の強弁ではなく、マニフェストの中身は安全・安心・健康・科学技術大国を世界に宣言、示す時。


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