カテゴリ:本
「僕ひとりなら、どんな世のなかでも妥協できる。リュシル、君とだったら、今に満足することだって、きっと難しくなかったろう。けれど、もう子供がいるんだ。子供というのは、未来なんだよ」 こんなおかしな世のなかを、そのままにして押しつけるなら、僕は息子に恥ずかしいと思わなければならないんだ。 「子供のことを思うほど、僕は未来に寄せる意志を譲れなくなるんだよ。子供には素晴らしいフランスを残したい。それが父親の、父親にしかできない愛し方だと思うんだよ」 「いいか。敵に勝とうと思うなら、大胆に、もっと大胆に、常に大胆に」 これしかない。そうすれば、フランスは救われる。かかる言葉でダントンが演説を結んだとき、大袈裟でなく議場の空気は炸裂した。 言葉にもならない声を張り上げたとき、そこにいたのはフランス人ばかりだった。ああ、フランス人ばかりだった。ああ、ブルジョワもなければ、サン・キュロットもない。ジロンド派もなく、蜂起の自治委員会もなく、あるのは祖国の同胞として、ともに戦おうと心を燃やす、ひたむきな人間ばかりなのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.11.03 18:50:40
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