スキーボードの安全性
今現在、mixi内のゴー!ゴー!スキー(←リンクは、ゴー!ゴー!スキーの通常サイト)コミュニティで、全くの初心者(つまり長板もボードもやったことがないということ)がスキーを始める入口としてスキーボードってのはどうなの?というトピックスが盛り上がっている。基礎スキーマンセーの人がいるコミュニティで、スキーボードが俎上に上がると必ず出てくるのが、下のようなスキーボードのメリット/デメリットだ。メリット・すぐにパラレルに移行できる。・楽。デメリット・スキーボードに載るとポジションが悪くなる。・簡単に曲がれるから、振り回して曲がる癖がつく。・簡単にずらせるからズレズレの癖がつく。・我流の滑りになる。・板が短い分脚力が要る。・ビンディングが解放機能付きでないのでとても危険。必ずケガをする。まぁ、メリットについては、そのとおり。オレの奥さんも長板では曲がれない、滑れない初心者の状態でスキーボードを始めているし、甥や姪もその状態から、スキーボードを始めている。その経験からしても、まったくの初心者の方がはじめるのに、スキーボードは最適だと思っているし、最終到達点がスキーだとしても勧めたいと思う。そう思う理由ってのは、以下のとおりだ。・板の長さに頼らない適正なポジションが身につくこと。・エッジングのみに頼らない滑り(ポジショニングと加重抜重で板のサイドカーブを上手に使ってすべるということ)ができるようになることの2点。この2点が身につけば、スキーにもかなりフィードバックできるのだ。オレ自身、スキーボードを5年やってスキーに復帰した時にはスキーに乗せてもらわない滑りが身につき、かなり上達していることを実感した。で前述のデメリットだが、冷静に考えれば、最後のポイント以外はそう貶める人間が、自分の技術の至らなさを露呈するものでしかないと思っている。まずポジションの事だが、これは言っていることと事実が全くの逆だ。スキーにある程度乗れている(SAJ1級程度)スキーヤーでも、板に頼った乗り方をしているスキーヤーは大体スキーボードに乗ると今まで頼れていた板の長さがないためになんだかポジションがとりづらいと感じるものだ。つまり、そもそも自分が乗れていると思っているポジションが間違っているのだ。そこがポジションがとりづらい、ポジションが悪くなると思われる理由だろう。また、振り回すくせ、ずらす癖についても、自分の滑り方、または教え方/教わり方が悪いだけだろう。間違った滑りをしてしまえば、間違った滑りができてしまうのは、最近のカービングスキーでもスキーボードでも一緒だ。さらにローテーションをむやみに進める最近の潮流はスキーの長さに関係なくヤバいと思う。長板だろうが短板だろうが関係ないんだよ。どんなスポーツだって、やはり最初はきちんと技術を伝えられる人に教わるのが前提だろう。長板でいきなりスクールに入りもせずに滑る人間はいないのと同じようにね。オレの奥さんはノーマルスキーでは曲がることもできずに一緒にすべることを挫折しかけたけど、スキーボードを一緒に始めることで雪山の世界にどっぷりとはまることができた。彼女のような人々がスキーの楽しさを見つけるにはこれ以上ないマテリアルだと思うのだ。かといって、今オレが長板もやっているように、スキーよりもスキーボードの方がすばらしいと思うなんて事は一つもない。スキーボードは、その長さから扱いが楽だし、奥が浅いようにも思われるかもしれないが、ある一定のレベル以上の所を目指そうとすると、長板よりも体力も技術も必要なのだ。その必要な体力・技術とは、まず、その板の短さから来る安定度の低さを押さえるための体力。次が、板の短さから来るエッジの短さと板をたわませることによるエッジングの難しさだ。そのため、高速カービングは板の跳ね返りを押さえつけるのに四苦八苦した太股が悲鳴を上げることになるし、小回りでは逆に板の反力を利用してのウェーデルンがかなり難しい。どちらもきちんと板のセンターに加重して、反力を利用してやることが必要だし、カービングターンでは加えて、たわみによるサイドカーブが作り出せないために板のサイドカーブを生かして長板以上に身体を倒し込んでやる必要がある。つまり入口が広く、出口が狭いマテリアルなのだ、スキーボードは。だから、3年前5年ぶりに長板を履いた時は、「スキーってこんなに楽だったのか…」と思わず目から鱗が落ちたものだ。そしてスキーボードで得たポジショニングや、エッジングは、ある程度行き詰まりを感じて一度離れたはずの長板に更に伸びるための可能性を与えてくれた。そのため、今ではゲレンデコンディションや気分でいろいろ履き替えて滑っている。ここまでスキーボードに対するデメリットの反論と、メリットの補足を行ってきたが、それでも最後に残ったスキーボードのデメリットに対して、スキーボードの致命的な欠陥としてあげつらわれるものが残っている。それが固定式ビンディングの存在だ。スキーは安全なマテリアルでスキーボードは危険なマテリアルである、と思っている人にそうではない、スキーもスキーボードもスノーボードも危険なマテリアルなんだ、と説明するのは大変な文章力がいる。そのために、ここに一つの名文があるのでこれを読んでみて欲しい。それは、 Welcome to Crazy for snow!にて紹介されている全日本デモンストレーター・金子裕之さんとの談話を文章化した「安全にスキー・ファンスキー・スノーボードを楽しむために」というコラムだ。最初に要っておくが、このHPの作成者・Snowman氏はかなりスキーボードの安全性について懐疑的なバイアスを通して文章を書いている。トップページから飛べる他のコンテンツでは、ことさらスキーボードによる受傷体験について、多くのページを割いて紹介している。ちなみに長板やスノボについての記載は一切ない。ほかのそのため、金子氏の談話も自分の論旨にそうように解釈して紹介しているところが多々ある。そのため、ここでは金子氏の文章のみ要点をかいつまんで紹介したい。全文を読みたい方はリンクをクリックして欲しい。さらに文中「ファンスキー」という言葉があるが、オレの言う「スキーボード」と同義と取ってもらって構わない。・ファンスキーは板が外れないという危険な面もあるが、スキーの練習にはとてもいい道具。・ファンスキーは怪我をしやすく、スキーが安全、スノーボードが危険とは限らない。ファンスキーも危険な面はあると思うが、スポーツである以上怪我はつきもの。・「後傾癖がつくのでは」というSnowman氏の指摘には、それは練習の方法次第ですよ、とつまり練習の仕方が悪い、と。・ファンスキーは、後傾の矯正にもなる、カービングの練習にもなる、いい位置に乗るということの練習にはとてもいい。・きちんとエッジにのってゆく感覚を、教えられる。・板が刺さってケガをしないように、転んだときに足をあげるという、こけ方をきちんと指導している。(管理人注:当然だ長板でもこけ方を教えないなんて事はあり得ないな)・足をあげることによって、ある程度の危険性は回避できるが、本当に危ないのはそのスポーツのほんとうの危険性を知らずに、何気なくやってしまうこと。・ゲレンデでの事故についてはマテリアルは何であれ、スポーツであるがゆえに危険があるという認識が、多くの人たちには欠けている。さらに詳しく引用すると、・ファンスキーの転び方は、滑りながらなら足を上げて、柔道でいう「受身」をすること。こけたときにひざであごや顔を打ったりすることに注意をする必要がある。・安易に直滑降やアクロバットはせず、十分にトレーニングをしてからやらないとケガをする。・怪我には原因がある。その原因が何なのかということを考えることが大切。今のゲレンデは、いつもきちんと整備されていて、スキーヤー・スノーボーダーはどうしても、斜面の状態変化に弱くなっている。・ゲレンデの混雑がひどくなると、どうしても衝突などが起こり、怪我も増えてしまう。そういったときの対応や、体の身のこなしをやっぱり考えなければいけないが、どうしても事故というものは避けることはできない。その避けられない危険性を認識し、いざというときはいかに被害をすくなくするかをいつも考えておかなければならない・日頃運動をしていない人たちがいきなり運動をすると、やはり怪我をしてしまう可能性は、どんなスポーツでもかなり高くなる。できることならマット運動などで体の柔軟性を高めてから、スポーツをするのがいい。・スキーやファンスキー、スノーボードなどで転ぶときは、できるだけ大胆に転ぶことも大切。こけるときに身構えてしまう人が結構多い。力をいれて身構えて転んでしまうと、体の柔軟性で衝撃を吸収することができずに、衝撃が骨などに一気にかかってしまう。こけるときは大胆にこけて、体全体と雪のクッションで、ショックを吸収してしまう。・ゲレンデに出るときは、きちんとした睡眠をかならずとることが、怪我を避けるためには大切。・HPでファンスキーの危険性のようなものを載せているのなら、そういったことを載せておくことをおすすめする。そういうことだ。つまり何度も言っているように、スキーボードだけが危険なのではないのである、スキーだってブーツ内骨折や靱帯をやられる例もある。固定式のビンディングしか持たないスキーボードについても、転び方を間違えると致命的なケガを負う可能性があるというリスクについては十分しておくべきだ、だからといってスキーボードが危険なマテリアルである、という結論に達するのは全く間違った認識だと言わざるを得ない。どんなマテリアルでもどういう滑りをすれば自分がどういう怪我をする可能性があり、他人にどういう怪我をさせる可能性がある、ということは考えなければいけない問題だと思うが、これからスキーボードを入り口に雪山の楽しさを知っていくかもしれない人たちの可能性を閉じるべきではないとオレは考える。蛇足になるが、グーグルによる検索では、「スキー ケガ」 196,000件「スノーボードorスノボorボード ケガ」 224,600「スキーボードorファンスキーorショートスキーorスノーブレードorスノブレ ケガ」 1,145である。スキーの中に「ファンスキー」や「スキーボード」、「ショートスキー」が含まれる可能性はあるし、ボードの中にサーフボードが含まれる可能性は大きい。しかしその検索結果は、ファンスキー/スキーボードでのケガが決して突出して多いものではないということを表してはいないだろうか?