ナマのドクターの声
「今日で終わりだよ」と言われホッとして診察の終わり、気が緩んで「先生はどちらでこの治療法を?」と不躾なのを承知でお聞きするとめんどくさがらずにまた丁寧に答えてくださった。「コレの原理としてはね、大学病院でも十分に経験してはいたことなんだよね、おなかの中がぐちゃぐちゃで大手術をした患者さんでも、消毒やめてお風呂に入ると目に見えて手術の傷が治ったりね、そんなのをいくつも経験してると消毒とか従来の方法ってマズイんじゃないかと思い始めていはいた、あとは推進されているドクターがHPを開設してたから、その方とのやりとりはあったかな」そんな内容だった。推進されているドクターというのはやはり夏井先生のことでしょうか…。「そのうちね、傷は乾かさない消毒しないってのはあたりまえの処置になると思うよ」とおっしゃっていたがいつになるやら、この国の医療界全体をあげての「白い巨塔」構造はそうそう簡単には崩れないのではないかと思ってしまいます。だってヘンな話、悪性腫瘍とか心臓外科あたりなら、10年前に発表された医療技術だってけっして「最新」ではないんじゃないかな、ましてやずいぶん前に海外ではスタンダードになっている治療法がこうまで定着を見ないのって一体。何か故意にブレーキがかかってないと無理でしょう。「傷を消毒するってのはね、まったく意味がない」外科医特有の?ばっさりと切り捨てる口調。「それどころか単に傷口を悪化させるだけ、ガーゼだって同じ、古いっていうかやっちゃダメなんだよ、明らかなんだよ、そんなの治療でも何でもないから」いやもっと厳しい口調だったと思う。ああ、もっとお聞きしたいことはあったんだけどなあ……大学でも医局でも、ドクターがこの治療法に触れることはないわけですよね、スタンダードになるためにはやはりドクターが個人的にとかいわゆるクチコミ的にあるいは先生のようにご自分で気付かれるとかの道に限られるんですよね、医学生が知るためには教授が納得してないとありえないわけだし、そもそも創傷治療自体がろくに授業に入ってないとか、それって本当ですか?とにかく早く当たり前の治療法になって欲しいです……ぐらいのことはお聞きしたかったなあ。さらにどんなおはなしをいただけたか、もったいなかったなあ。せっかくの機会だったのに。じゃ、そういうことでね、とカルテを閉じながら「ああ、またなんかあったら聞きに来て」そ、それって湿潤療法について、ドクターの見解は?というご質問でもいいですか?とちらっと思いながら診察室をあとにした。お世話になりました、先生もハードスケジュールの中、お体を大切にどうぞこれからも、先生を待っている患者たちのためにお骨折りいただけますように。