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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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テーマ:お勧めの本(7221)
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塩野七生著『ローマ人の物語』(35)
       最後の努力(上)(新潮文庫)

読破ゲージ:
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2年空いたよ、変則書評。それでもページを開くと、気持ちだけでなく知識や考え方も、塩野流に引き戻してくれる整理術的筆致もまた塩野流。ブランクなんか怖くない。恐ろしいのは帝国の行く末。いわば「帝政後期」。後に絶対君主制と呼ばれるこの時代、ピンチの後にローマに何が起こったのか。立ったディオクレティアヌス帝、武功はなくとも、バックヤードで信任・実績はあった。賤ヶ岳七本槍に対する大谷刑部のような立ち位置だったのか。ただし、ディオクレティアヌス、軍事には疎かった。地味な石田光成タイプか。が、人使いには光るものあり。帝、迷走する帝国における優先事項は、基本に忠実。一に安全保障、二に帝国の構造改革。東方のペルシア、いまだ目の上のたんこぶ。帝国内にも敵はいる。機能不全の防衛線で外敵を撃退するはずの軍人からなる無法集団はハイクオリティな強盗と化し、防衛線そのものの防衛が急務に。右腕はいるか?戦は苦手な防衛皇帝、戦は任せろ莫逆の友・マクシミアヌスを立てて「二頭制(ディアルキア)」をスタート。期待に応えたお人よしマクシミアヌス、東方は皇帝管轄ならば、西方の秩序回復に向けて軍備再編も朝飯前。しかしこのディオクレティアヌス、慎重にしてシステム屋。構築しないと気が済まない。帝国の衰退に、秩序ある統治体制を、とばかりに、頭を二つ増やして、広大な帝国の綻びにも行き渡る政治を目論む。新たなリーダーの条件、それはアラフォー、肉食系、堂郷人。紀元293年、コンスタンティウス・クロルス、ガレリウスを加えて「四頭制(テトラルキア)」システム樹立。今、求められるのは政局の安定ではなく帝国の安定。分担統治がその答え。東西に正帝、副帝を配して国難と対峙。予想的中、ピンチはすぐに訪れた。やっててよかった「四頭制」。不穏なペルシャの動きに、ガレリウスがマーク。アレクサンダー大王を自らに重ねたガレリウスも、ペルシャには強硬路線。四か所で四人がそれぞれのトラブルに当たるシステムはかように機能。そのかわり、リーダーが増えて、帝国が抱える兵力は一気に倍増。事実、30万の兵士は60万人に増えたという。必要な兵士を、必要なだけ。軍人の大リストラさえ断行した初代皇帝アウグスストゥスの時代とはかくも違えたり。さらにまた。四人のリーダーがそれなりの権限を持って事に当たったがゆえに、そこには、「隣の仕事が判らない」官僚システムの弊害も出てくる。システムが、システムを縛る。特に、柔軟性を以て栄えてきたローマ帝国のダイナミックな政治の在り方が硬直。これはまた、あの元老院を、国家の要職にふさわしい人材育成プールとしての機能にますます蓋をする結果に。つまり、ディオクレティアヌスの時代とは、官僚大国化へと突き進んだ時代。さらにさらに、専従システムを敷いた皇帝。かつて武官と文官が相互に乗り入れていたからこそバランスある人材が輩出されていた帝国であったのに、枠割分担を徹底的にシステム化したことで、専門家が自分の仕事を延々とこなし続けるシステムに。はたして、このシステムが、軍備倍層を支える増税策に先手を打った形での官僚国家化だったかどうか、やっぱり出ました税金問題。またも、ディオクレティアヌスの時代とは、税金大国の時代。シンプルながら普遍性があったアウグストゥス以来のローマの税制は激変。その特徴は、例外なし、主として直接税。国が決めた額を一律税金として徴収。それらは中央政府の管理下に入る。ここに、事実上「地方自治体(ムニチピア)」は過去の遺物に。中央集権ならば、自治自立は夢のまた夢。税額の査定まで細分化してシステムにしたディオクレティアヌスよ、マニュアル作りは結構だが、マニュアルは使う人が使いこなせてはじめて意味があるもので。皆が皆ディオクレティアヌスではないワケで。そしてまた税法が大きく変われば、当然飛び出す通貨改革。シミュレーションではうまくいった通貨改革も、インフレ対策にはまったくならず。人類史上初の価格統制政策を実施。インフレ対策にも強硬策なら、離農対策も強硬。職業選択の自由を排して、すべての職業に世襲制を発布。もっとも、これが後の世のギルド制の基礎となるのだが。衰弱する帝国にはまだまだ難問が。自らの権威の強大化もまた帝国引き締めに必要と看破した有能ではあるディオクレティアヌス、そこで神を纏うことを断行。つまりは、ようやく訪れた40年間におよぶキリスト教徒の平穏に、弾圧を開始。なんとまた、この弾圧もシステマチックに行われたというから、もはや筋金入りである。教会の破壊、信徒によるすべての集会禁止、聖書や書物、十字架の没収・焼却。それまでの保護恩典の剥奪およびローマ法による保護の権利取り上げ、教会資産の没収、公職からの追放。書き連ねるだけでウンザリするほどの徹底ぶり。まさに、キリスト教徒への宣戦布告に等しく。勅令は第二、第三と公布され、その執拗度も濃密に。とはいえ、実態は、強硬にすることで、かえって揺さぶって棄教させることが狙い。とすれば、これだけの強硬策でありながら流血は最小限、少なくない棄教者を出して、当初の目的は果たしたそうで。寡黙で地味なディオクレティアヌス、「ディオクレティアヌス浴場」を残して、盟友マクシミアヌスを道連れに引退。やるべきことはすべてやった、という充実の幕引き、二十二年間の治世。しかし…これだけシステムを乱立させて、これだけ帝国の帝国たる所以に手を加えて、四つの頭で舵取った皇帝の後を、誰が、どのように、治められる???確かに、システムのお陰さまを持ちまして、第二次「四頭制」もスタートはしたが、初手からきな臭いムード。船頭多ければ船山に登る。さらに、そこにはシステムを作り上げたその人ではなく、システムに引き込まれた人と、その家族がいる。帝位、権力、世襲制度。そして婚姻と血縁が入り乱れて、次代を担う四頭のリーダーは信頼し合えないまま舟を漕ぎ出す。(了)


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Last updated  2011/04/20 07:33:45 PM
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プラダ バッグ@ gpzqtt@gmail.com 匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_…
バーバリーブルーレーベル@ uqafrzt@gmail.com お世話になります。とても良い記事ですね…
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