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七五三の意味もうすぐ七五三だって？ お前さんの子，もう七つになるか。子どもに高価な着物を着せて，お参りをして，千歳飴を買ってやり，おまけにレストランで食事だって？ 親ばかもほどほどにしないとな。どうして悪いかって？ それはだな，七五三の意味をはき違えているからよ。もともとは奇数の三，五，七がめでたい数字であるということ，それに成長に従って体が変化する時期でもあるから，節目節目に子供に自分の成長を自覚させ，親自身も過保護にならないように自分に言い聞かせた，これが七五三なのだ。 えっ，そうだったのって，知らなかったのかい？ ここまで子供が成長してめでたいから祝うのじゃないのだよ。子供が七歳になってようやく人間として社会に認知される。だから悪いことをすればしこったま怒られ罰せられるし，死ねばお葬式もしてくれる。七歳以下はもう社会の一員としてはとてもとても認められない，ということだ。 そんなこと言ったら，人権無視だって訴えられるって？ 現代ならそうかも知れないが，でも小学校に入れるのは七歳からだろ。上のことと無関係じゃないんだよ。訴えるなら，訴えてみろ。 なぜお宮参りをするかって？ だから今言ったじゃないか。社会の一員として立派にみとめられるように神にお願いするのためよ。それ以外に何があるってんだ。
それじゃ，千歳飴って何の意味があるのかって？ まあ，袋に松竹梅やら鶴亀の絵がかいてあるから，それはそれなりにめでたいのだけど，もともとは平野陣九郎重政というお方が，甚右衛と名を変えて浅草で飴屋になって売り始めたらしい。アイデアヒット商品ということで，七五三とは直接関係がないようなので，子供に高い飴など買ってやる必要はないだろな。 いたいこと 帯と袴で 十二両 こんな川柳があるのだから，昔から親は子どもに甘かったのだな。ちなみに帯は七歳の女の子に，袴は五歳の男の子に，一両を８万円とすると１００万円弱の費用がかかるということどな。 そんな金ないって？ 気にするな，小さな子供に金などかける必要などない。
おっ，奇数の組合せですな。それに全部素数だ。さらに１１月というのも同じく奇数であり素数だ。１５日は奇数だが素数でなくなるのがちょっと悔しいが。１７日だとよかったのにな。 それって何の話かって？ そりゃ，１１月１５日の七五三のことよ。もともとは徳川家光の四男である徳松が虚弱体質だったから，五歳の御祝いをこの１１月１５日に行ったのが最初だったとか。 そう，その通り。意外と歴史は新しい。えっ，徳松って誰かって？ そりゃ後の五代将軍綱吉のことよ。なんで１１月１５日にだって？ それを今日は話そうと思ってな。 ちょっと説明がやっかいなので，お前さんに分かるようにごく簡単に話すが，これは当時使われていた暦（こよみ）と深い関係がある。今でもお前さんの使っている暦には大安とか仏滅とか書いてあるだろう。根拠もないのに，これで結婚式はしないほうがいいとか，友引の日に葬式はやめようとか，この科学の時代にもそんなことに左右される人が多いな。だから江戸時代の物事の判断の根拠を笑っちゃいられない。 それで当時の暦だが，暦注には今と同じく吉凶が書かれてあったのだ。その吉凶中に鬼の宿る日，鬼宿日（きしゅくにち）というのがある。この日は特別に良い日とされ，現代で言うならば「大安吉日」に相当する。１１月の鬼宿日，まあ大安吉日は当時は１５日だったのだ。これが暦に書かれてあったということだ。現代の暦では，大安はいつも同じ月の同じ日と固定されていないが，当時は太陰暦，月が決まれば鬼宿日は何日と決まっていた。だから１１月１５日は毎年鬼宿日だったのだな。 １１月というのは，稲の収穫が終わり，酒を供えて神の恵みに感謝する月。やっと一年が終わったと，ほっとする月でもある。この月の１５日，一番良い日に徳松の御祝いをするというのは自然の発想ですな。 こんな経緯があったので，七五三は１１月１５日に，と決められたのですよ。めでたい，めでたい。
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