茜色と君色/3
「ああ、戻ろうか」校舎に二人の足音が響くもう陽も暮れるころだったどうしてだろう茜色に染まる後姿が今まで見た世界をこんなにも変える「ねぇ、どうしてあなたはいつも一人なの?」突然、振り向いて紗希が言ったそうえいば、こうして僕が紗希と心の中で呼んでいることを紗希は知らないだろう僕は紗希を苗字でも名前でも一度も呼んだことはなかった「お前だって一人だろ」「私は一人じゃない」クラスでいつも一人きりでいる紗希を僕は知っていた遠くで見ているだけだったけど僕はそんな紗希を見ていた僕も一人だったからでも今なら分かる君は一人じゃなかった「強いんだね・・・僕は弱いから」「答えになってない」強く言い返された君の頬も髪も紅く染まる僕のことなんかどうでもいいのに僕はずっと一人なんだから僕が世界に絶望した理由なんてどうでもいい人が人に思えなくなったことなんてどうでもいい僕は答える「僕の世界は一つだから」ただそれだけ