漢方はずし
鳩山政権が華々しく実施している「事業仕分け」.前政権から惰性で続くムダを点検するという趣旨で,確かに意義ある作業だと思う.前政権下でのあきれるばかりの利権の構造があぶり出されて,唖然とすることも多い.ただ,それはそれとして,やはり貧困対策,景気対策,経済政策を急いで欲しいとも思う. それに,ムダだと断定することで,切り捨てていけないものを切り捨ててしまうという過誤を犯す可能性は大いにある.過去には小泉という男がそれをやった.その同じ轍を踏まないよう,くれぐれもお願いしたいものである. そう心配していたら,こんな記事を見てしまった.- 漢方に保険が適用できなくなる?事業仕分けでの大いに首をひねる結論http://ameblo.jp/garbanzo04/の11月14日の記事. これは Like a rolling bean さんの記事である. 同様の趣旨の声が,あちこちから上がっている.たとえば「ふじふじのフィルター」:http://fujifujinovember.cocolog-nifty.com/blog/の11月15日の記事とか,「広島瀬戸内新聞ニュース」:http://hiroseto.exblog.jp/11593387/とか,etc. etc. 漢方を保険適用からハズす.これは愚挙である.医学の進歩をマスコミは華々しく報道しているけれど,その陰にかくれて不治,難治の病気で苦しんでいる人たちもいる.結局のところ現代医学は,一般にイメージされているほどには万能でないのだ. この,現代医学ではカバーしきれない箇所を鍼灸,漢方,民間療法などがカバーしている.しかし保険がきかなかったため,高額の治療費に苦慮する患者や家族も多かった.漢方などの,いわゆる代替療法の有効性に気付いた臨床医たちの強い訴えで,やっと一部の療法に保険適用がされるようになったのは,それほど昔のことではない. 西洋医学は直截的で明快である.それに対し漢方医学は思考が哲学的というか,あまり科学的に聞こえない.しいて現代科学で類似の発想を探すとすれば,多変量解析のような思考だろうか.とにかく漢方医学では,複雑なシステムである人体のあり様を,少数のパラメータに還元し,それらのパラメータの1つ1つが極端に偏らないようにする,というような手法であるらしい.本当はよく知りません. そのような理論に基づく医学であるからして,薬効を統計的に実証しようなどという現代医学の手法とは,はなはだ相性が悪い.それに華々しく展開しつつある「最先端」の分野と違って地味であり,研究費も人材も不足がちではなかろうか.となると,保険適用にこぎつけるためのデータ集めも,なかなか大変なのでないかと推測する. しかし病気は待ってくれない.漢方療法への保険適用の開始は,患者にとってはひと筋の光明であっただろう.その光明を断ち切ることに対しては,極めて慎重であって欲しいと思う.