2008/06/10(火)12:41
『花の下にて春死なむ』 北森 鴻
年老いた俳人・片岡草魚が、自分の部屋でひっそりと死んだ。その窓辺に
咲いた季節はずれの桜が、さらなる事件の真相を語る表題作をはじめ、
気の利いたビアバー「香菜里屋」のマスター・工藤が、謎と人生の悲哀を
解き明かす全六編の連作ミステリー。
第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作。
初の北森鴻さん作品です。以前から、気になっていたこの作品。
『香菜里屋』というビアバーが舞台となるシリーズの第1作です。
ヨークシャテリア似(笑)の『香菜里屋』のマスター・工藤が、
店に集まる客たちが持ち込む大小様々な『謎』を解き明かしていきます。
いわゆる『安楽椅子探偵』ものですが…
マスターの推理力、ハンパじゃありません。
「どうしてそんなことまでわかるの?」「聞いてないよ~!」
みたいな事実がポロポロ出てきます。
頭の悪い私は、ちょっと置いてけぼりをくらった気分になりました。
みんなの知らないところで、かなりの調査をしているんでしょうねえ。
そうでなければ超能力者か?というくらい、なんでもお見通し。
あまりに卓越した推理力・洞察力がちょっと恐かったくらいです。
とはいえ、マスター、決してクールな感じではありません。
『すべてはお客さまのために』がモットーのとっても優しい人です。
ビアバー、というだけあって、4種類の度数のビールが揃っています。
酒好きの私は、もうそれだけでうっとり。
マスターはさりげなくお客さんの体調や気分を見極めて、
「少し度数が低めのビールをお出ししましょう」とひとこと。
もう、憎いくらいの気配りです。
色々な素材を使った、心づくしの料理の数々も魅力的でした。
『はまった』というほど、強く惹かれた訳ではないけれど、
続きを読みたいな、と思える作品でした。
ちなみに、このシリーズは全4作だそうです。
ゆっくりと読んでいこうかな、と思っています(*^-^)