愛農専攻科
愛農高校には専攻科というものがある。この学校のとてもユニークな制度で、卒業後、1年間、学校に籍を置いて、農家に実習に行く。簡単にいえば、農家に住み込みで働かせていただくわけだ。勿論、受け入れ農家は、農家としても、人としても、非常にしっかりしたところばかりで、そこから学ぶことは多いと思うのだが、なんせ、人様の家庭にどっぷり入り込み、働くわけだから、そのストレスは相当なものだと思う。慣れない農作業で緊張し、帰って休むところも人様の家庭だ。考えてみれば、我が家でさえ、そんなに一緒の時間を過ごしたのは、保育所に行く前だけだ。だから、長女がこの専攻科を志望したとき、僕は反対した。精一杯説得したけど、意志は固く、頑として譲らない。渋々認めたというのが正直なところだ。その専攻科の修了式が昨日あった。長女のひとつ上。長男の同級生、6名だ。すばらしい式だった。一人一人、一年を振り返って、今後の道について発表した。みんな泣きながらの発表だった。辛いこともとても多かったのだと思うが、それを乗り越えた自信と成長が、はっきりと伝わってきた。就農するならいざ知らず、普通に進学や就職するのには、この専攻科は何のメリットもないだろう。勿論学歴上も何のプラスにもならない。しかし、これから長い人生を生きていくうえで、この一年間の経験は代えがたいものになると思う。彼らの顔を見て、長女の選択もあながち間違いではないかもしれないと、思うことができた。