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C22トイガン備忘録

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2021.09.05
XML
カテゴリ:カスタムガン
​​今回は
ビルドスクラッチ
「試製甲号拳銃」
を紹介します。



トリガーを引くだけで
自動的に排莢と次弾の装填を
行う自動拳銃の研究が
欧米各国で盛んになったことから
日本でも南部 麒次郎 氏が
「南部式大型自動拳銃」
を開発します。
 
これを陸軍で
正式採用しようとする動きがあり
明治41年(1908年)に
採用試験が実施されました。
 
これにより
南部式大型自動拳銃は
「四一式自動拳銃」として
正式採用される直前まで
話が進んだものの
当時の寺内陸軍大臣が
反対したことから
正式採用には至りませんでした。
 
時は流れて
大正10年(1921年)
再び自動拳銃採用の機運が
高まったことから
第一次自働拳銃審査が行われ
「試製甲号拳銃」が
陸軍技術本部から
提出されました。
 
しかし大正12年の関東大震災で
資料が消失してしまっているため
この時の試製甲号拳銃が
どのような銃であったか
詳しくはわかっていません。
 
その後も審査は続けられ
大正13年
第三回審査が行われます。
 
このときに提出された
試作拳銃のうち
1丁が今回モデルにした
試製甲号拳銃です。
 
ちなみにもう1丁の
「試製乙号拳銃」に
改修を加えたものが
のちに十四年式拳銃となります。
 


上から
今回作製した試製甲号拳銃
LS製 十四年式拳銃 後期型
マルシン製 南部式小型拳銃(借り物)

この第三回審査で提出された
試製甲号拳銃と考えられる拳銃は
現存しており
これを紹介している資料を参考に
ビルドスクラッチを行いました。
 
[Nambu 15-Shot Type A Experimental]
Nambu 15-Shot Type A Experimental - YouTube

こちらの資料には
原寸大の写真もあります。

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以下、この第三回審査に提出された
拳銃のことを
「試製甲号拳銃」と称します。
 
この試製甲号拳銃には
多くの興味深い点があります。
 
今回作製したモデルを
使用してそれらを解説していきます。

(製作者の技量により
実銃と異なる箇所があります。
実物がどのような形をしているか
気になった方は
上記の資料を確認することを
お勧めします。
 


まず何といっても
南部式大型拳銃実包が
15発も入る
ダブルカラムダブルフィードの
マガジンです。
 
このマガジンにより
強力なファイヤパワーを誇る反面
グリップが極端に太くなり
握りづらくなっています。
 


また
ダブルフィードのマガジンを
採用したことで
本体の幅が約35mmと
広くなってしまっています。
 
この拳銃を
ホルスターに入れて
携行するのは難しそうです。
 
マガジンの底部付近にでっぱりがあり
ここが引っ掛かることで
マガジンを固定します。
 
マガジンリリースボタンは
グリップの下についていて
ここを押すと
マガジンのでっぱりが引っ込むため
マガジンが取り出せます。
 
グリップの握る部位よりも
下の方にあることから
握っているときにうっかり
押してしまう可能性は
意外と低そうな反面
わざわざ握りなおさないと
ボタンを押せないので
使い勝手は悪いです。

当時、脱着式のマガジンで
ダブルカラムのものは
ほとんど存在せず
ノウハウが十分に
蓄積されていなかったことが
この奇妙なマガジンの固定方法が
採用された理由として
考えられます。
 


※写真はLS製十四年式拳銃のもの
 
また、もととなった
南部式大型拳銃の
マガジンキャッチスプリングは
小さすぎ
そのままではダブルカラムで
重量のある
マガジンを
保持できないと判断した
のかもしれません。

 


実銃のリアサイトは可動式で
向かって右から
ボタンを押しながら動かすことで
高さを調整できます。
 
セイフティは向かって
右側についており
回転角度も十四年式拳銃より
小さいため
一見使い勝手がよさそうです。
 
しかし実際に動かそうとすると
グリップが太すぎるため
手が大きくないと親指が
セイフティまで届かず
結局操作は両手で行う必要があります。
 



分解は
フレーム、ボルト、レシーバを
貫通しているピンを
向かって右側へ引き抜くことで
行います。
 
このピンは銃本体を横断している
だけでなく
ボルト内のリコイルスプリングや
ストライカースプリングといった
部品からの負荷も受けているため
大変壊れやすそうです。
 
実際
このピンをエポキシパテで
制作したところ
ボルトを引いたとたんに
折れてしまったため
中に十分な長さのある
金属製のネジを入れることで
なんとか折れないようにしています。


 
ボルトの向かって左に
リコイルスプリング
右にストライカースプリングが
入っています。
 
南部式大型拳銃と同様
これらのスプリングは左右に並べて
入っていますが
幅の広いこの銃では
リコイルスプリングが
外にはみ出さず
ボルトの中に収まっています。
 
バランスは良さそうですが
仮に左右のスプリングで
押す力が同じであったとしても
コッキング時とそうでないときで
ボルトを押す力が
左右で異なってしまうため
結局、動作不良の原因は
解決していない感じがします。
 


やはり十四年式拳銃の
リコイルスプリングを2つに分けて
左右に配置する構造が
いかに優れていたかを
考えさせられます。
 



ファイヤリングメカニズムは
かなりデフォルメしています。
 
南部式大型拳銃に準じた
構造をしている可能性が高いですが
試製甲号拳銃を分解した資料が
手元に無いことや
私自身の技術不足が主な原因です。
 
また、南部式大型拳銃や
十四年式拳銃と異なり
試製甲号拳銃はシアーが外から
確認できないように
なっているため
各部品の位置関係が
分かりにくいのです。
 
最低限
「ボルトを引くとストライカーに
相当する部品がシアーに固定されて
トリガーを引くと固定が外れ
パチンと音が出る」
程度の構造にはなっています。
 





・ダブルカラムダブルフィードのマガジン
・可動式のリアサイト
・ファイヤリングピンスプリングを
 横から固定する構造

これらの特徴は
モーゼルC96の影響を
受けているものと考えられ
試製甲号拳銃は

「南部式大型拳銃と
モーゼルC96を
足したような拳銃」

といった印象を受けます。
 
試製甲号拳銃は
形状と重量が過大であることや
製造コストの問題等により
最終的に正式採用とはならず
「日本陸軍最初の自動拳銃」の
栄誉を逃しました。

しかし
当時は珍しかった
ダブルカラムダブルフィードの
脱着式マガジンや
南部式大型拳銃とは異なった
ボルトの固定方法
独特なマガジンキャッチといった
要素を組み込んでおり
堅実な十四年式拳銃と比較して
意欲的な拳銃であったと
私は思います。

参考文献
佐山 二郎「小銃 拳銃 機関銃 入門」NF文庫
渡辺 千年 「日本軍の拳銃」 ホビージャパン
松下 大介 「帝国陸海軍の銃器」 ホビージャパン

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最終更新日  2023.08.30 19:29:34
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