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カテゴリ:日常生活
高校を卒業して半年が経った時。 一通の手紙が送られてきた。 書道をしていたその人のすごく達筆な字。 お互い中原中也が好きだった。 ・・高校を卒業するまで、とにかく人に流されまくっていた自分。 色んなことが怖くて、わずらわしくて、とりあえず人に合わせていた。 今思えば、あの頃は小さなキャパの中でもがいていた。 でもその人は・・ いつもその人だった。 地元を遠く離れてしまっていた。 それを案じているかのようにその人からは何度か手紙が来た。 高校のときから大人びていて・・多分大人だったんだろう。 聡明だったその人に、 何度かの手紙のやりとりで「字が間違ってる」なんて添削されたくらいにして。 それである時、手紙にこう書かれてきた。 校庭の隅 姫林檎の実 もぎって齧る ひどく酸っぱい 夏の匂いと君の匂いが まじりあったら ドキドキするぜ 時間が本当に もう本当に 止まればいいのにな 二人だけで 青空のベンチで 最高潮の時に ・・それを読んだときに、ギターのかき鳴らされるイントロとともに、 高校の校舎に囲われた小さな庭にあったベンチを思い出した。 そこに座って見上げた空は、青が際立って本当にキレイだった。 あの人も多分、そんなときを思い出してるんだろう・・と思ったけど、 その返事をどうやって返せばいいか分からず、 手紙は返さなかった。 今年でちょうど高校を卒業して10年。 あの人も今頃は、社会人になり、結婚もしているかもしれない。 多分私が母になったなんて言ったら、お前に子供なんて育てられるのかよ?と笑うだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.02.22 13:13:04
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