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2006.02.05
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先日、書かせていただいた、とある、ろう学校教師の講演会。
定年間際とはいえ、現役の教師を続けながら、
あちらの講演会、こちらの学校へ、と、彼が東奔西走しているのには訳がある。
それは、特別支援教育に対する危機感だ。
今日は、それを少し、書かせていただきたいと思う。


子供の発達に重要なものは3つある。
『その子の発達段階や精神状態に合った集団』
『その子が、今、まさに興味をもとうとしているような、適切な文化』
『その子の主体性』
これらが出会ったとき、子供は一つ、成長する。

子供の脳は柔らかいので、教えこもうと思えば、なんでも覚える。
が、そこに概念が伴っていなければ、それは猿真似に過ぎない。
だから、子供の発達を支援する側の仕事と言うのは、
言葉を繰り返して、それを言わせること、ではない。
その子に合った集団を用意し、
適切な文化を見極め、そして与え、
主体性のない子供には、まず、それを与えるように自信をつけさせること、である。
それら仕事は、前者よりも大変であるし、
親にとっても、目に見える成果がなく、辛い時間である。
まだ、猿真似でもいい「こんにちは」と言ってくれた方が、気持ちが落ち着くかもしれない。
しかし、その3つが備わったとき、子供は急激な伸びを見せはじめる。
その瞬間が、教師にとっても、親にとっても、何よりのご褒美になる。

特別支援教育とは、障碍児も全てクラスに編成し、
体育や音楽、給食など、クラスで参加できることは参加し、
学習で参加できないときに、別クラスで指導を受ける。
そこに、軽度発達障碍の子供など、特定の科目に支援が必要な子供などが参加する。

それでは、クラスのメンバーが常に変わってしまう。
主体性の乏しいタイプの障碍児は、更に自分が出せなくなってしまい、
変化が苦手な子供にとっては落ち着く場所がなくなってしまう。
したがって、発達に重要な3つのうちの集団を整えることが難しくなる。
どんなに適切な文化を出そうと教師が苦労しても、
主体性と集団の力なくしては、その効果は出なくなってしまう…


特別支援教育について、私は詳しくは分からない。
言い訳をするつもりで言えば、
就学までに時間があって、まだピンとこないのが現状だ。
が、彼が最後に話してくれた、運動会の一場面を聞かせてもらって、
こういった空間がなくなってしまうことは、
障碍を持った子供にとって残念なことかもしれない、と思った。
そして、涙が止まらなかった。
気付けば、隣に座っていた一緒に行った保育園の主事も泣いていたし、
会場全体が涙の熱気に覆われていた。


ろう学校の運動会の最後は、毎年、紅白リレーでしめられる。
今年の白組のアンカーは、重複学級の海(仮名)くんであった。
海くんは難聴と自閉症を合わせもつ男の子で5年生。
重複学級ではダントツに足が速い子であった。
ただ、真っ直ぐ走れたためしはなく、
気になることがあるのか、いつもコースの外へと走っていってしまうのだった。
本番ではコーナーごとや向こうストレートに教師を配して、のぞむことになった。

今年の運動会は、異例なぐらい白熱した。
紅白の点数は抜きつ抜かれつ。
決着は最後の紅白リレーの結果に持ち込まれた。

スタート。
が、リレーまでもが大接戦。
混沌とした状態でアンカー勝負へ。
白組が少しリードを保ったまま、バトンは自閉症の海くんに手渡された。
赤組のアンカーは通常学級(難聴児だけの学級)6年生の大地(仮名)くん。
身体も大きく、足もズバ抜けて速い。
抜かれるのは時間の問題だし、何より、海くんはコース通りに走れたことさえない。
場の空気は盛り上がりながらも、教師や保護者にも、暗黙の空気が流れていた。

ところが、どうだろう。

最初のコーナー、向こう直線に入っても、リードが全く縮まらない。
場の空気がどっと変わる。
拍手が鳴り響き、海くんの応援をする声が湧き上がる。

最後のコーナーに入って、海くんと大地くんの距離が、少し縮まったかのように見えた。

その時。
教師や海くんの保護者が目を疑うことが起きた。
ゴール直前。
海くんがスピードを落とさないまま、後ろをチラリと振り返ったのだ。

練習では1回もコース通りに走れなかった。
そんな海くんが、教師の力を借りずにコース通りに走り、
かつ、勝利を意識して、自分以外の人、大地くんが駆けてくることを意識して後ろを振り返った。
これが集団の力、と、言わずして、なんと言うだろう。

そして、そのまま海くんが1着でゴール。

その瞬間、母親からとも教師からともなく手を取り合い、
思いっきり笑い、そして泣いた、という。


『子供は発達の主体者』
という言葉は、衝動にかられて、その場で氏の著書を買い、サインしてもらった際、
(こんなミーハーなことは生まれてはじめてでした)
氏がサインと共に、したためてくれた言葉だ。
あまりにも深くて、私などには、とても解釈を垂れられない。
何かにつまづいたとき、悲しいとき、辛いとき、怒りに震えたとき。
氏の著書の表紙をあけ、書いてくれたサインを見る。
そして、また、その言葉の意味を考える。
もしかしたら、その言葉の真の意味が分かるのは、
娘が私の手元から遠く離れていってしまってからかもしれない。






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Last updated  2006.02.06 01:04:13
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