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温故知新

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2006.08.08
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『うさぎ』をきっかけに落ち着いた、と思ったのも束の間。
6月に入ると、また、新たな噂が私の耳に届きはじめた。
どうも、娘が、保育園の『障碍児めぐり』をしているらしい、というのだ。

園には障碍児が娘の他に4人いる。

2人は1つ下の2歳児クラスのダウン症児。
1人は、0歳児からずっとこの園にいて、園生活途中に障碍児判定を受けた、年長の知的障害男児。
原因は何も分からず、社会性には問題がないのだが、何故か、言葉が出ず、手先も不器用で、
運動能力もゆっくりで、年長の今でも、まだ、トイレトレーニング中である。
そして、最後の1人が今年から入った年中の軽度の自閉症男児。
娘は、この4人を巡ぐりにめぐっているらしい。

『うさぎ』以来、2人のダウン症児に対しては、姉ぶった態度をとり、面倒をみたり、それは可愛がっていた。
が、2人の年中、年長の男の子2人に対しては、どうも、悪さをしているみたいなのだ。

年長児には強く出ているらしくて、物を取り上げたり、1つ下のダウン症児にしていたみたいに、
首根っこを締めるような抱きつきを、嫌がっても止めないらしい。
が、さすがに体格差もあるし、声の大きさも年少の、それも発達のゆっくりな女の子と彼とでは差がある。また、社会性には問題がないため、こういった接触も彼にとっては、なんだか絡んでくる女の子がいるなぁ、程度の認識らしく、本人が問題にしていることはない。
それどころか、私がお迎えに行くと、私の手を引っ張って、娘の場所を教えてくれるようになった。
きっと、彼は彼で、困った妹の面倒をみている、そんな気分なのだろう。

私が心を痛めていたのは、年中の自閉症の男の子、好太(仮名)君であった。

彼には、もっと、困ることを仕掛けていた。
彼の「こだわり」に手を出してしまうのだ。

好太くんは、慣れない保育園生活で自分を落ち着ける遊びを見出した。
レゴで家を作ることだ。
設計図でもあるのではないか、と思われるような、それは見事で美しい家をレゴで作り、
出来上がったそれを持って、食事の場所に移動して食事をしたりする。
娘は、その、彼の安定剤を壊してしまう、というのだ。
それも、家が欲しくて壊れてしまう、と言った反応ではないらしい。
「その家を壊すと、どういうことになるか分かっていて、わざとやっている」っぽいのだ。

それも、ただ壊すだけではない。
壊したパーツからレゴを1つ抜きとり、隠してしまう、という念の入れよう。
当然、彼はパニックになり、家を作りなおす。
が、レゴが足りなくて完成しない。
娘がレゴを返さないので、教室から保育士がレゴを持ってきて渡すのだが、
同じ色にも関わらず、これではない、と言って、更にパニックになる。

そんなことが何度かあった、というのだ。

「きっとさ、△△(娘の名前)ちゃんは私たちと一緒なんだよ。心を許しやすいんじゃないかな。」

好太くんの母と、そのお宅にお邪魔して一緒に夕食をした際、謝った答えに、こう言われて、はっとした。
一年間。
同じクラスの子どもともコミュニケーションが取れなかった娘が、
まず最初に心を開き、ヒドイ方法ながらもコミュニケーションを取ろうとしはじめた相手は、障碍児だった。
それは、まず最初に出来たママ友が障碍児のママたちだった自分と、なんら変わらないのだ。

「それに、好太(仮名)だって、それも人間関係の良い刺激だからさ。」

そんな話をしている私たちの横で、リビング狭しと走り回っている二人と、好太くんの妹の計3人がいる。
一緒に遊んでいるようにはとても見えないが、でも、お互いの存在は許しているように見えた。

そうやって、何度か交流しながら過ごしていたある日。
通院のため、早めに保育園にお迎えに行くと、娘がまたちょっかい出している場面に出くわした。
思わず、駆け寄って止めさせようと思ったが、別のクラスの中、担任の保育士もいるため、
一瞬、躊躇したとき、好太(仮名)くんが怒って大声で言った。

「んもおぉっ!△△(娘の名前)ちゃん、止めてくださいっ!」

隣にいた好太くんの担任の保育士が、えっ…と声をあげた。
「今、△△(娘の名前)ちゃんって言った?」
今まで、ブロックが壊された事実にパニックになっていた好太君が、こんな風に相手に怒っていくのをはじめて見た、という。
はじめて自閉症児の担任になった彼女の横顔が、安堵した表情に見えた。

1つ下のダウン症児に手をあげていた期間もそうだったが、
次の『障碍児めぐり』の段階でも、保育園から、娘を問題視するようなお話は一切なかった。
いずれも自分が見たり、世間話で耳にしたり、他の子どもから教えてもらったりして、こちらから担任の保育士に聞いて知った話である。
聞くたびに、方々で頭を下げ、迷惑をかけたクラスにも謝りに出向いていたのだが、
その度に、
「気にしないで、お母さん。△△(娘の名前)ちゃんも、どうしていいか分からないだけなのよ」
「どうやったら△△(娘の名前)ちゃんが上手に気持ちを出せるか、みんなで話しているからね、大丈夫よ」
と、言ってもらった。
娘の摂食障害も、給食室まで職員会議に参加して、娘のための対策を考えてくれた保育園である。
素直に任せようと思ったし、きっと私ではどうしようも出来なかっただろう。

「子ども同士から学ぶこともあるのよ」
と言われたら、私はきっと不安になっていただろう。
それは、障碍のない子ども同士の話だ。
ハンディのある子どもには、過保護なほど導いてあげてこそ、ようやく成果が出ることが多い、ということを、誰よりも、その母である自分が分かっていたからだ。

そして、8月になった今。
下のダウン症児二人に対して、特別な行動は何もなくなった。
乱暴もそうだが、特別に可愛がったりすることもなくなった。
年長の男の子の方は、あちらの方が気になるようで、娘がいると飛んできて握手をしたりするが、
娘の方は「あぁ」みたいな対応で、特別な関心を寄せてはいないようだ。
そして、その後、好太くんへの仕打ちも耳に入らなくなっていった。

こんな『障碍児めぐり』の間にも、一年間、ほとんど交流していなかった同じクラスの子どもとの関係にも、
少しづつだが兆しが見えはじめた、と、感じる出来事が、また幾つもあった。
次は、これも書き残しておきたいと思う。







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Last updated  2006.08.09 01:16:49
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