多田かおる 『 イタズラな Kiss 』…… 元祖 「引き延ばし系」 少女漫画
★ 『 イタズラな Kiss 』 多田かおる (1990~99年)電子書籍無料版にて、既刊23巻中、3巻読了。実写ドラマ (1996年)、アニメ (2008年) 等は未見。前に 「若い頃、いくえみ綾 (の作品) がキライだった」 と書いたことがあったが、実は、この多田かおるさんも当時、余り好きではなかった。1980年頃までの 『別冊マーガレット』 は、くらもちふさこ( 『おしゃべり階段』 等) を大黒柱として、槇村さとる (『愛のアランフェス』 等)、亜月裕 (『伊賀野カバ丸』 等)、河あきら (『いらかの波』 等)らがメインをはっていて、それぞれ、内容的には恋愛だけでなく、音楽、スポーツ、ギャグ、家族問題など、バラエティーに富み、何より皆さん、きちんと全身の動作を描けるデッサン力があった。それが、80年代に入り、多田かおる や いくえみ綾が人気を得始めると、別マは、加速度的に、動きの乏しい、「ただの」 恋愛漫画が主流になってしまった。勿論、恋愛だけの漫画も嫌いではないが、そればっかりでも飽きる…ってのが人の常。特に多田かおるは、ヒロインがいつも同じような 「元気で小柄でかわゆい」 タイプで、余り感情移入出来なかった上、内容もホレたハレたの一辺倒で、イマイチ深みを感じられなかった。 絵柄は可愛いし、男の子の姿も性格含めカッコいいが、何度も眺めたくなるほどの作画力とも言えず…。読み切りや短い連載で執筆していた頃はまだ良かったが、『愛してナイト』 (1981~83年) の連載が長引き始めた頃から、どうも別マ全体が自分の肌に合わなくなり、当時は白泉社系で、三原順や成田美名子、日渡早紀、清水玲子など、作画が丁寧で、海外や未来を舞台に設定の凝った作品が出てきていたので、そちらの方に興味が移行していってしまった。今考えると、『愛してナイト』 は、ヒロインの恋愛が成就した後も延々、連載が続くことに、自分的には面白みを感じられなかったかな、と思う。今では、それが別マ (少女漫画) の王道のようで、現時点連載中のものでも、 『君に届け』 、 『俺物語』 、『オオカミ少女と黒王子』 、 など、人気作品ほど「両想い後」 の話が延々長いが、その原点が多田作品だったと言える。読者が読みたがるから、そういうのが増えるんだろうし、「その後」 を見たい気持ちも分からないではないが、朝ドラなどでも、ヒロインが相手を見つけて結婚するとドキドキ感は半減してしまうことが多く、恋愛以外に大したテーマが無い漫画なら 尚さら、あっさり切り上げた方が、結果的には印象が良いように思うのだが。というワケで、この 『イタズラな Kiss』 は当然ながら、今回 (無料3巻のみ) 初めて読んだのだが、正直、いくえみ綾を再評価した のと同じような感動は得られず、相変わらずのご都合主義と、画力の進歩の無さ (寧ろ雑になったような?) を感じたが、最近の若い作家に比べると、「分かりやすさ」 という点では優れている。例えばだが、IQ200 だという相手役の男の頭の良さを、具体的なエピソードを重ねて見せているところは説得力があり、なかなか上手いと思った (「テストで一番」 を連呼するだけでは、現実味が持てない)。3巻までのところはストーリーのテンポもよく、余計な脱線も少ない。 この人の作品は、不愉快な人物や、不幸や悲劇とは縁遠いという安心感もある。 色んな意味で、 『花より男子』 よりは良いと思った (3巻しか読まずに言うのもナンだけど)。こうした分かりやすさや王道展開は、メガヒットの絶対条件で、漫画文化の維持にも必要だと思うが、色んな漫画と比べてしまうと、如何せん、「何か物足りない」。つうか、今回、改めて多田作品を読んでみて思い出したのは、作者自身に漂う 「リア充」 臭。多田さんが、実生活でも 『愛してナイト』 のヒロインを体現するかのように、バンドのボーカルの方と結婚されたと聞いた時は、「さもありなん」 と思った記憶がある。「リア充を妬んでいる」 と言われそうだが、あの当時は、「ライブハウスに入り浸るような人に 深い漫画が描けるのか?」 という偏見 (逆差別?) が私にあり、対人関係に悩んだ経験やトラウマの一つも無さそうな作家の作品は 「共感できそうもない」 …という先入観があったってのが正直なところだ (勿論、多田さんがそういう人だと断定は出来ず、作品からそういうニオイが立ちこめていた…ってだけだが)。まあ、私などが こんなとこで多少ディスっても、多田作品人気が揺るがないことは 百も承知だが。この 『イタKiss』 連載中に作者が38歳の若さで事故死されたのは残念で、ファンの心情は察するに余りある。私も三原順が 42歳で急逝されたと聞いた時はかなり打ちひしがれた。 ただ、三原順は既に 色々描ききって亡くなった感じだったが、『イタKiss』 は作者にとっては代表作の長期連載途中。 そうと分かってると、なんかツラくて、今さら先を読む気になれない。三原順が 『はみだしっ子』 の佳境で亡くなってたら、そらぁショックだったろう。 …まあ、作者が死なずとも、『はみだしっ子』 のラストはちょっと「サドンデス」 な終わり方だったけれども。<関連日記>2012.10.24. とんとん拍子で 「高校デビュー」 を果たしていく女の子 の お伽噺 ・・・ 椎名軽穂 『 君に届け 』 2012.12.4. 「嫌われる」 のも大切な経験 ・・・ くらもちふさこ 『 おしゃべり階段 』 2013.6.10. 少女漫画 と 少年漫画 と ハーレムアニメ の悪いとこどり ・・・ 神尾葉子 『 花より男子 』 2014.2.7. 模倣も ここまで長く続ければ 尊敬 ・・・ いくえみ綾 『 潔く柔く 』 2014.2.13. タイトルに偽りアリ? ・・・ 八田鮎子 『 オオカミ少女と黒王子 』2014.7.4. 「読後うつ」 に ご注意 ・・・ いくえみ綾 『 プリンシパル 』 2014.12.2. ブサメンに突きつけられる 「モテる条件」? ・・・ 河原和音、アルコ 『 俺物語! 』 イタズラなKiss1巻-【電子書籍】価格:378円【楽天ブックスならいつでも送料無料】【コミック・書籍全巻セット】【2倍】イタズラなKiss(全...価格:9,123円(税込、送料込)