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【恋の行方】 ☆松下トオル☆さん
Mar 25, 2007
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カテゴリ:カテゴリ未分類

おじいちゃんの桜


IMG_0135.JPG


*素敵な画像はクロはっちさんから頂いたものです。



「お花見に行きたいね。」


建物と曇り空しか見えない病院の窓に目をやり、私は祖父に言いました。

昨年がんで胃を全摘手術した祖父が、胸の痛みを訴えて今週から再入院することになったので、

両親とお見舞いにきていたのです。

今週に入って3回目のお見舞いでした。


「水上村のダムのほとりの桜は見事。綺麗か。」

「そうなんだ・・・見てみたいな。

 あ!熊本城の桜も綺麗だよ。石垣と合ってて。」

「そうね、熊本城の桜も綺麗か。風格の違う。」


おじいちゃんの眼がキラキラしました。

それからおじいちゃんは背中をさすってくれと言い、しばらくさすって

あげると安心したように眠ってしまいました。


1回目にお見舞いに来たとき祖母に聞いた話では、

祖父の肺はすでに胃から転移したがんに侵されており、

レントゲンを撮ると右肺が真っ白に写るくらいだそうです。


もってあと半年。

祖母はそう先生に告げられていました。

でも祖父はまだ、その事実を知りません。



しばらくして、祖父が目を覚ましました。


「また近いうちに来るね。」

「またすぐ良くなるんだけん、無理して来んでもよかよ。」

笑顔で言いました。

隣に座っている祖母も笑顔なのを見て、涙が出そうになりました。


「桜、はやく咲くといいね。」

心からそう思いました。


IMG_0048.JPG














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Last updated  Mar 26, 2007 01:03:21 AM
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