目覚めの時
サイモンとガーファンクルが1970年に発表したアルバム「Bridge Over Troubled Water」(明日に架ける橋) に、「Cecilia」(いとしのセシリア)という曲がある。 'Cilia, you’re breaking my heart (セシリア、君は僕の心を傷つけ) You’re shaking my confidence daily (毎日、僕の自信を揺さぶる) Oh, Cecilia, I’m down on my knees (あぁ、セシリア、お願いだから) I’m begging you please to come home (どうか戻ってきておくれ)愛し合っていたはずの彼女(セシリア)が、ちょっと目を離した隙に他の男と一緒に居て、僕の心は千々に乱れる。必死に懇願したら、彼女は戻ってくれる、と言う。何て嬉しいんだ!…という内容だ。女の魔性に比べれば、男なんて実に単純な生き物だなぁと、思ってしまう。 そう言えば、サイモンとガーファンクルが楽曲を担当した映画『卒業』は、主人公の不倫話がテーマの一つになっているが、そのストーリーは、フランソワーズ・サガン(本名フランソワーズ・コワレ、1935-2004)の処女小説『悲しみよこんにちは』(1954年発表)がモチーフになっているそうな。母のない少女セシルが、父レイモンとその恋人アンヌの再婚阻止を画策するも、セシルの嘘によって破局させられたアンヌが崖から車ごと転落して死んでしまうと、罪悪感を抱く。そんな話だ。男女の痴情の縺れを描いた、という点では共通している。 『悲しみよこんにちは』は映画にもなり(1958年)、そちらも大ヒットした。ちなみに、日本のアイドル歌手浅香唯の「セシル」(1988年8月発売)は、この映画を題材にした楽曲である。