テーマ:☆詩を書きましょう☆(8532)
カテゴリ:心象風景―赤
『きみはゆっくりと泣いたね
少し暗くなり始めた 夕焼け でも 日の入りは遅くなった そうだったな。こんな春の日だったよな。 ぼくらが出会ったのは あたたかい日の光と打って変わって寒く吹く風 頬をなでるのなら もう少しあたたかさがほしい そうだろう? じゃないと 涙なんて 乾かないよ 電車がもうすぐ来てしまうよ 旅立ってしまうよ もう会えない会えないだろう そんな気がしてならない ホームの雑踏の中 こらえる声は 薄れていって 代わりに もう一度 手を繋いだ きみはあの町 ぼくはこの街 呼吸する場所は それぞれ違う きみはあの町 ぼくはこの街 同じはずの空が見えるはずなのに さびしいのはなぜだろう どうにもならないから どうしようもないんだ 町と街を繋ぐ電車があったって きみとぼくを繋ぐ絆もあったって でも やっぱり どうにもならない事情があるって どうにかできないのかよ 叫んだ 深夜1時 照明も落ちたアパートで きみは 何も言わずに うつむく 声にならない声が 答えになって 町に帰らなきゃならないって そう聞こえた 深夜1時 繋いだ手のあたたかさは この世界で一番やさしいあたたかさ そんなぬくもり もう灯らない ぼくもこの街を 離れられない それにも やっぱり どうにもならない事情があって 子どものときに見た桜は ただ綺麗としか思えなかった けれど 大人になって今見た 桜は綺麗だけじゃ片づけられない きみとこの街 過ごしたぼく 見える風景 すべてがすべてだった ぼくとこの街 過ごしたきみ そのまま 残したかった きみの姿だったけれど 影すら伸びてくれない 夕焼け 電車が来てしまったよ もう一緒にこの街に立つこともできないよ 繋いだ手もほどけていったよ ドアがゆっくりしまっていったよ まるでドラマのようだった そして まるでドラマのように にじんだ景色が 流れていった』
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Last updated
2011/04/04 10:29:04 PM
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