2007/10/02(火)14:02
摩耶の旅 第8回「鉤十字の国」 第10章「大攻勢」
枢軸軍はペルシア宣戦と同時に攻撃を開始、山岳地帯に籠るペルシア軍の抵抗を撥ね退け、枢軸軍はペルシア国内に侵入、機甲師団が砂漠を駆け、機械化歩兵がその後を追う。後詰めとして独軍歩兵、枢軸軍の増援部隊が防衛に就き、キャタピラの後を踏みしめながら目的地を目指した。平地における機甲師団の進軍速度と戦闘力は凄まじく、連合軍の援軍はついぞ間に合わず、ペルシア軍はルフトヴァッフェの近接航空支援によって壊滅した。ペルシアは1ヶ月余りで第三帝国に併合された。枢軸軍は二軍に分かれ進軍を再開、一方はロンメルのアフリカ軍団、もう一方はマンシュタインのアジア軍団である。
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ロンメルがスエズ運河を封鎖した頃、イタリアが枢軸陣営に加盟。イタリアは戦時体制が全くと言っていい程整っておらず、アフリカへの部隊展開に時間がかかり、当初ムッソリーニが目論んだ領土拡張は果たせぬまま終わった。連合軍は完全にエジプトを放棄、アフリカ国家となっていたフランス、ベルギーが更に領土を失うのに、そう時間はかからなかった。
アフリカ軍団の活躍を横目に、マンシュタイン指揮下のアジア軍団はカラチに籠る連合軍の大部隊を撃破、空陸一体の戦術でインドへの道を切り開いた。ほぼ丘陵地と平地のインド戦線は戦車戦に適しており、大英帝国の象徴的存在だったインドは、数ヶ月で枢軸軍の手に落ちた。
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1944年11月 デリー
統合作戦本部長 フランツ・ハルダー
「ご苦労だな、マンシュタイン」
アジア軍団司令官 フォン・マンシュタイン
「いえ、全ては前線の兵士たちの努力の賜物ですよ」
「そう謙遜するな」
「それで、わざわざこんなところまで。何用です?」
「うむ、君に会わせたい人がいる」
「?」
「入ってくれ」
中国方面軍司令官 東条英機
「失礼します」
「あ、貴方は・・・」
「誰?」
「いや、東条英機だよ。知らないのかよ」
「ああ、役にも立たない精神論を振りかざし、太平洋戦争に日本を引きずり込んだ東條さんですか」
「・・・殺していい? ねぇ?」
「まぁまぁ、事実ですし」
「お前もか」
「そういうわけだ、マンシュタイン。中国へ侵攻するから、これからは日本との連携が必要だ。軍事的戦略は我々に任せ、政治的な事柄は総統が直々に行う事になっている。君たちは心おきなく、中国へ向かってもらいたい」
「「は」」
本来ならば独軍は単独で中国南部を占領する予定だったのだが、対ソ戦開戦時に行った取引で中国は日本の勢力圏内に入っていたため、結局中国侵攻作戦は日独の連携の下で遂行される事になったのであった。
かと言ってタイム・スケジュールがずれ込む事なく、中国は日本の勢力圏下に置かれる事になった。
続く。