養ほう振興法の見直し
8ちゃんねるをご覧の皆さんはご存じかと思いますが、養ほう振興法の見直しが検討されています。そのきっかけのひとつに、日本養蜂はちみつ協会の自民党への要請があるようです。こちらに、その要請文がアップされています。これを拝見して、思ったことを書いてみたいと思います。もしかすると、養蜂家の方から見ると面白くない部分もあるかもしれません。友人にも養蜂を営んでいる人もいますが、どう思うのかな。日本養蜂はちみつ協会の「養蜂振興対策についてのご要請」についての意見1.みつばちを飼育している全ての者を届出の対象とすることについて(意見) 全飼育群を届出対象としても、養蜂業者の保護育成に結びつくものではなく意味はないと思います。 もし当該届出を一般市民の趣味養蜂に対する障壁と考えるならば、趣味養蜂家にとって届出行為が障壁になるとは考えられず、単に行政の負担を増やすだけです。(理由) 当該要請の理由として「趣味養蜂の飼育届や転飼許可申請が不要とされている現状は、全国の養蜂業者の安定的経営を阻害している。」としていますが、その根拠が不明であり、理由のない誹謗中傷の類というべきです。事実だとするならば具体的なデータを示されたいと思います。当該提案のごとき趣味養蜂家を敵対視して排除するものとしても、市民から反感をもたれるだけであって養蜂振興施策上得るものはないと思われます。 また、「全てのみつばち飼育状況を把握し」とありますが、そもそもニホンミツバチについては野生種であり飼育群はそのごく一部に過ぎません。さらにセイヨウミツバチについては養蜂業者の保有群が分封しあるいは逃去したものが野生化していますが、この2点についてはどのように考えるのか説明がほしいと思います。それがなければ飼育群のみの蜂群を把握しても意味はありません。 一般市民の趣味養蜂の場合は飼育群が数群ということが多く、届出自体は費用や手間が大きな負担となるとは考え難いです。2.分布調整・転飼に対する指導強化について(意見) 分布調整には意味がありません。転飼については、疫学上必要な場合にはニホンミツバチも含めて移動及び転飼養蜂の包括的禁止をすべきです。(理由) 当該要請の理由では単に趣味養蜂者を感情的に敵対視しているに過ぎず、また「違法な飼養者」とはどのようなものを指すのか不明です。また分布を制限するためには、みつ源植栽面積あたりの蜂群数を定めることになると考えられますが、この相関の適正値については養蜂家の勘によるものしかなく科学的知見はないため、分布調整の根拠がありません。 仮に、みつ源確保のために分布調整が必要だとすれば全体の養蜂群数を制限しなければならないでしょうが、この場合には当然業として養蜂を行っている者の保有群数が多いため、農林水産省が政策手段シートにうたう「国産農畜産物の消費喚起及び供給拡大」という目標に反する結果となることが予測されます。 通常、みつ源植物として考えられるのは果樹等の栽培植物であり、これらの栽培面積の減少と露地栽培からビニールハウス等での管理型栽培への移行がみつ源の枯渇の理由となっていると思われます。これは産業構造の変化による問題であり、何らかの農林水産省の指導が必要です。 さらに、「養ほうをめぐる情勢について」(農林水産省生産局畜産部畜産振興課)によれば、はちみつ生産量については蜂群数との関連よりもみつ源植栽面積との相関が強く認められます。はちみつ生産の拡大を目的とするならば、蜂群配置の見直しよりも、みつ源の確保を検討するべきであり、養ほう振興法第6条を現在の訓示規定から踏み込んで、みつ源の保護育成を図ることを検討するべきと考えます。 転飼については、フソ病その他のミツバチにおける感染症の防止という観点で議論するならば、まず保菌・発症が確認されているセイヨウミツバチによる感染拡大を考慮すべきであり、養蜂家の行っている転飼養蜂をより厳しく規制すべきです。そのためには第4条を改正し転飼養蜂の包括的禁止を定めるべきと考えます。 また、野生生物および在来固有種の保護という観点からすれば、養蜂家の飼育するセイヨウミツバチは、外来生物法にいう侵略的な外来種に類するものといえます。疫学的観点からも、養蜂家の管理を離れた群によってフソ病その外の感染症が拡大される可能性は否めず、養ほう振興法の見直しを行うのであれば、飼養されているセイヨウミツバチの逃去、散逸を防ぐための法的手段を検討しなければなりません。3.みつ源の保護増殖対策を拡充強化すること。(意見) 賛成。ただし当該要請の理由については認識不足と偏見によるものであり間違いです。(理由) 前述のとおり、「養ほうをめぐる情勢について」によれば、はちみつ生産量については蜂群数との関連よりもみつ源植栽面積との相関が強く認められることから、業の振興を図るためには、みつ源の確保は必須と考えます。 ただし、みつ源保護の視点から適正配置についての議論を行うのであれば、農林水産省は、養ほう振興法第7条第2項のとおり、各都道府県のみつ源の状態その他についての資料を公開し、その分析および施策の方向性を示すべきです。 また、同資料によれば、はちみつの需給については、平成12年以降生産量輸入量ともに大きな変動は見られず、わが国におけるはちみつ需要そのものが安定的かつ緩やかに減少していると見るべきです。したがって農林水産省の掲げる目標の「国産農畜産物の消費喚起及び供給拡大」において問題とすべきは、はちみつ需要の喚起です。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。※参考とした資料 1 養ほう振興法 2 養ほう振興法施行規則 3 平成22年度政策手段シート(農林水産省) 4 平成23年度政策手段シート(農林水産省) 5 「養ほうをめぐる情勢について」(農林水産省生産局畜産部畜産振興課)