2006/05/01(月)00:18
‘モビィ・ドール’ イルカの島
熊谷達也の、海と南の島を舞台にした、長編小説である。
‘邂逅の森’や‘山背郷’のような重量感のある作品とは異なり、
さらりと読める現代小説である。
今、人々の癒しの対象として、人気のイルカたち。
イルカとシャチを巡って、様々な人間模様が描かれている。
終盤は、自然の厳しさが臨場感を持って描写されており、スリル溢れる展開となっている。
モビィ・ドール
1度辛い離婚を経験し、精神的に参っていた涼子が、
大学から続けて来たイルカの生態調査のためにこの島に来て、
ドルフィン・スイムの手伝いをしている。
かつては捕鯨船に乗り込み、その後イルカを獲って生活を立てていた岡田が、
今はイルカのウォッチング船の船長となり、島の観光に貢献している。
この島は、今やイルカなくしては、生活ができなくなっていた。
イケメンで軽い男、葛西が、新しいダイバーとしてやってくると決まった日から、
なぜか次々とトラブルが起こる。
そして後に、彼は、かつてバディーを海で死なせてしまった経験から、
潜れないダイバーになっていたことがわかる。涼子は、何とか葛西がもう1度もぐれるよう、命がけで協力するのであった・・・。
突然のシャチの出現から、イルカたちの様子がおかしくなり、
ある日を境に毎日数匹のイルカが座礁し、体を弱らせ、死んでいくようになった・・・。
このままでは、イルカがこの島からいなくなり、観光が成り立たなくなる。
イルカが座礁するのは、あのシャチの出現にイルカが怯えているからだと涼子は考える。
人々の死活問題と、動物愛護の目、自然との共生、
様々な視点から解決策を探す涼子は、
葛西と秘密の計画を実行に移すのだったが・・・。