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この前、以前に住んでいた駅に降りたら、子供頃から、30年も親しんでいた書店がなくなっていました。
昭和の終わり頃、私の住んでいる大阪の近郊では、普通しか停まらないような駅でも、必ず、駅近くに書店があったのですが、今では、書店のない駅も多くなっていて、多くの町の「本屋さん」が消えてしまっています。 「本屋さん」そのものが、絶滅危惧種のような感じです。 今、日本に書店が何件あるのかしりませんが、当時は、日本に2万の書店があるといわれてましたけど。 その、私がよく通っていた、無くなった書店の最寄の駅周辺には、記憶しているだけで、7軒の書店がありました。 尤も、自宅からみて、駅の向こうには、あまり足を運ばなかったので、そちらの方にも、店があったかもしれません。 その7店のうち、2店は、地元では、名の知られた中堅書店の支店、残り5店は、個人経営の町の「本屋さん」でした。 ところが今、残っているのは、その中堅書店の支店のうちの1店のみ。 あとの6店は、すでになく、一方で、大手ビデオレンタル店の経営する店舗が1店舗、新たに開店していました。 個人店5店のうち、比較的遠かった1店は、あまり行ったことはなく、表を何度か通った程度ですが、それ以外の4店は、今もよく覚えています。 うちと駅の途中にあった小さな本屋さんは、当時、50歳代くらいの夫婦で経営されていて、旦那さんは、自転車で配達しているのをよく見かけました。 当時は、今のように、コミック本にビニールをかけている店は、まだ少なく、よく立ち読みに行っていたのですが、一度も、いやな顔をされた記憶はなく、取り寄せを頼んだりして、よくコミックや文庫本などを買った店でした。 開店してから、なくなるまで、15年ぐらいだったでしょうか。平成になる頃には、もう店はなく、美容室に変っていました。 もう1軒は、車の多い通りに面した店でしたが、昭和30年代のタイムスリップしたような古い店で、古い本が棚にずっと前から収まっているような反面、新刊本や雑誌が床に無造作に置かれていたりしていました。 そして、いつ行っても、おばあさん1人が、ラジオを鳴らし、奥のレジで新聞なんかを読みながら、店番をしていました。 尋ねたことはないのですが、おそらく、本のことを訊いても、あまり知らないんじゃないかという感じで、雑誌や新刊の文庫本やコミックをたまに買いに行った程度でした。 もう1店は、立ち読みが一番しにくかった店。 少し強面の親父さんが店にいて、長い間立ち読みをしていると、本を取り上げられたりしました。 でも、比較的、コミックの品揃えが良かったので、皆、懲りずに立ち読みに通っていました。 それでも、一番、本を買った店じゃないかと思います。 そして、今回、無くなっていた店、「○○栄堂」という名前が、いかにも本屋という感じで好きでしたが、店自体は、さして広くなく、雑誌と新刊文庫本や新書などが主でした。 しかし、その店の名にふさわしく、棚の最上段を見上げると、なんとか全集などというような、高価な文学的な本も置いてあったりして、それはそれで、雰囲気がありました。 駅の改札から20歩程度で行けるので、雑誌、とくに時刻表を一番よく買った店(笑)で、ダイヤ改正号などの発売日は、会社の帰り、そこで時刻表を買って、隣の喫茶店(こっちは、10年くらい前になくなってしまいました)で「読みふける」のが、楽しみでした。 いつも、店にいるのは、私と同年代くらいの男の人が1人。たまに、少し年配の男性がレジにいたりしましたが、後で聞いた話、3代続いていた結構古い本屋さんだったそうです。 あの、高価な全集を置いていたのは、そのせいだったのかもしれません。 当時から、コンビニに雑誌やコミックを置きだし、町の本屋さんは、苦境に立たされるところが増えてきました。 活字離れとか、本の電子化なんて話も、20年以上前から言われてました。 しかし、本は、定価販売制で、どこの店で買おうと、値段は、同じですから、小さな本屋さんでも、それなりに頑張れば、勝負には、なっていたのですが… やはり、品揃え、とくに、1日に100点といわれた新刊と、雑誌を網羅するのは、個人店では、不可能な話で、大型店舗やネットの書店が拡大するにつれて、力尽きて、本屋さんの多くが消えてしまいました。 町の空洞化、人口の減少も大きい要因だったかもしれません。 本屋さんというのは、当時のイメージとして、レジで座って、お客を待っていればいいという、比較的楽なものだと思っていた人も多かったのですが、実際は、そうではなく、毎日、取次店と呼ばれる問屋から送られてくる雑誌や書籍を裁くのは、結構たいへんなものだと思います。 限りあるスペース、とくに個人経営の小さな店では、それをすべて置くことはできないですし、その中から、売れる、売れないを判断して、棚に並べるのと、返品するものを選ぶのは、それなりの見識も必要だったと思います。 時代といえば、それまでですが、小さな本屋さんがたくさんある町というのは、それだけ、本を読む人、本好きな人が多く住んでいる、第一、それなりの数の人がいるということで、どこか、活気があるような感じがします。 書店に限らず、雑貨屋さんや喫茶店など、あの頃、今にして思えば、経営として、成り立っていたのかな?と、疑うような店が、昭和の終わり頃には、町にたくさんありました。 今の時代なら、とても、そんな店は、やっていけないでしょう。 しかし、便利になった今と、営業しているのかどうか、疑わしい店が駅の近くに何軒もあったあの頃と、どっちが客にとって楽しいのか、人が幸せに暮らしているのか、あの書店がなくなったのを知ってから、よく考えています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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