ジョン・ハート=著
日本語版監修=芦沢一洋
訳=細野平四郎
発行=森林書房
発売=山と渓谷社
初版=1980年7月1日
原題が"Walking Softly in the Wilderness"であるから直訳すると「荒野を優しく歩く」だろうが、邦題は「これからのバックパッキング」なのである。
1977年、アメリカの自然保護団体シェラクラブが刊行したバックパッキングの手引書というべき一冊で、同時期に発行されたコリン・フレッチャーの「新版・遊歩大全」と比較すると、教科書的な色合いが濃い。特に大地に危害を与えない軽量化をはじめとする「ローインパクト」に対する造詣が深く、このへんはさすがシェラクラブである。
15年ほど前に古本屋で入手した当時の日本では「ローインパクト」なんて言葉がちまたに浸透し出した頃だと記憶しているから、副題の「シェラ・クラブからローインパクト法の提案」(原題は"The Sierra Club Guide to Backpacking")というのは随分と進んだタイトルをつけたものだと思う。まさに「これからの~」なのである。
さて、久々にこの本を手にとってペラペラめくっていると面白い部分を見つけたので紹介させて頂く。第6章・寝具の中の一節でVBLについて言及しているのだ。
(前略)最近になって新しい考え方が試みられている。体の周りをわざと非通気性の層で覆い、ウィルダネス・ベッドの中に「水蒸気の壁(ヴェイパー・バリア)」を作ってしまおうというのである。(中略)防水性のバッグに入って寝るときは、皮膚に接した空気層がたちまち湿気を含み、しかも逃げない。これでは汗で溺れてしまうのではないかと心配になる。ところが実際には次第に汗の出かたが衰え、体熱の発散は通常より減少する。この考え方の信奉者たちは水蒸気の壁を作っても濡れて不快になる心配はなく、スリーピング・バッグの断熱力を十二分に生かして、暖かさをより高めることができると主張している。
そして「某社」としながらダウン・バッグと大きめのポーラガード入りアウトサイドバッグ、それに非通気性の内張りから成る三つぞろいの「スリーピング・システム」を発売している、と紹介しているのだが、「某社」ってどこだろ?これもまた進んだプロダクトだな。(と、いうかメジャーアウトドアメーカーでは現存していないわけだからやはり一般ウケはしなかったのだろう)
VBLの有効性は僕自身あまり実体験がないので分からないが、同書でも「この問題の是非は自分で判断して欲しい」と結んでいる。
今となっては古典的(?)な文献であるが熟読すれば新たな発見があるかも知れない。腰を据えてもう一度読み返してみようか。これからのバックパッキングを考えながら・・・。
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