[第2ステージ]ホロゴンの内光性はかなり周辺減光のおかげみたい
ホロゴンを手に入れて、一番苦労したのは撮影法でしたが、二番目に苦労したのは、露出でした。ご承知の通り、HologonUltraWideは、距離計なし、露出計なし、絞りF8固定という原始カメラ。露出は、500分の1秒までのシャッター速度で調節します。この露出決定は、EV値を使えば、至極簡単です。ASA感度100のフィルムで、F8:500分の1秒はEV値15です。EV値15は、いわゆるピーカンですから、日中夕方まで撮る場合には、どんな天候であれ、露出はEV値15から9程度に収まってしまいます。つまり、7段階程度の光量を読めれば、それで足りるのです。夜間は?と言いますと、もっと簡単。F8で夜撮るなんてどだい無理なのですから、手持ち可能なシャッター速度にして撮るだけ。私の場合、8分の1秒(EV値7)でなんとか止まりますので、ひたすらそれで撮ります。難題は、ホロゴンの場合、通常のレンズとは露出値が大幅にずれることにあります。通常レンズの標準値で撮ると、2段か3段マイナスに仕上がってしまうのです。そこで、常に標準値よりも2段オーバーに設定することにしました。それで、なんとマイナス1.5程度にあがってくるのです。私の写真が一貫して暗いのはそのせいです、性格はあくまでも明るいのですがねえ。そうすると、EV値15は13なので、ASA感度400の高感度フィルムもちゃんと使えます。だから、常用フィルムは、昔はプロビア400、数年前からコニカセンチュリア400。このセンチュリア、ホロゴンにもスキャンにも最高です!しかし、実は、これからが一番の問題。ホロゴンというレンズ、三枚玉ですが、一番後ろの玉はほとんどフィルム面に触れんばかり。完全球面ですから、フィルム中央の光量と周辺の光量とは8:1という極端な差があります。そのため、二枚グラデーションNDフィルターが用意されています。これがガラス面を研磨して、レンズ状に膨らませて、光量差を回復する仕組み。手工芸品のようなものですから、超高価(私のは1枚79,000円)。ところが、これを使うと、まるで普通の写真になってしまいます。だから、私は一度も使ったことがありません。誰か買う人いないかな?私が撮った解決策、それは、中央の明るさで露出を決め、周辺は暗くなっても気にしない!すると、どうでしょう! 中心部分は内側から光を発するように写るのです。私はこれをホロゴンの「内光性」と名づけています。この内光性こそ、ホロゴンマジックの原動力なのです。でも、普通、周辺減光はレンズの欠点として考えられています。それも当然です、周辺が突然すとんと落ち、汚いのですから。昔のレンズはたいていそうですが、コンタックスT2のゾナーやリコーのGR21ミリもそうでした。でも、ホロゴンの場合、周辺減光が実に自然でなだらかなので、汚くないのです。「この写真、日中シンクロですか?」と尋ねられることがよくあります。15ミリに日中シンクロを使いますと、ポカンと中央が不自然に明るくなってしまうはずです。いえ、してませんよと答えますと、一様に不思議そうな、だまされたような表情で黙り込まれます。私は、内心、ウヒヒとほくそ笑み、「ズルしようったって、そうはいかないよ」とつぶやきます。ホロゴンの空気感の秘密もここにあるのかも知れません。とにかく言えること、それは、ホロゴンを使って、一度も周辺減光を不快に思ったことはありません!トリミングができないのも、このせいです。どこかでトリミングしますと、高輝度の部分が偏ってしまうので、すぐばれてしまいます。でも、不思議なことが一つあります。太陽の位置が左右どちらかにずれている場合など、両隅の空の減光の程度が違うことがあります。いずれにせよ、減光の具合を予測することはできません。ホロゴンの周辺減光は、まだまだ未知の領域なのですね、訳あり女のようなものでしょうか?ホロゴンがどんな過去を背負っているのか、はかりしれない暗く深い闇なのである。今回はサンプルとして3枚適当に選んでみました。いずれもダイナミックに減光してゆきますが、不自然ではない、そう感じるのですが…ただし、職業写真には使えませんね。