テーマ:家電よもやま(9587)
ピッチのウィルコムがピンチだ。国内で唯一、PHS事業を手掛けるが、契約数の減少に歯止めが かからない。26日には、筆頭株主である投資ファンドの米カーライルにより、喜久川政樹前社長が 事実上解任され、経営も迷走している。来月にも開始される次世代通信サービスに賭けるが、 その前途は多難だ。 ■PHSを愛する男 日本の通信業界を代表する“名物”社長は静かにその職を辞した。記者会見も開かれず、短い プレスリリース一枚が発表されただけだった。喜久川氏は副会長に退き、ソニー出身の久保田幸雄氏が 後任に就く。 「PHSを心から愛する男」。業界関係者は、トレードマークのるスキンヘッド姿でウィルコムを 引っ張ってきた喜久川氏のことをこう呼ぶ。 早稲田大学卒業後、第二電電(現KDDI)に入社。その後、ウィルコムの前身であるPHS事業の DDIポケットに出向する。京セラとカーライルがDDIを買収し、ウィルコムと名を変えた後も残った。 平成18年10月には、NTTや電力系事業者が相次ぎPHS事業から撤退する中、日本で唯一の PHS事業者となったウィルコムの社長に43歳の若さで就任する。 出足は好調だった。音声・データ通信の定額プランや、17年に発売した国内初のスマートフォン (高機能携帯電話)「W-ZERO3」が好調で、社長就任から半年後の19年4月には、新規契約数から 解約を引いた純増数が500万件超を記録した。 ■携帯各社が猛攻撃 しかし、好調は長くは続かない。ウィルコムの強みである音声とデータの定額サービスを照準に、 携帯電話各社が猛烈な攻撃を仕掛けてきたことから、ウィルコムの契約件数は減少に転じる。 攻撃の口火を切ったのはソフトバンクモバイルだ。19年1月に月額980円の安さで午前1時から 午後9時まで契約者同士の通話が無料になる「ホワイトプラン」を開始。月額2900円で24時間 無料で通話できるサービスを展開していたウィルコムに強烈な打撃を与えた。 ソフトバンクはその後、契約純増数で首位をひた走ることになる。 データ通信でも携帯各社の猛攻を受けた。先行するウィルコムに対し、19年後半までに携帯各社も 相次ぎ月額5000円程度の定額サービスを開始。通信速度も毎秒3メガ(メガは100万)ビット超と、 数百キロビットのウィルコムよりも大幅に速く、顧客の流出が加速した。 さらに新参組のイー・モバイルが20年7月に、データ通信サービスを契約すれば小型パソコンを 事実上無料でもらるキャンペーンを開始。ウィルコムもPHSの通信機能を搭載し、パソコン同レベルの 機能を持つ小型携帯端末「ウィルコム D4」を発売したが、圧倒された。 ■起死回生なるか ウィルコムが、起死回生を賭けるのが10月に商用サービスを開始する次世代無線通信サービス 「XGP」だ。19年12月にNTTドコモやソフトバンクと競り合いの末に、総務省から事業免許を 取得した。XGPは毎秒20メガビットの高速通信が可能な技術で、速度の遅さに泣き続けた ウィルコムにとり待望の切り札だ。 だが、見通しは楽観できない。同じ高速無線通信ではKDDI系のUQコミュニケーションズが7月から すでに商用サービスを開始。さらに、来年には携帯各社が、毎秒100メガビット超の高速通信サービスを 始める。ウィルコムは、両者の間で埋没しかねない危険性がある。 XGPのもう一つの狙いだった海外展開でも、最有力市場と目された中国で政府がXGPの 基盤技術であるPHSではなく、携帯電話を重視する姿勢を表明する誤算に見舞われた。 5月には喜久川社長が当時の鳩山邦夫総務相らと中国を訪問し、現地企業とXGPの共同研究を 行うことで合意したが、どれだけ市場に食い込めるのか、不安は尽きない。 ■業を煮やしたファンド PHS事業が先細りし、XGPの先行きも不透明となるなか、業を煮やしたカーライルの下した決断が、 人事の刷新だった。 喜久川氏の後任の久保田氏は、カーライルの強い意向で社長就任が決まった。カーライルの 安達保氏自らが会長に就くことからも、そのいらだちがうかがい知れる。 人事が公表された際、今春にも実施されると報じられていたカーライルによる増資がいまだに 行われていないことも明らかになった。増資はXGPのインフラ整備に必要な資金の調達が目的と されてきた。 「ウィルコムに追加出資するため、カーライルが米国の親会社を説得する材料として今回の 人事刷新を断行した」との見方がもっぱらだ。 ただ、ファンドであるカーライルは、投資回収のため、いずれかのタイミングでウィルコム株を売却する。 「追加投資のかさむXGPサービスにどこまで本気で取り組むつもりかわからない」と、その真意を いぶかる声もある。 ウィルコム側は今回の人事について、「XGP開始に向けた経営の強化策」と強調。副会長に退いた 喜久川氏も「引き続き経営に参画する」と説明する。 だが、XPGサービスが伸び悩めば、カーライルが早々に見切りをつけ、売却による投資回収を 急ぐ可能性も否定できない。ピッチを愛した喜久川氏が心血を注いできたウィルコムは、まさに 正念場を迎えている。 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/31/news014.html [1/2] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.09.24 15:50:32
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