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カテゴリ:調理場にて
クリスマスが近いですね。
日本では既に、何所かしこにクリスマスツリーとサンタの人形が飾られているのではないでしょうか。そしてその横には「雪」とか「ソリ」、「トナカイ」など。 この時期が近くなってくると、必ず思い出すことがあります。 それは予約のクリスマスケーキ500個、ブッシュ・ド・ノエル300本作成・・という、下っ端コックの宿命でもある、もはや"試練の道"とか"棘道"を裸足で歩いて通るくらいの最強の激務をこなさなければならなかったのです。 まずスポンジをクリスマス2週間くらい前からコンベクションオーブンで焼き始めて冷凍。クリスマス直前に解凍して、それから生クリームを塗りたくり、マジパンやら何やらを飾って箱詰め後、リボン包装。 こう書くと簡単そうですけどね、クリスマス直前23日から25日にかけては殆ど寝る時間も無いほど仕事します。 作業中、頭の中では 「わーい☆ケーキだぁ♪ 美味しそう~♪ママ~、食べて良い?」 という子供が喜ぶ姿や、 「は~い♪ダーリン、あ~~ん☆ 次は私をたべてね♪」 といったクサレ外道カップルのチョメチョメの前座に使われているところや、 「あ~パパのケーキの方が大きい~!ずる~い☆」 と家族団らんでケーキを真ん中に置いてカットしている所をイメージして、 甘い匂いに気持ち悪くなりながら、 ただひたすら・・ 「美味しくなーれ・・・美味しくなーれ・・」 と一人ブツブツ言いながら何百個ものスポンジに生クリームを塗ります。だから当方は1つのケーキに生クリームを塗るのに30秒も掛かりません。かなりの早業ですよ、見せたいくらい。 アメリカでジミ・ヘンドリックスという伝説のギター弾きが居たんですけど、その早弾きを聞いた人からは彼にギターを扱わせると、 「自分のチンコよりも正確に操る」 と、何を以ってチンコと比喩したのかはわかりませんが、そう言われていたそうです。それほど早く、正確にギターを弾いていたんでしょう。 そして当方の場合、ケーキに生クリームを塗るという、その早業を見た同世代のコックからはよくこんな事を言われてました。生クリーム用パテナイフを扱わせれば、 「包丁使うより上手いね」 おいおい、ちょっと待てよ。なんだその言い草は、それじゃまるで本業のほうが駄目駄目ちゃんみたいじゃないか。 と言ってもね、評価するのは自分じゃないですから。きっとあまりの速さに嫉妬していたんでしょうね、彼等は。ははは ・・・・ はぁ、なんだか思い出したらだんだん胸くそ悪くなってきた。 それでも後になって笑い話に出来るということは、やっぱりその時が楽しかったからであるわけで、「あの時は大変だったなぁ」とか「やってもやっても終わらなかったなぁ」とか、「眠いなぁ・・」とか、一般的に見ると大変なんですけどコレはコレで今となっては、とてもいい勉強が出来たと思っています。社会秩序とか、そっち方向でもね。 で、当方個人のプライベートではその頃・・というか、青年男子としては二十歳前後ともなると恋人の一人や二人いるわけじゃないですか、その恋人のために何とか時間を作る事ができるのが、ちょっと遅い26日なんですよ。 それで、26日は適当にデートをするわけですけど、これがまたね、身体にバニラエッセンスの匂いが染み付いて取れないんです。何回風呂に入っても1日じゃ落ちない。 2人でベットに入ると、相手の第一声が 「アンタ・・・ バ ニ ラ ク サ イ 」 ですからね。もう散々ですよ、そこで「生クリーム☆ケーキプレイ」に突入しそうになる気持ちを抑えつつ、甘い匂いを放ちながら朝を迎えるという、当方的には同じベットで6年くらい続いた毎年恒例の行事でした。 今でさえ、どこでどう間違ったのか少しだけ偉くなってしまったので、もうそんな下っ端仕事はやらせてもらえませんが、このシーズンが近くなってくると良い意味でこういう事を思い出してしまいます。 世間で言うクリスマスには甘い思い出を作る、とは良く言いますが、当方の場合その本人自体が甘いわけですから、何気に当方の彼女ってのはクリスマスシーズンになるとある意味二度美味しいかもしれません。 いや、アフターサービスで四度美味しいかも。へへっ☆ ******** スペイン語ではクリスマスのことを「Noche Buena」、日本語に直訳するとそのまま「聖夜」になります。あと、サンタクロースはこっちでも子供達の心の中に存在するらしく、寝る前枕元に「靴下」を置くってのも日本と同じでちょっとビックリ。 恋人と過ごすという習慣は無く、家族内や友人家族とパーティをしたり、いつもよりもちょっと贅沢に過ごすのが恒例みたいですね。楽しいですよ、パーティ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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