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カテゴリ:音楽
これ,なんだかわかります?
昔,卒研時に製作したMIDIペダルなんですけどセンターポジションで固定されるという珍しいペダルなんです. ベースはエレクトーン奏者ならお馴染みのセカンドエクスプレッションペダル(以降2ndExp.)です. 簡単に言うとピッチベンドをペダルでやってしまおうというコントローラです. MIDIパラメータにはセンターポジション(128分解能で64値)がデフォルト扱いのものが意外とあるんです(ピッチベンドの他にもブライトネスとか,etc...) 一般的な奏者なら手でコントロールするところですが,エレクトーンのように両手をふさがれてしまう演奏スタイルではこれらのコントロールは不可能なんです. それを可能にしたのが,センターポジションで固定できるこの2ndExp.なんです. ピッチベンドホイールのペダル版と言ったところです. シンセニストにとってはピッチベンドホイールを手でコントロールするのも"見せる演出"に欠かせないポイントになるわけですが,コードを弾きながらブラスセッションを弾いたり等,両手で弾かないといけないことが多々あって割り切りが必須です. 故に,ブラスセッションのしゃくりあげ等はピッチベンドで表現ができない場合,PEGであらかじめしゃくりあげを仕込んでおいたり,アフタータッチにピッチアップやダウンを仕込んでおいたりと工夫が必要ですし,発音の度に気を付けないといけなかったりと演奏難易度も上がります. 一応,ピッチベンドを足でコントロールできる方法はゼロではなく,MIDIフットコントローラの類を使用して,ピッチをペダルにアサインしておけば足でのコントロールも実現可能ですが,元のピッチに戻すために踏み込みなおさないといけなかったり,ペダルが不意に中途半端なポジションで止まってしまったりすると音痴なままになったりとリスクが伴います. それらの危惧をスポイルしたコントローラがこのセンターポジションキープされる2ndExp.になるわけです. ペダルシンセであるMoog Music Inc.の"Taurus 3 Bass Pedals"ではピッチベンドホイールを大きくした足でコントロールするピッチベンダーが装備されているので一番近いと思います. ただ,これを見たとき足の踏み込みが安定しないのでは?と不安になりました. 特許の問題でもあったのかなぁ… ペダル然としていると突起が増えるため持ち運びはしにくいんですが(D-DECKの足鍵盤がいい例)便利ではあるんです. ま,実践で使ったことがある人にしかわからないと思います. 推測ですが,市場に出回らないのは生産コストに見合うだけのニーズが見いだせないからではないでしょうか? 店員さん観点で言えば『初心者の初期投資で勧めることができないアフターパーツ』になってしまいます. おそらく市場に浸透しても誰にでも売れるものではないでしょう. "知っている人が買うもの"ほど販売シーンが見いだせない商品はありません. 単品コントローラとしてありそうでないシリーズで浮かぶものとしてはRoland社のDビームもいい例ですよね. あのマニアックなVP-550にですら(失礼)ついているのに,単体機器としてはありません. KAOS PADにDビームがあればなぁと思ってしまう私にはDビームだけでもコントローラとして出してもらいたいくらい… いや,卒研でそれを逆手にMIDIコントローラを作った私にとっては距離センサーで似たようなものを作れますけどね… と,このように色々分析するとメーカーがその技術を出し惜しみせざる得ない理屈もわからないでもないということです. 前置き長くなりましたけど結局,自分で作ってしまったんですね. ただ,これを作った理由はもっと突発的でかつ具体的でした. 既にPICマイコンでMIDIパラメータを出力できていた卒研中盤頃,Tomが応募したYAMAHA社のD-DECKモニターキャンペーンに当選したんです. その時,レンタルされた機材はあくまでデュアルマニュアルキーボードとしての使用感レビューを目的としていたこともあり本体だけだったわけです. 当時,T'sLABの前進バンドをやっていたのですが,それまでMOTIF7やMOTIF XS7を使用していたTomはピッチベンドでの演奏ができないと困るソロやフレーズが多々ありました. モニター期間だけ(後にTomは自分のD-DECK買っちゃいましたけど)の機材入れ替えのために,私とフレーズ入れ替えるわけにもいかず,ペダルを作るかという話になったわけです. まだ,自宅StudioにELシリーズ(900mと87)が2台鎮座していた頃でしたから2ndExp.も手元にあったので迷わず実験材料にしてしまったのです. その時に作ったのが写真のペダルです. 見てくれは不恰好ですけど最低限は機能します. もちろん,各種シンセでも使用できますが現在設定がピッチベンド値をMIDIチャンネル16ch固定で出力する状態です(あくまでD-DECK単体で使用したときに使う目的で設計したので) 尚,マイコンはPIC16F628AやPIC16F88辺りのUSARTとA/D変換実装タイプで実現可能かと(何で作ったか忘れました…) ご存じない方のために補足しますがエレクトーンは鍵盤毎にch分けされています. MDR録音データをレコンポ(今時,知ってる人少ないかもしれないけどレコンポーザの事です.リスト打ちでMIDIを作成していた頃は軽くて重宝したソフトなんですよ)等で開けば一目瞭然なんですけど意外と知らない人多いみたいですね. パラメータシートにも書いてあるんですけど… (ちなみに,当時はTomが調査して私がプログラムに反映しただけです) 詳細省きますが,D-DECKではコントロール部分の情報が16chで管理されているので本ペダルは16ch出力になっているんです. 本当はDIP-SW実装して,ピッチベンド以外のコントロール信号やMIDIチャンネルの切り替えができるといいんですけど,モニター期間が決まっていたので取りあえず最低限動くことを前提として作ったため固定値しか出ないといった仕様になりました. マイコンでやっているのはA/D(アナログ/ディジタル変換)端子に入ってきた電気信号をUSARTシリアルとしてMIDIのボーレートで吐き出しているだけです. 在学は情報系学科でしたので回路に関しては一切の知識がなかったため回路はデタラメです(DCフィルタはキットで組んだ記憶があるけどICは端子処理もしていないと思う) パラメータの出方等使用感に関わる部分はプログラムで全て調整しています. ペダルの中に入っているのは特注パーツではなく,普通の10kΩ可変抵抗ですのでセンター値の遊び等はありません. A/D値をそのまま16,384分解能(ピッチベンドはMSBとLSBの2パラメータを使用して128*128値でコントロールしている)で割り振るとセンターから少し踏み込んだだけでピッチが変化してしまいペダルに足を置くと音痴になっちゃうんです. それを回避するためにセンターからメカニカルにスプリングが動く辺りまでのアナログ値をマスクしてあります. 仕様と使用感はTomに決めてもらって設計とプログラムを私がやり,加工と実装を親父にお願いした感じだったかと思います. おそらくトータル1週間かかってないんじゃないかな. すっかり忘れましたけど. 一応,当時の実験動画です. こちらは卒研の発表ネタとして汎用仕様に変えたものだと思います. S90ESでピッチベンドが利くようにプログラムを書き換えてありますのでMIDIチャンネルは1chに固定したものだと思います. つくづく,GPSとか出席登録システムとかを他の学生が真面目に発表している傍らで永遠とMIDIと楽器の構造を演説していた私って異端児だったんじゃと思わずにはいられませんね… 動画を見るとLEDがコントロールする度に点灯しているのでおそらくMIDIパラメータ出力に合わせてHi出力するようになっているのではないかと思います. よく覚えていませんけど,仕様決めの時にTomと現場で不具合起こした時に電源が入っているかよりも,MIDIが出ているかが判るべきってなったんじゃないかと思います. 今思うと雑な仕様ですな. ちなみに,私たちが参加したD-DECKのモニターキャンペーンの模様は色々な都合で結局一般公開されませんでした. 我々も,当時学園祭で演奏した後取材されたんですけど,ペダルはオフレコで注目の的になりましたよ(そりゃ,自社製品がベースになってるんだから当然か) 担当の営業さんが『日本の学生も,ものつくりの心を忘れていない』っておっしゃってました. とは言え,世界にはnanoloopなんていうとんでもないソフトを作成してしまった学生さんもいらっしゃいますからね. 一応,これを1つ作るのにかかる大まかなコストは以下の通りです(電線や工具が別途必要) ※15'現在,2ndExp.が個人入手できるかは定かではありません 2ndExp. 10,000円程度 アルミケース(タカチ製YM-180?) 1,500円前後 ユニバーサル基板 100円前後 PIC IC 200円前後 ------------------------------------ 計 12,000円程度 タカチ YM-180 尚,ペダル類はバスドラム同様に動いてしまう欠点があります. 本ペダルは本体が動かないように内部に重りを仕込んであります. 当時も検討しましたが,うまく固定できればジルコンサンド(比重の重い砂です.スピーカスタンド等を固定する際に用いられる事が多いためオーディオ関連ショップで手に入りやすいです.値段はそこそこしますが…)等がいいかと(重いと持ち運び不便ですけどね) いずれにしても,プログラム実装工数や組立工数を考えるとそれでも欲しいものになるかは微妙ですよね. 学生だったからできたとつくづく思います. と,言うことで筆者の懐かし工作物紹介でした. 学生時代はやる気になれば何でも自分でできるって信じていました. 当時は創作意欲抜群だったため,リズムボックス,ステップシーケンサ,オートビートシンク,ワンハンドシンセサイザーにMIDIテルミンと,正月も返上でさまざまな仕様のMIDI機器を構想・設計していました(卒研の提出物として具現化したのは後述の2機) あの,のび太ですらドラミちゃんが後任で世話係についたとき,秘密道具製造機を使って自分で道具を作っていましたから,誰だってやればできるんです. 皆さんも"こんなものあったらいいな"を思い描くままに創ってみては??? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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