空のオルガン

というものが、とある本に書かれていた。

「今日一日　親切にしようと想う。
　今日一日　明るく朗らかにしようと想う。
　今日一日　感謝をしようと想う。
　今日一日　謙虚にしようと想う。」

　ま、似たようなことは巷でよく言われている。心がやさぐれている時には、正直鬱陶しくもある。

　続きにこう記されていた。
　「実行してはいけません」

　え？

　「意識して実行すると失敗します。強く想うだけです」と続く。

　これがもし
「今日一日　親切にしなさい。
　今日一日　明るく朗らかにしなさい。
　今日一日　感謝をしなさい。
　今日一日　謙虚にしなさい。」

って書かれてたら、反発してただろうな、と、最初思ったのだけれど。

　人間、やめろと言われるとしたくなるのだ。
「実行してはいけません」という言葉は、そこを見越して書かれたのか？
ほら、「シロクマのことだけは考えるな」っていわれると考えてしまう、あの理屈で。
「え～、『意識して実行すると失敗します』ってかかれてるのに～？」と思った？だからやめた方がいいんじゃないの？って？

　「意識して」じゃなければいいでしょ。
　人に命令されると、逆らいたくなるのは私だけじゃないはず。
　勉強しようと思って、さあやろうという時に「勉強しなさいよ」と言われた途端、やる気が失せるのも同じ。理屈ではした方がいい、相手は自分のためを思って言っているとわかっているのにしたくなくなるのは、自分の無意識がその言葉に反応しているからではないだろうか。

　これを綴った人が、そこまで考えていたかどうかは知らない。
　が、「思うだけならできるじゃん」と思ってしまった事、そしておそらく、今までより実行する頻度が上がりそうな気がするあたり、まんまと乗せられてしまったような。

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