道に落ちていた男128
BL小説です。興味ない方、嫌悪感を抱かれる方はご遠慮下さい。鴻山の意識を確かめる為に首筋に触れ、脈を取る。少し早くは有るが、規則正しく鼓動を繰り返し、野瀬を安心させた。野瀬自身、これほどまで激しくする積りも、焦らして追い立てる積もりも無く、それ以上に薬を使って追い詰める積りなど無かった。愛しているから触れたい、壊してしまえば側に置けるだろうか、そのような子供染みた事を考えた自分自身を笑い天井に視線を向け、隣の鴻山の手を握る。こうして穏やかに恋人同士として過ごしたい、ただそれだけのはずが、こうして鴻山を傷つけ、結果、遠ざける事に成っていることを悔いる。身体を起こしてベッドをから降りると、バスルームに向かう、湯を溜め寝室に戻るとベッドに眠る鴻山を見下ろす。眉間に皺を寄せ、気持ち良い眠りとはいえない表情を浮かべている。野瀬の心がズキリと痛んだ。彼を抱き上げ、バスルームに戻り、バスタブに鴻山を抱きかかえたまま浸かると汚れを洗い流してやる。綺麗な肌には野瀬が遺した痕が無残に残り、手首と足首には拘束の痕が痛々しく付いている。手を取り頬ずりをする。申し訳ないという思いと目覚めない鴻山への謝罪が込められていのかも知れない。パタリと目から一筋の涙が落ちるのを悟り、慌てて顔を洗い、涙を打ち消し、鴻山を強く抱き締め、暫くその体勢で鴻山の体温を感じてみる。切なく苦しい時間、鴻山を抱き上げベッドルームに戻る。振り返るとこの部屋で彼を抱いたのは初めてなのに気付く、自分のシャツを着せてやりながら、素直に好きだと告白出来ていたらどれほど楽で有ったかを改めて思い、鴻山が愛している人物に深い嫉妬心を抱いている事を自覚した。「宗次、私はどうすれば良い?」まだ眠っている鴻山に問いかけ、胸に顔を埋めた。BL小説ブログランキング