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LOYAL STRAIT FLASH ♪

LOYAL STRAIT FLASH ♪

三十九章一

5 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 21:49:15.61 ID:akxeuIk/0
   
三十九章 大切なモノ


( ^Д^)「おぉぉおぉおぉぉぁああぁあぁあぁっ!!」

(;^ω^)「ッ!!」

袈裟掛けに叩き付けられる左腕の鎌を、右足で受ける。
草色の鎌は、白銀の脚の表面を火花を散らしながら滑り、そして見当違いな空間へと抜けた。

しかしすぐさま、翻る。

(;^ω^)(速い―――!)

首に迫る刃は、驚くほどに速い。
以前の彼の刃とはまるで別物だ。

( ^ω^)「……でもッ!」

床を蹴りつけて、その反動で脚を跳ね上げる。
白銀の線は首と刃の間に滑り込み、甲高い金属音を上げて鎌を弾き返した。

( ^Д^)「チッ……!」

再度鎌を翻そうとして、しかし彼は大きく後退する。
直後。彼が立っていた床に、複数の何かが高音と共に突き立った。

白銀に輝く鋭いそれは、羽根だ。


7 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 21:52:27.71 ID:akxeuIk/0
  
後退した先、プギャーは上空を睨み上げる。
視線の先にあるのは、白銀色に輝く翼を打ち広げたツン。

その姿は、思わず眼を奪われそうなくらいに美しかった。
白く透き通るような肌、人形のように端麗に整った顔。
その背に白銀に輝く翼を携えた彼女は、まるで天使のようだった。

ただしその天使は容赦のない、天使と呼ぶにはいささか酷なものであったが。

ξ゚△゚)ξ「はぁっ!!」

一つ叫ぶと、彼女はその場で翼を大きく二度羽ばたかせた。
連続する、軽やかで透明な音。
翼からは無数の白銀の光が放たれ、光は凄まじい速度で広域に降り注ぐ。

( ^Д^)「んなもん喰らうか!」

迫り来る白銀の雨を、左腕で打ち払う。
そしてそのまま左腕で自身を護りながら、ブーンへと駆けだした。

ξ;゚△゚)ξ「くっ……」

それを見て、ツンは翼を羽ばたかせるのを辞める。
ブーンにプギャーが接近している状態で羽根を放てば、ブーンも負傷しかねないからだ。


8 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 21:55:29.71 ID:akxeuIk/0
   
( ^Д^)「っらぁあ!!」

( ^ω^)「おぉおっ!!」

斬りかかって来るプギャーに、今度はブーンも攻めの動きを見せた。
鎌の横薙ぎの一閃を、同じく横薙ぎの形で蹴り弾く。
そしてその勢いを殺す事なく旋回して、更に跳躍を交えた回し蹴りを放った。

(;^Д^)「―――チィッ!!」

引き戻した左腕で防御する。
しかし高威力の横への動きは、またしてもプギャーの腕を弾き飛ばした。

今度こそ隙が露わになったプギャーに、ブーンは拳を発射する。
白銀のガントレットが装着された拳は、一直線にプギャーの頭蓋へと飛び行って―――

しかし、そこで響いた音は鈍い破砕音ではない。金属音だ。
続いて、聞き慣れた異音が響く。


“解放”の意を示す、不愉快なあの異音が。


拳を伸ばした姿勢で、ブーンは硬直した。
眉根は詰められ、瞳は見開かれている。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/01(火) 21:55:45.66 ID:x0IbzlGa0
支援す


10 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 21:57:54.24 ID:akxeuIk/0
   
(;゚ω゚)「おっ……!?」

彼の拳を防御したのは、左腕ではない。
彼の驚愕の視線が捉えているのは、左腕ではない。

それらの答えは、右腕だ。

( ^Д^)「驚いたか。だろうな」

彼の右腕―――“力”がない筈のその右腕は今、異形だった。
異形へと、解放を始めていた。

右腕全体が硬質の皮膚に覆われ、酷くくすんだワインレッドへと変色する。
そして肘から先、拳にかけて無数の突起が生え揃った。
突起の鋭さ、太さはまちまちで、針のようなものや鋭い錐体が乱立している。

肘からは一際大きい突起が生え出た。それは変形して飛び出た強化骨格だ。
手は一回り大きくなり、そして爪は鋭く太くなる。

(;゚ω゚)「プギャー……お前、これは……!?」

( ^Д^)「見ての通り、異能者の腕だが?」

(;゚ω゚)「んな事を訊いてんじゃないお! 何だお、この腕は!!
     お前は、お前の“力”は、左腕にしかない筈だお!!」

( ^Д^)「まぁ落ち付けよ。……俺の内側には、化け物が眠っていたんだよ。
      過去の俺だったら起こす事も出来ないような、とんでもない“力”を持った化け物がな。
      ―――いや、化け物じゃあないな。奴は、“蟲”だ」


12 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:00:45.45 ID:akxeuIk/0
   
(;゚ω゚)「化け物? “蟲”? 何を言ってるんだお。意味が分からんお。
     お前は両腕に“力”を持つ異能者だったのかお? ハインのような?」

( ^Д^)「いや、違う」

(;゚ω゚)「じゃあこの右腕は何だお!?」

( ^Д^)「さぁな。それは―――お前が俺を圧倒出来れば、教えてやるよ」

異形と化した右腕を振るい、ブーンの拳を弾き飛ばす。
その勢いに乗って一歩を踏み出し。左腕の鎌を袈裟掛けに振り下ろした。

(;゚ω゚)「くっ……!」

脚を跳ね上げる。
草色の鎌と白銀の脚は正面から激突し、眩い火花を散らして互いを弾き飛ばした。

間髪置かず、ブーンの頭蓋目掛けて振るわれたのは、右腕だ。
ブーンは顔を傾がせて回避しようとするが、しかし右腕の突起が彼の頬を削り取っていく。

そして彼は、頬に走った厭な痛みに顔を顰めた。

(;゚ω゚)「なっ!?」

後退し、頬に手を当てる。傷は浅い。
だが血に濡れた頬は熱を持ち、じくじくとした痛みを訴えていた。
加えて、引き攣るような感覚がある。


13 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:03:55.04 ID:akxeuIk/0
  
(;゚ω゚)「これは……」

( ^Д^)「毒だよ」

プギャーは見せつけるように、右腕を掲げた。
くすんだワインレッドが、鈍く、毒々しく輝く。

( ^Д^)「毒虫の、毒毛の性質をこいつは持ってる。
     安心しろよ。異能者にとってはあまり強くない毒だ。
     つっても、喰らい続けるとかなりアレな毒だがな。……さぁ、行くぞ!!」

嗤いを後方に残して、プギャーは疾駆。
対するブーンは頬の血を拭い捨て、プギャーの接近に構えた。

( ^Д^)「おおおぉおおぉおおぉっ!!」

(;゚ω゚)「くっ!!」

上方から叩き付けられる右腕を蹴り弾き、下から跳ね上がる鎌を上半身を反らして回避する。
そこで弾いた右腕が横薙ぎの形で振るわれ―――

(;゚ω゚)「ぉ……ぉぉおぉおぉっ!!」

間一髪、跳ね上げた膝で防御。
右腕の毒の突起は、肌まであと数センチという所まで迫っていた。

舌打ちが目の前で聞こえ、直後、視界の隅で草色の輝きが翻る。
ブーンは鋭い呼気を漏らして、すぐさま床を蹴った。
草色の流線はブーンの視界に太い緑の軌跡を残し、しかし何も捉えずに抜ける。


16 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:07:12.47 ID:akxeuIk/0
  
大きく後退したブーンは、地面に脚が付くと同時に、跳躍するようにして接近。
受け身になってはいけない。先制を取って、こちらの流れにしなければ、と。

己で稼いだ距離を一瞬で詰め、そして右足で大威力の回し蹴りを放つ。
プギャーはそれを左腕で防御。
だがブーンはその左腕を蹴りつけるようにして旋回。そして加速。

後ろ回し蹴りだ。
文字通り、眼にも止まらぬ速度で空を横に切り裂いた白銀は―――

しかし、くすんだワインレッド色の右腕に止められた。

表情が悔しさに歪み、それを見たプギャーの表情が嘲笑へと変わる。
瞬間、身体が一気に熱を帯びた。食い縛った歯が、軋む音を奏でる。

(#゚ω゚)「ハァァァアァッ!!」

脚を右腕に受けられながら、裏拳の形で拳を飛ばした。
対するプギャーは、迫る白銀のガントレットを身体を傾がせて回避。
その隙にブーンは受けられていた脚をそのまま跳ね上げ、打ち下ろす。踵落としだ。

しかし白銀は、すっと突き出された鎌によって何でもないかのように受けられる。

( ^Д^)「っらぁ!!」

そして、跳ね上げられた。
ブーンの身体は脚から体勢を崩し―――


18 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:10:30.98 ID:akxeuIk/0
   
(;゚ω゚)「―――ハァッ!!」

そのまま空を蹴って、空中で後方へ一回転。
そして着地と同時。身体を護るように、両腕を前方、縦に構えた。

そこに叩きつけられる毒の右腕。
厭な音が響き、そして火花が躍った。
白銀のガントレットを伝わって身体に衝撃が走り、その衝撃によって二歩を後退する。

腕の向こう側、プギャーは少しだけ驚愕の表情を見せていた。
ガントレットを破壊出来なかった、という事に対してだろう。
普通の武器であれば、大抵の物は異能者の攻撃に一撃たりとも耐えられない。

しかしモナーの作成したこのガントレットは、攻撃に耐えてみせた。
白銀は未だ形を保ち、崩壊する様子を見せない。
これにはブーンも、小さくない驚愕を覚えた。

が、しかし。ガントレットの前腕部、攻撃を受けた位置は、僅かながら拉げている。
頑強に作られたとはいえ、元々、攻撃の為に作られた武器だ。防御には向かないらしい。
このまま防御に使っていれば、長くは持たないだろう。

とは言え現状、プギャーの攻撃は止められた。
ブーンは踏み出しの一歩を以て跳躍。遠心力を伴った左の回し蹴りを叩き込む。

( ^Д^)「はっ!」

迫る白銀を、プギャーは毒の右腕で弾いた。
ブーンは弾かれたその勢いをそのままに、回転。
後ろ回し蹴りの要領で、左足で空間を薙いで行く。


20 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:13:36.97 ID:akxeuIk/0
   
( ^Д^)「さっきと同じかよ! 芸がねぇな!!」

プギャーはそれを受けようと、鎌の左腕を跳ね上げて―――

空を切る。

腕は脚を捉えなかった。

( ^Д^)「……何?」

(#゚ω゚)「おぉおおぉおおぉおぉおぉぉぉおぉっ!!」

ブーンは半ば跳ね上げた脚を、無理矢理に墜としていた。
左脚は唐突に軌道を変え、下方へ。その表面を削りながら、しっかりと床を捉える。
よってプギャーの振るった左腕はただ空を切り―――

ブーンは左脚を持ち上げ、身体を旋回させつつ右脚で跳躍。旋回を加速させる。
そして遠心力を身に付け、極限まで威力と速度を高めた、右での上段回し蹴りを放った。

だが。

引き戻され、脚と己の間に間一髪のところで捻じ込まれた右腕が、それを阻止した。
壮絶な金属音と、それに見合う火花が生まれ、二人の顔を一瞬照らす。

片一方の表情は戦慄と無念。
片一方の表情は戦慄を内に秘めた嘲笑。


22 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:16:01.24 ID:akxeuIk/0
  
(;゚ω゚)「くッ……!!」

( ^Д^)「……ハッ。良い線行ったが、甘いんだよ。
      いくらてめぇが速かろうと、両腕ありゃあ止められる」

(#゚ω゚)「……嘗めんなお!!」

右腕を蹴り弾き、そして左脚一本で跳躍。
右脚を引き戻しつつ、宙空で左脚を横薙ぎにした。

しかし袈裟の形で突き出された左腕が、その脚を弾く。
そして身は、足を弾いた際の反動を利用して旋回。
右腕の裏拳が、がら空きのブーンの頭蓋に発射された。

(;゚ω゚)「ッ!!」

咄嗟、上半身を後ろに飛ばす。
鼻先の空間を異形が砕いて抜け、眼の前に小さな血華が咲く。
同時に小さな鼻の先に刺すような痛みが走った。

やむなく、後退する。
プギャーは舌打ちしつつ、しかし邪悪で楽しそうな笑みを浮かべていた。

(;゚ω゚)「接近戦は不利、かお」

後退した先、ブーンは床を爪先で掴んで―――


24 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:18:26.23 ID:akxeuIk/0
   
( ゚ω゚)「……ならっ!!」

蹴った。
その一歩で超加速。距離が消える。
そしてその勢いに乗せて、ブーンは前蹴りを放った。

( ^Д^)「無駄だっつってんだろうが!!」

プギャーはそれを右腕で受けて、同時に左腕の鎌で斬り上げる。
しかし草色の刃は空間を切り裂いて上方へ抜けた。ブーンは捉えていない。

( ^Д^)「お?」

ブーンは遠くにいた。
前蹴りを放った直後、すぐに後退したのだろう。

( ゚ω゚)「おおぉぉおおおぉおぉぉぉぉおおぉおぉっ!!」

一瞬。その姿が、再度眼の前に移動する。
ほぼ反射的に振り上げた左腕が、そこで跳ね上がった脚を弾いた。

正に間一髪。少しでも遅れていれば、間に合わなかった。

(;^Д^)「―――チッ!!」

右腕を振るう。が、やはり抜ける。
ブーンはまたもすぐに後退し、プギャーの攻撃を逃れていた。


26 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:21:32.94 ID:akxeuIk/0
   
( ^Д^)「ヒットアンドアウェイ、って奴か……!」

言い終わると同時、ブーンの足元の床が爆ぜる。
そしてブーンの姿が一瞬で眼の前に動き、そして足が横薙ぎにされた。

( ^Д^)「しっ!!」

右腕で受け流す。
同時にブーンは後方へと動き―――プギャーは、それを追った。

後退するブーンを捉えようと、左腕を振り上げ―――

ξ゚△゚)ξ「させないわよ!!」

上空からの声。
同時、肩から背中にかけて衝撃。鋭く激しい痛みが走る。
衝撃によって体勢が崩れ、ブーンへの追撃も無駄となった。

(;^Д^)「づぁ―――」

前に倒れかけた身体を、大きく一歩を踏んで確立。
そこで背中に手をやって―――そこに何かが生えている事を確認した。

ξ゚△゚)ξ「私の存在、忘れてたみたいね?」

(;^Д^)「ぐっ……あぁっ!!」

引き抜く。
手の中のそれは、白銀に輝く硬い羽根であった。


27 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:24:27.62 ID:akxeuIk/0
   
舌打ちを漏らして、背中の羽根を抜き捨てる。
しかし全てを抜き終えぬ内に、またもブーンの攻撃が飛来した。

( ゚ω゚)「おぉおっ!!」

(;^Д^)「ちっ!!」

跳ね上がる脚を右腕で受け、左腕で眼の前を薙ぐ。
が、捉えられない。やはり後退のステップで、避けられる。
ブーンの速さは、プギャーの反撃を封じていた。

彼は追撃の為に踏み込もうとして―――

ξ゚△゚)ξ「はぁあっ!!」

そこで上空から降り注ぐ羽根の雨。
踏み出していた足を引き戻し、そのまま後退して―――

( ^Д^)「ブーンのヒットアンドアウェイ、追おうとすれば羽根の嵐。
     攻撃が途切れない。攻め手がない、か……・」

呟き。
しかし、その口端が釣り上がった。

( ^Д^)「なら、そろそろだな」

そして突如地を蹴り、前進した。
右腕で羽根から身体を護り、疾駆する。


30 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:27:28.81 ID:akxeuIk/0
   
ブーンは迫る彼の笑みに、背筋に悪寒が走るのを感じた。
同時、焦燥に似た感情が全身に満ちる。
何か、良くない事を考えている。今の内にどうにかせねば。

だからブーンは、駆けた。
プギャーは今、右腕を羽根への防御に使っている―――潰すなら今だ。

( ゚ω゚)「おぉおっ!!」

右脚を跳ね上げる。
対してプギャーは、それを左腕で防御。弾かれ、隙が露わになった。

腕を引き戻す暇は与えない。
ここで勝負を付ける!!

何か、音が聞こえた気がしたが、ケリを付ける事だけに集中した。

蹴りの流れをそのままに、跳躍して旋回。
最大威力の回し蹴りを放つ。

それは容赦もなくプギャーへと襲いかかって―――


抜けた。


33 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:31:17.22 ID:akxeuIk/0
  
(;゚ω゚)「!?」

自身の回し蹴りで体勢を崩し、ブーンは床に肩から落ちた。
すぐさま起き上がって―――眼を見開く。

( ^Д^)「どうした、不思議そうな顔してんな」

嗤うプギャーは、遠くにいた。
常人の脚ならば、一瞬でそこまでは行けないであろうほど、遠くに。

佇んでいる。いつもと同じ、笑った瞳で。
しかし、そこに何か、違和感がある。

その理由は、すぐに分かった。

(;゚ω゚)「あ……」

( ^Д^)「気付いたか」

違和感があったのは、プギャーの脚。
穿いているズボンの下、ふくらはぎより先。
靴が裂け、枯葉色の異形の脚が姿を現していた。

( ^Д^)「俺は両腕の異能者じゃない、っつったな?
     つまりは、こういうことさ」

言って、眼を笑みの形にした。
嘲笑の笑みだった。


34 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:34:11.77 ID:akxeuIk/0
   
( ^Д^)「昔から―――異能者になって異能者を知ってから、おかしいとは思っていたんだよ。
     俺の“力”は左腕だけにしか宿っていないってのに、何で他の“力”がないのかって。
     そしたら、こういう事だった。“力”は、眠っていた。そして今、目覚めた」

( ^Д^)「つっても、見ての通り両腕の異能者だったってわけじゃあない。
     フサ、居るだろ? 奴と同じだよ、俺の“力”は。
     肉体の各部位を、蟲の特性を備えた得物に変える」

(;゚ω゚)「……と、言う事は」

( ^Д^)「あぁ。両腕の異能者だなんて、甘いもんじゃない。
     ―――全身だ。お前達は、俺には勝てねぇよ。
     モララーさんの元へは行けない。行かせない」

言い終えるのと、同時だ。
彼の身体から再度、異音が放たれた。

(;゚ω゚)「ッ――――――!」

厭な気配を感じて、床を蹴って後退する。
そして彼は、息を呑んだ。

視線の先。プギャーの足下から、異音が鳴り響いていた。
ズボンは腿半ばから千切れ、だらしなくぶら下がった布へと変わった。

砕けるような異音が一つ鳴るたびに、彼の脚の異形が広がっていく。
まず脚の筋肉の全てが異常に発達し、表皮が金属質のそれへと変化。
そして全体が枯葉色に染まり、膝周辺が黒の色へ染まる。


35 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:37:34.98 ID:akxeuIk/0
 
続いて足首から先が巨大化し、踵の先にスパイクが発生した。
足の指は三本へと変わり、鋭い鉤爪へと変化する。

(;゚ω゚)「脚が……!?」

( ^Д^)「そうだ。“蟲”の……これは、バッタの脚だろうな。
     これで、ブーン。お前の速さは、俺に通用しない」

呟くその姿がブレて色を失う。
反射的にブーンは後退のステップを踏んで―――直後、目の前の床がプギャーの脚によって粉砕された。

(;゚ω゚)「くっ!!」

流れのままに後退する。
が、しかし

( ^Д^)「逃がさねぇよ、バァァアァカ!!」

(;゚ω゚)「!?」

ブーンの速さに、プギャーは迫ってきた。
砕いた床から、跳ねるように―――そう、バッタのような動きで。

対するブーンは横方向へと直角に向きを変える。
プギャーの身体はブーンの身体があった空間を突き抜け―――しかしすぐに停止、方向転換した。


37 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:40:24.72 ID:akxeuIk/0
  
( ^Д^)「ひゃぁぁぁあっはぁぁあぁぁあぁ!!」

膝を深く曲げる事によって力を溜め、解放する。
生まれる爆発的なその勢いは小回りは利かねど、直線的な速さにおいてはブーンのそれを凌駕していた。

(;゚ω゚)「ッ!?」

横に並んだプギャーに眼を剥き、一瞬の逡巡の後、更に床を蹴って加速。
距離を開けたブーンに、プギャーは楽しそうに眼を弓にして―――彼も床を蹴る。
二つの力が床を爆砕して加速し、二人の影は信じられないほどの速度で空間を駆けた。

片方は逃げ、片方は追い。
逃げる者が小さな動きを以て逃げようとすれば、追う者はそれを無意味とする大跳躍で追う。

( ^Д^)「っるぁああぁっ!!」

(;゚ω゚)「くっ!」

やがてプギャーの跳躍が、ブーンを捉えた。

加速する空間の中。
跳躍から、勢いを乗せた前蹴り。
ブーンは振り向きざま、それを右足で蹴り落とし―――しかし直後、上方から毒の右腕が迫る。

右足は地に着いたばかりだ。間に合わない。
やむを得ず、左足で受けた。

強い衝撃が不安定になった身体を襲い、加速した勢いの中、身体が後方へと傾く。


39 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:43:07.17 ID:akxeuIk/0
  
(;゚ω゚)「がっ!!」

床に強く背中を打ち付け、息が詰まる。
プギャーの身体はそのまま自分の上を抜け―――
自分の隣で強制停止。振り向きざま、旋回の動きを含んだ踵落としを繰り出した。

(;゚ω゚)「――――――!!」

詰まる酸素を無理矢理に体内に送り込み、全力で横へと転がる。
脚はその身体を掠って床へと落ち、破片をぶちまけた。

ブーンは転がる動作の中、床に脚を突き立てて停止。
更にそのまま、脚に力を込めて跳躍する。

( ^Д^)「馬鹿が!! 小回りの利かない上空に逃げてどうする!!」

嘲笑。間を置かずして膝を深く曲げ、跳躍。
床を爆砕し、影は超速度で空を抜け――――

( ^Д^)「墜ちて、死ね!!」

上空、ブーンに追い付くや否や、左腕を振り上げた。
が、しかし。

(#゚ω゚)「お前が墜ちろお」

言葉、そして一瞬。
プギャーの身体の右側面に、相当な速度を伴った白銀の何かが激突した。
凄まじい衝撃にプギャーの全身が軋み、一時の停止の後―――


42 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:46:30.18 ID:akxeuIk/0
  
(;^Д^)「が―――あぁあぁああぁっ!!」

墜ちる。
崩れた体勢の中、しかし辛うじて脚で着地。

(;^Д^)「何だ……!?」

上空を見上げる。
そこには自身を撃墜した、白銀に輝く巨大な銃弾のような形状をしたもの。

それは軽やかな、しかし金属質の連続した音を奏でて展開した。
その姿は翼。ツンだ。
彼女は、自身を翼で包み込んで突進したのだ。

ξ゚△゚)ξ「ブーンに集中し過ぎね。もしかして、私の事見縊ってないかしら?
      私だって戦えるのよ!」

(#^Д^)「このクソアマ……!!」

憎々しげに漏らしながら、しかしプギャーは横方向に飛び込むように跳ぶ。
直後、目の前。上空より降りてきたブーンが床を粉砕した。

(#゚ω゚)「くそっ―――」

(#^Д^)「てめぇ!!」

一歩を踏み、右腕を突き出す。
ブーンはそれを足で防御。間を置かず、残った脚だけで後方へ跳躍。
プギャーはすぐさま左腕を振るったが、草色の鎌はブーンの身体に浅い紅の線を残したのみ。


45 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:49:37.82 ID:akxeuIk/0
   
(#^Д^)「チッ!!」

追おうと、足に力を込める。

が、しかし。
溜めた力を解放しようとした瞬間、目の前の空間に白銀の雨が降り注いだ。
放たれた鋭く疾い羽根は、硬き床を容赦なく穿ち、途切れない。

そして眩い弾幕は、その軌道と役割を変更した。
目の前の空間から、本人へ。足止めから攻撃へ。

(#^Д^)「この野郎……!!」

溜めていた力を解放し、横方向へ跳躍。
迫る白銀の弾幕を回避する。

そして着地すると同時、その脚を以てして上空へと跳躍。
目標はツンだ。

ξ;゚△゚)ξ「くっ!」

迫り来るプギャー。
羽根を放ち続けていた為、翼を使っての回避は出来ない。
だから、羽根を放ち続けた。迫り来る脅威に向けて。

だが、プギャーもそれで墜とされるほど甘くはなかった。
毒の右腕と、鎌の左腕。両腕を使って、己が身を護る。
腕が護れなかった個所には白銀が突き立つが、それは大きな意味を為さない。


49 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:52:34.18 ID:akxeuIk/0
  
間もなくプギャーの身体はツンの元へと辿り着く。
そこで彼は、防御に向けていた両腕を攻撃に転化―――

(#゚ω゚)「おおぉおぉおおぉぉぉぉおぉっ!!」

させようとして、阻止された。
開こうとした両腕の、真正面からとんでもない衝撃が襲い来る。
両腕の向こうに見えた影は、ブーンだ。

(#^Д^)「てめぇも跳んで来やがったか……!!」

衝撃によって吹き飛び、身体が落下の動きを開始した。
落下する中、空を蹴りつけて身体のバランスを調整。
そして中空で、脚を軽く曲げた。

落下する。
十分に曲げられた脚は衝撃を逃がし、そして同時に力を充填。
数メートル先、ブーンの着地に合わせて、解放された。

距離は一瞬にして零へ。

(#^Д^)「っらぁあああああぁっ!!」

(;゚ω゚)「ぐッ!!」

勢いを乗せて叩きつけられる右腕を、後退しつつ左脚で受ける。
残った右脚で後退しようとして―――


50 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:55:36.68 ID:akxeuIk/0
  
(#^Д^)「何度も逃がすかよ!!」

素早く踏み込み、そして左腕を振るった。
ブーンはどうにか、それを跳ね上げた右脚の膝で防御。
だが。

(;゚ω゚)「!?」

右脚。受けた左腕は、鎌の柄だ。
鎌の刃は―――首の後ろにある。
逃げられない。それどころか―――

(#^Д^)「死に晒せ!!」

鎌が引かれる。
スライドによって脚との接触点が厭な金属音を奏で、火花を散らした。

一瞬の判断。ブーンは、左斜め前方へと跳ぶ。
それでも首の右後ろが僅かに切り裂かれ、血飛沫が爆ぜた。

姿勢を極限まで低く、かつ前傾にして、プギャーの横を駆け抜ける。
すぐ頭上を右腕が抜け、髪が数本千切れて舞った。

(#^Д^)「ちょこまかと……!!」

追おうと振り返れば、目の前の空間を空からの白銀が穿つ。
プギャーは舌打ちして、一歩を後退。
それと同時、白銀の雨がぴたりと止んだ。


51 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 22:58:01.69 ID:akxeuIk/0
  
何事かと頭上を見上げ―――

(;^Д^)「あ?」

眉根を寄せる。

上空、ツンは強く羽ばたいていた。下方、プギャーへと。
一度の羽ばたきで、彼女の身体は一気に加速。
連続の羽ばたきで、加速の度合いは一瞬にして跳ね上がる。

ある程度降りたところで、彼女の身体は軌道を変えた。降下から直進へ。
それは、狙いも変更されたという事になる。つまりは、移動から突撃へ。

そして彼女は、十分に膨れ上がった速度に、仕上げに一つの羽ばたきを加えた。
加速―――そしてその翼が折り畳まれ、更に回転運動が生まれる。
その姿は、さながら銃弾だ。全てを弾き返す外殻に包まれた銃弾。

先ほど上空でプギャーを撃墜した、白銀の銃弾だ。

(;^Д^)「なっ……!!」

戦慄する。
が、しかしその戦慄に硬直している暇はない。
行動をしなければならない。

受けようか、と考えてすぐに否定。
あれだけ加速した物体を受ければ、直撃でなくともダメージは大きいだろう。
腕や脚が無事だったとしても、他の部位が安全である可能性は無きに等しい。


53 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 23:01:17.76 ID:akxeuIk/0
 
ならば、答えは一つ。
避けるしかない。

完璧に避けることはもはや不可能だ。
だから、両腕を使って受け流しつつ、この脚で回避行動を取る。
それが一番の安全策だ。

その思考にプギャーが辿り着くのと、ほぼ同時。
ツンを内に包んだ白銀の巨大銃弾が、プギャーに突進した。

(#^Д^)「っずぁああぁぁぁあああぁあぁぁぁあぁっ!!」

脚で斜め後方へと移動しながら、両腕で銃弾に触れる。
耳が痛くなるほどの金属音。大量に弾け飛ぶ眩い火花。
それに表情を顰めて、間もなく。全身にとんでもない衝撃と圧力がかかった。

(;^Д^)「がっ……!!」

身体が軋み、戦慄が身体に寒気を生む。
これは、早くどうにかせねばならない。予想以上に強力で、危険だ。
思考し、全力で巨大銃弾を後方へと流しにかかった。

回転を伴った巨大銃弾は凄まじい音と火花を上げ、尋常でない負担をプギャーにかけて―――
しかし、抜ける。プギャーは辛うじて、巨大銃弾から逃れられたようだ。

抜けた先、銃弾は床や壁に触れる前に、展開して翼となる。
そして飛翔。ツンは舌打ちを漏らして、しかし眼の端に笑みを乗せて言った。


55 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 23:04:26.88 ID:akxeuIk/0
  
ξ゚△゚)ξ「何だか自信満々に勝利宣言してた割に、苦戦してるじゃない。
      流石に二人を相手にするのは苦しいのかしら?」

(#^Д^)「……苦戦している? ん、あぁ、そうだな。
     確かに俺は今、苦戦しているんだろうな――― 一応は」

意味深に呟いて、そして口端を吊り上げ歯を見せた。

彼の言葉に、ツンは眉根を寄せた。
何だ、この余裕は。何か隠しているのか、と。

観察する。
プギャーの表情は怒りを含んだそれ―――だが。
その怒りの表情は、どうやら本気で憤慨しているわけではなさそうなそれだ。

よくよく見てみれば、彼の表情は怒りというよりは笑みだ。
眼が笑っている上に、口元にも微かに笑みの欠片が見えている。
つまりプギャーは、興奮した上で楽しんでいるという事か。

何を隠している。
この状況にあっても崩れない、その余裕の根源は何だ。

ξ゚△゚)ξ「……一応、ですって? 強がっているのかしら?」

(#^Д^)「はン。それは、後々分かるだろうよ。
     知りたければ、もっと俺を圧倒してみな!」

叫んで、そしてプギャーは床を蹴った。
対するツンは、彼が到達する前に上空に回避。


56 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 23:06:25.91 ID:akxeuIk/0
  
彼女の眼下、プギャーは床に脚を突き立てて停止。
即座上空に跳躍しようと脚を撓ませて―――

(#^Д^)「来たな!!」

叫びと同時、跳躍の為の姿勢をキャンセル。
そして後方へと後ろ回し蹴りを飛ばした。

枯葉色の脚は空間を抜ける事無く、そこで超高速で接近していた物体を捉える。
脚だ。白銀に輝く、どこまでも力強い脚。
その持ち主は、枯葉色と白銀の向こうで悔しげに唇を噛み締めていた。

(#゚ω゚)「お……おぉぉっ!!」

しかし今度は、彼は後退の選択を採らなかった。
枯葉色の脚を自ら蹴り弾き、攻撃の姿勢を見せる。
既に追撃の姿勢を取ろうとしていたプギャーは、軽い驚きに眼を見開き―――しかし笑みを深くした。

( ^Д^)「良いねぇ、その心構え!!」

跳ね上がる白銀の線を、毒の右腕で殴り落とす。
直後、逆の脚が膝蹴りの形で伸び、プギャーはそれを鎌の左腕で受けた。

( ^Д^)「両脚は受けられたぞ、さぁどうする!」

(#゚ω゚)「まだだお!」

( ^Д^)「あ?」


57 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 23:07:17.99 ID:akxeuIk/0
  
左腕で受けた膝。
それが、押しの力を伴って上方に伸びる。
膝だけを受けていた左腕は、伸びた先、鋭く撃ち込まれる爪先を受けられない。

(;^Д^)「なっ!!」

咄嗟、こちらも足を跳ね上げた。
壮絶な金属音が空気を震わせる。

一瞬の停滞、沈黙。

彼が跳ね上げた枯葉色の脚は、白銀と己の間に辛うじて入り込んでいた。
しかしそこに、数滴の血液が落ちる。プギャーの頬からの血だ。
ブーンの爪先は、プギャーの頬を僅かに捉えていたのだ。

あと少しだった。
ブーンは荒い息をついて、舌打ち。
対するプギャーは、舌を伸ばして頬の血を舐め取り―――そして笑いだした。

( ^Д^)「良いねぇ、楽しい。楽しいぞ、ブーン。
      お前達は強くなってきてくれた。俺のこの“力”に対する事が出来るほどに。
      ……今だけは、ハインさんの気持ちが分かるぜ。強者であるほど楽しいってな。だが―――」

枯葉色の脚が、白銀を弾き飛ばす。
それとほぼ同時。白銀のガントレットに包まれた左の拳が飛来、右腕で叩き落とした。

ブーンは咄嗟に後退のステップを踏む。
プギャーはその動作を知っていたかのように、ぴたりとそれに追随した。
その左腕の鎌が振り上げられ、口元が笑みに歪む。


59 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 23:10:22.89 ID:akxeuIk/0
  
( ^Д^)「それは己の強さを自覚出来る事の楽しさ、強者を力で叩きのめす楽しさだ!
     つまり、俺が勝つ! お前達は俺には勝てねぇよ!!」

(;゚ω゚)「ッ!!」

草色の輝きが、鋭く翻る。
横薙ぎにされた鎌の刃は、ブーンの脇腹に深く喰らい付いた。
紅い奔流が溢れ出し、ブーンの表情が苦痛に引き歪む。

プギャーはそのまま、ブーンの胴を両断しようと力を込めて―――

(;゚ω゚)「おぉおぉおおぉおおおぉぉぉおぉっ!!」

ブーンは膝を跳ね上げ、進む鎌を静止。
残る一本の脚で後方へと跳躍した。
鎌の刃は粘着質な液体音を上げ、脇腹より抜け落ちる。

大量の血液が床を染め、尚も流れ落ちる血がブーンの軌跡を紅く残した。
プギャーは舌打ちしつつも、追わない。その表情はやはり笑顔。
ブーンは荒い息を吐き、熱い傷口を手で押さえた。ガントレットが、紅に濡れる。

( ^Д^)「今のを逃れるとはな。ちょっと驚いたぞ。
     まぁ、つっても時間の問題なんだけどな。すぐ殺してやるよ」

(#゚ω゚)「……うるさいお。殺れるもんなら殺ってみろお」

手に付着した血液を振るい飛ばして、ブーンは脚に力を込めた。
その動作にプギャーは笑い声を漏らす。
そして彼も脚に力を込めて、体勢を低く落とし―――


61 : ◆tAdHw/rYVY :2008/07/01(火) 23:12:15.89 ID:akxeuIk/0
   
(#゚ω゚)「おぉおおおぉおおぉおおぉぉぉっ!!」

( ^Д^)「らぁあぁあぁあぁあああぁあぁあぁっ!!」

同時に床を蹴った。爆砕された床による粉塵が二つ、舞い上がる。
二人の距離は一瞬にして消失した。
跳ね上がった枯葉色の脚と白銀の脚が、正面から衝突する。

零になった距離が生み出したのは、轟音と弾け飛ぶ光。
そして音は、連続する。

(#゚ω゚)「おぉおおぉっ!!」

ブーンは脚を止めず、連続で、縦横無尽に空を走らせた。

跳ね上げ、振り落とし、回転させ、突き出す。
右脚を叩き落とされれば、左脚で。左脚を弾き飛ばされれば、その動きと勢いを利用して、新たな動きに。
一撃ごとに速さを増していく彼の脚は残像を残し、彼は無数の白銀の線を纏っているかのように見えた。

が、しかし。
それらの攻撃は、プギャーには届かない。

( ^Д^)「っるぅぁあああぁあぁあぁあああぁっ!!」

彼は両腕両脚を用いて、ブーンの攻撃の全てを防御していた。
速さでは完全にブーンが秀でていたが、しかし彼の両腕はその遅れを無とする。
脚で応じ、遅れれば右腕で。右腕が遅れれば左腕で。左腕が遅れれば、脚で受けた。






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