173205 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

雨がしずかに降る日には

対人関係療法~コミュニケーション~

--Communication 3つめのC「コミュニケーション」--


・対人関係療法

 私たちは親しい人たちとふれあうことで、悩みを解消したり、気持ちをらくにすることができます。しかし、その一方で、人間関係のトラブルは強いストレスになります。


1)喪失体験
 大切な人と別れたり、かけがえのない人が亡くなったり、だいじなものをなくしたりという体験が、うつ病のきっかけになることがあります。私たちはふつう、このような悲しい別れや喪失体験から、否認、絶望、脱愛着という段階を踏みながら立ち直っていくと考えられています。このようなプロセスを踏んで脱愛着にまでうまく進めばよいのですが、いつまでも現実が認められなかったり、新しい人間関係ができてこなかったり、どこかでつまずくと、うつ的な気持ちを強めていくことがあります。

 そういうときには、失った人との関係を、よいことも、マイナス面も、できるだけ素直に思い出してください。相手を極端に美化したり、自分をひどく責めたり、現実からかけ離れた気持ちが強まったりしていないでしょうか。もう一度過去を振り返って、自分の気持ちを、より現実的なものへとコントロールし直していくことがたいせつになります。

2)コミュニケーションギャップ
 夫婦、親子、会社の同僚どうしでわかりあっている、通じ合っていると思っていたのに、実はお互いの気持ちにズレがかなり広がっていて、いろいろなことがうまくいかなくなり、気持ちが落ち込んでいくということがあります。

 そのようなことに気付いたときには、言葉がなるべくきつくなりすぎないように注意しながら、お互いの気持ちを、なるべく率直に話し合ってみることです。問題点を洗い出しながら、どんな修正が可能か、元のような関係に戻すことができるのか、新しい関係をつくり直していったほうがいいのかを見きわめていくことが、ひとつのポイントになります。

3)役割の変化
 進学や就職、異動、転勤、転職、退職、結婚や出産、引越しなどのライフイベントに際しては、自分を取り巻く環境が変わり、自分の役割が大きく変化します。周囲から見れば多くはおめでたいできごとですが、本人にとっては、古い自分を捨てて、新しい自分をつくっていかなければならないときでもあります。それがうまくいかないと、うつの誘因になってしまうことがあります。

 そういうときには、環境と役割が変わり、いままでの「古い自分」とこれからの「新しい自分」が違っていることに目を向けて、両方のプラス面とマイナス面、失ったものと新しい可能性をそれぞれリストアップしてみることが、冷静さを取り戻す手助けになります。そして、新しい役割に必要な知識やスキル、そのためのサポートが得られそうな人間関係を考えて、ひとつずつ実践していけばいいのです。

4)人間関係技術の不足
 人間関係を考えるうえで、もうひとつ見過ごせないのは、人間関係がうまく持てない、そういうことが技術的に苦手だというケースです。自分に自信が持てずに、人と関わるのが苦手だという人は、相手について、何を考えているのか、こんなことをいったら気を悪くするのではないか、拒絶されてしまわないかと考えすぎてしまいます。そして、相手の気持が十分にわからないと、自分の気持ちを表に出せないと思い込み、自分の殻に閉じこもってしまいます。

 人の心はわかりずらいものですから、相手の気持を知ることにとらわれすぎることよりも意識的に、自分の気持を表現する技術を身につけて、話し方や伝え方をくふうしていくことが役に立ちます。
 上手に自己主張する技術はいろいろと考えられますが、ポイントは、なにか主張したいことがあるとき、まず相手の気持にはかまわずに、非常に強い話し方を考え、次に、自分の都合はひとまずおいて、非常に弱い話し方を考えてみることです。

 たとえばサラリーマンで、すでにいくつもの案件を抱えてとても忙しいときに、上司から新しい仕事を渡されたとします。「こんなに忙しいときに、上司から新しい仕事を渡されたとします。「こんなに忙しいときに、こんなことまでやれっていうんですか!」というのは非常に強い言い方でしょう。「はいはい。わかりました」と無抵抗に受け入れてしまうのが、あなたにとって非常に弱い話し方かもしれません。次に、その中間の、バランスのとれた言い方を考えてみます。

 そうすると、「いまはとても忙しいので、その件は来週になってから着手したいと思いますが」「ちょっと全部をこなしきれる自信がないので、こちらの案件のここの段取りを省略できないでしょうか」などと、相手の立場や気持も考えながらきちんと自分の主張を相手に伝えられる言い方があることが見えてくるはずです。

 このように、相手と自分の揺れ動く微妙な距離感をはかりながら、小さな喜びを感じたり不満な点をひとつひとつ調整したりしていくことによって、現実的な人間関係が築かれていきます。



  ⇒人間関係をらくにするポイント


© Rakuten Group, Inc.