文学新人賞の応募のさい、略歴を書くことになっています。
通信添削で略歴を頂いているのですが、みなさん略歴によけいなことを書きすぎる。モデルだとか俳優だとかあるいは皇族だとか、ウリになるものがあるなら書くべきですが、マイナスになることを書いちゃダメですよ。
病歴はウリになりません。膠原病だとか糖尿病だとか鬱病だとか書く人がいます。いつ発症してどこの病院に入院していつ退院してと書いてある。マイナスになるだけです。
年齢は正直に書きましょう。昔は年齢が高いとデビューできなかったのですが、今は高齢でデビューする作家さんが多く、しかも売れています。年齢が高いことはマイナスではありません。
最終選考通過は書くべきか。10年前からの通過をリストにして書いてあると、落選歴に見えてしまうので、書かないほうがいいでしょう。書くなら過去二年ぐらいの最終選考通過まで。
……とアドバイスすると、最終選考通過は「安定して小説を書けること」の証明になるはずだと返信が来たのですが、それは選考者の考え方を誤解しています。
選考者は「筆力のある人」を探そうとしているのではありません。小学生のときの藤井颯太4級を選ぼうとしています。
池上冬樹氏はツイッターでこのようにおっしゃっています。
@ikegami990 · 13 時間13 時間前
(引用はじめ)
▼ある新人賞の下読みで、出来はとてもいいが、線が細く、また物語的もこぢんまりとしていて、これ以上のものは書けないだろうと思わせる作品に出会った。新人賞をとっても次々に書けないなら賞を与えるべきではない。明らかに書けない人たちがいる。とても完成度が高くても。1作で終わる人たちが。
▼2)ある新人賞をとって、数作後に沈黙して、別の新人賞に応募してきた作家がいた(こういうのが増えている)。応募作を読んで発想はいいし悪くはないが、これで出涸らしだろうと思った。手堅くうまいが勢いがない。どこかの出版社から突き返された作品を応募したのだろう。だから厳しく採点した。
▼3)しかし結果的にそれが賞をとった。最終候補に残ることも意外だったが(この人はこれ以上書けませんよと強く指摘したのに)、編集部の見方は違っていたのかも。で、その人、受賞作のあと一冊も出していない。書けない人に賞を与えては駄目。過去に賞をとった人にはなおさら厳しくしないと。
(引用おわり)
新人賞は「勢い」で判断していると池上冬樹先生ははっきりおっしゃっています。むしろ「安定して小説を書ける」投稿者を「出がらし」だと嫌っていることがわかる。
アマ四段の35才より、アマ4級の小学生のほうが評価される、それが文学の新人賞なんですよ。
デビューしていないということは、強力なカードなんです。せっかくの強いカードを、自分から捨てるのはもったいないですよ。
略歴は、最終学歴と現在の職業ぐらいでいいですよ。よけいなことは書かないようにしましょうね。
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