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March 12, 2008
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カテゴリ:映画


潜水服は蝶の夢を見る

ちょっと映画づいてます。。

潜水服は蝶の夢を見る」 

仕事帰りに、シネカノン有楽町で観て来ました。

 

病院のベッドで目を開けたジャン=ドーは、自分が何週間も昏睡状態だった事を知る。

身体がまったく動かず、唯一動かすことができるのは左目だけだという事も。

ジャン=ドミニク・ボビーは雑誌「ELLE」の編集者で、三人の子どもの父親だった。

彼は言語療法士の導きにより、目のまばたきによって意思を伝える事を学ぶ。

やがて彼はそのまばたきで自伝を書き始めた。

その時、彼の記憶と想像力は、動かない体から蝶のように飛び立った

___________________________________

 

42歳の働き盛りで、突然脳梗塞に倒れ、ロックト・イン・シンドローム「閉じ込め症候群」

~身体的機能・感覚は、ほぼ全て麻痺した状態になるが、意識は鮮明に保たれている~

に陥った、フランス版「ELLE」の名物編集長、ジャン・ドミニク・ボビーの自伝を基にした映画。

 

ある日突然、自分の生活の全てが断ち切られ、体の自由を失う。

残されたものは、ただ左目のみ。。

そんな状況に、人の精神は耐えうるのだろうか?

意識が明晰であるという事がむしろ、拷問のような苦痛に感じられるのでは。

けれど、ジャン・ドーは瞬きによってコミュニケーションを取ることを学び、本を著した。

20万回の瞬き。。。 気の遠くなるような行為。

 

これが日本映画なら、きっとお涙頂戴的な苦労と感動のドラマになりがちだけれど、

この映画は、けっして暗く悲惨な表現は取らない。

 逆に、画家である監督の美意識か、画面はどこまでも美しく、

ジャン・ドーの独白もどこかウィットに富んだもので、観客は時々笑わせられさえする。

 

言語療法士や編集者(何故か皆様、大変美しい女性ばかり)に性的妄想を抱いたり、

過去に経験したであろう、美食や旅行へ馳せる想い。

 

深い海中に潜る潜水士や、崩れゆく氷河などが、ジャン・ドーの心象風景として

何度か象徴的に現れるのだけれど、絶望でありながら、何処までも美しい。。

歯がゆい状態ながらも、次第に彼は己を見い出してゆく。

 

瞬きによるコミュニケーションを得た彼の最初の言葉は「死にたい」だったけれど、

彼を訪れる人々・彼を支える人々との交流の後に、淡々と流れるモノローグ。

「僕は生きている。体も動かせず、話す事も出来ないけれど、僕は生きている」

この言葉に、ジンときてしまった。

潜水服は蝶の夢を見る

動けない体に閉じ込められた彼の果てしない孤独と、

人とコミュニケートする事、言葉の持つ力。 希望。

 

 

さすがアムールの国?フランスで、妻の介護を受けながら、電話越しに愛人と会話する、

などという場面もあったり、ここら辺が綺麗事だけでない現実感ある世界でありました。

(ま、私からみたら愛人・妻という関係性の方が、非日常ではあるのだが。。)

 

正直、画面に没頭しつつも、ここまで手厚い介護を受け、周りは美しい女性だらけで、

彼は非常に恵まれた環境にいる。。という思いをどうしても抱いてしまった。

全く動けない体で寝たきりになったら、一週間で床ずれが出来ちゃうでしょ。。

などどいう、リアルな事も頭から離れず・・・

 

自分の人生は何かを失い続けたものだった、という独白も、

一般人からみたら、別れているとは言え美しい妻と子供、ゴージャスな恋人、

地位も名誉もある仕事に、資産、何もかも手にした、登りつめた人生にしか見えない。

 

ま、だからこそ、閉じ込められた今の現状が余計に辛い物に思えるのでもあって。

 

 

とても印象的だったのは、老いた父の髭を剃ってあげる場面。

温かくて、お洒落で、とても好きな場面。

このお父さんがとっても良い雰囲気で、素敵な俳優さんだった。

電話で息子と話す場面では、胸が痛くなり。。。

 

そして、ベイルートで4年間人質になっていた友人。

彼の語りも印象深いものがあった。

 

閉じ込められた状態で、人が人としての尊厳を保つのに必要なのは、

記憶と想像力。

これは誰にも奪えない。

 

ジャン・ドーも、自由な想像の力で、蝶のように世界に羽ばたいて行く。

 

ジャン・ドーを演じたマチュー・アマルリックがもの凄く適役で、美食と華やかな仕事にお洒落、

恋に旅行と、人生を謳歌するフランスの伊達男姿も絵になっていたし、

脳梗塞後の左目のみの動きが、真っ直ぐに心に訴えてくる迫力があり、切ない。

力を失って歪んだ口元と、グルグル動き回る彼の左目から、目を離すことが出来なかった。

 

自由に動ける体を持つ私達は、では自由に飛翔する想像力を持っているのか?

どこかの国に爆弾を落とす事の向こうに、人の暮らしがあるという事への想像力を持っているのか?

(あ、この映画は、そんな政治的なプロパガンダは皆無。あくまで私の感想です。)

 

劣悪な収容所生活の中で、小さな花を美しいと思える感性を持った人が、

ナチスドイツ時代を生き延びた。。という話を思い出す。

 

そして、ドイツ語を学んでいた頃、一番好きだった言葉も。

Ich bin denke、also bin ich.

我思う、故に我あり。

 

観たばかりで、何となく心もまとまらない感じだけれど、観られて良かった映画。

 

彼は、フランス版の本が出版されて、数日で息を引き取ったそう。

 

陳腐な云い方ではあるけれど、彼の人生は本を著し、映画化される事で、

一種永遠なものを残したのだと思う。

 

本を読んでから観たかったな、と、今更ながら図書館に予約を入れちゃいました。

                    

 

 






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最終更新日  March 13, 2008 11:31:29 PM
コメント(4) | コメントを書く


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 Re:「潜水服は蝶の夢を見る」@シネカノン有楽町(03/12)   アルローラ さん
ハァ~~...
また すんごい映画をご覧になりましたねぇ。
なんで日本でこういった映画がもっとヒットしないんでしょうか。。。

見てみたいですねー。
深い映画ですねー。

中学の時「ジョニーは戦場へ行った」を見ましたが、ああいった感じの体なんですね。
頭脳だけが ハッキリしているって、1番辛い現状なのではないでしょうか。
...それでも生きていかなくてはいけない...想像を絶する辛さだと思います。
マイケル J フォックスも 今 そうなってますよね。
大好きな俳優なので よく思い出します。
..彼は今 幸せなんだろうか..。

今は目とセンサーとPCを使って表現するって機械も作られてるようですね TVで見た事あります。

そぅそぅ やっぱり介護の事とか現実的に考えちゃいますよねー。
キレイゴトだけでは済まされない現実がありますもんねぇ。
・・・お金があったら 不自由な体になっても、やっぱり無い人と比べたら幸せなんでしょうかねぇ。
紙オムツ1つ替えるのでも、平気でポイポイ取り替えられるのか もったいないから まだしておこうってなるのか・・・
機械だって 手術だって、お金が無かったら出来ませんしね。
お金が全てではないのだけれど、力を貸してくれる物ですよね。

不自由になっても、協力してくれる人が自分の周りにいるって事も、幸せなんじゃないでしょうかねぇ。
頭脳がそのままである以上、コミュニケーションが取れるって事は 素晴らしい事だと思います。
それが彼にとって1番の幸せなのではないでしょうか。
     (March 14, 2008 07:35:39 AM)

 アルローラさん   **dot** さん
>見てみたいですねー。
>深い映画ですねー。

この映画は、本当に後からジワジワ来ます。
単館系が多いんですよね。観たい映画。ちょっとうかうかしてると、見逃しちゃう。

ジョニー、私も冒頭で思い出しちゃった。でも、戦場じゃないし、悲惨で悲惨で、という感じじゃないですよ。(ジョニーは視覚的にも、ものすごいショックでしたよね!)

色々考えちゃいますよね。
マイケルJフォックスも、あまりにも大きな名声を掴んだ人が、そういう状況に陥るって、常人とは別の苦悩も生まれるでしょうね。

>・・・お金があったら 不自由な体になっても、やっぱり無い人と比べたら幸せなんでしょうかねぇ。

うんうん、お金じゃ幸せにはなれない、と思っているけれど、ある程度の幸せは買えるものかもしれません。特にこういう高度医療が必要な場合は。。。
アルちゃんみたいに思いましたよ。

>頭脳がそのままである以上、コミュニケーションが取れるって事は 素晴らしい事だと思います。
>それが彼にとって1番の幸せなのではないでしょうか。

やっぱり、人は一人では生きられないですね。
映画の中では、コミュニケーションのスタンスもべたついたものでなくて、とっても良かったんです。
DVDになったら、是非お勧めですよ。。
(March 14, 2008 01:29:19 PM)

 Re:「潜水服は蝶の夢を見る」@シネカノン有楽町(03/12)    tikari さん
うかうかしていて見逃しちゃいました・・・(笑)
この映画、書店で予告が流れていてものすごく気になっていたんです。
きれいな映像と音楽、そして内容に惹きこまれてしまいました。
映画は見逃してしまったので、後日DVDが出る時まで待つことにして
まずは本を読もうと、少し前に買ってきて読んでいるところです。
まだ読み始めたばかりなので、自分の考えもまとまらないのですが
彼は本が出版されて数日で息を引き取った・・・というところに、きっと彼が
彼の人生でやるべきことが終わったのだと感じました。

こういった単館系の映画は私も好きなのですが、あっという間に終わってしまうのが本当に残念。
DVDも便利だけれど、できれば映画館で観たかったです☆
(March 16, 2008 07:47:09 PM)

 tikariさん   **dot** さん
>うかうかしていて見逃しちゃいました・・・(笑)
>この映画、書店で予告が流れていてものすごく気になっていたんです。

あ、そうだったんですか? 本当に単館系のものって、気になりつつ、見逃すことが多いんですよね~(涙

>まずは本を読もうと、少し前に買ってきて読んでいるところです。

えへへ。私は図書館から借りて来ちゃった(笑
丁度今日読んでます。やっぱり、映像から受けるものと、活字から受けるものとは、微妙に違っていますね。噛み締めながら、読んでます。

>彼は本が出版されて数日で息を引き取った・・・というところに、きっと彼が
>彼の人生でやるべきことが終わったのだと感じました。

私も、そこのところに、何かすごく意味を感じてしまいました。逆に言うと、出版されるのを見るまでは、と云う彼の精神力があったのかもしれませんね。
人生って。。。色々考えさせられますよね。

>DVDも便利だけれど、できれば映画館で観たかったです☆

シネカノン有楽町は、3月末までやってますよ。遠いかな?私も好きな映画は、映画館で観たい派です♪
(March 17, 2008 01:51:29 PM)


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