「美女か、トラか?」
最近、メリルストリープ主演の「ソフィーの選択」という、映画を観ました。ナチスの収容所での辛い経験を持つポーランドの女性の話なのですが・・。その中で、彼女の愛する二人の小さい子供をナチスの党員に連れていかれる場面があります。その党員は彼女に、どちらか一緒に連れて行くほうの子供を選べと言います。もう一人の方は、すぐに処刑されるというわけです。彼女は泣いて、そんな選択は出来ないと言います。子を持つ親なら当たり前のことです。勿論彼女も同じ事を言います。すると、この党員は、それなら二人とも連れて行け、と他の党員に命令するんです。そして、彼女は選択しました!どちらを選択したかはまだ見られてない方のために申しません。私はこの場面を観て、涙が止まりませんでした。この映画を観て、私は昔読んだ、Frank R.Stocton の"The lady,or the Tiger?"を思い出しました。 皆さんはリドル・ストーリー(riddle story)という物語をご存知でしょうか?直訳すれば「謎の物語」。あえて、結末を示さないで、読者に結末を委ねる形式の話です。この「美女かトラか?」もこのリドル・ストーリーの代表的な作品です。あらすじは以下の通りです。「 昔々、ある国に野蛮人の血を引く王様がいました。この王様は普通の人とは違ってユニークな考えの持ち主で、重大な犯罪を犯したものの裁判として、ある事を考えました。それは、コロシアム(円形闘技場)の中に、2つの扉を作り、1つの扉の中に美女を置き、もう片方の扉の方には何日も餌をやっていない獰猛なトラを潜ませておくというものでした。そして、犯罪を犯したその本人に、その扉のうちどちらかを自ら選択させるというものだったのです。 美女の扉を選択すれば、その瞬間に罪を許されて、その美女を花嫁とする事が出来ます。トラの扉を選択すれば・・・・。説明の必要がありませんね。いて~っぐらいの話しではありません。 この王様なんですが、目に入れても痛くないほどに可愛がっている一人娘がいたんです。その娘が、こともあろう事か身分の低い若者と恋に落ちてしまったのです。今でしたら、駆け落ちすればいいんですが、この時代です。ある時、この王様に二人の密会がばれてしまったのです。さあ、大変。勿論この若者はこの裁判にかけられます。それを知った王女は半狂乱になりつつも、コネを使って、どちらの扉に何を置くか前もって見ることに成功します。ただそこで、この激しい性質の王様の血を引く王女は悩みます。トラの扉を指し示し、彼をこのままトラの餌食にする事なんて考えられません。だって彼が多くの人の前でムシャムシャ、トラに食べられる姿など想像するだけでも失神してしまいそうな事ですから。かといって、美女の扉を教えれば、先ほど見た自分よりもずっと美しい娘が、彼と一緒になる事を想像しただけでも、嫉妬で気が狂いそうに成ってしまいそうでした。彼女は迷いに迷って、ついに決断するんです。 裁判の当日、この若者は不安げな目で王女に、どちらの扉を選ぶべきか目で問いかけます。すると王女は密かな手の動きで、右の扉だと合図を送りました。この若者は、この合図によって、何のためらいもなく右の扉に近づいて、その扉を開いたのでした。 王女が若者に教えたのははたして美女のいる扉の方だったのか、それとも獰猛なトラのいる扉の方だったのでしょうか?」 いかがでしょうか。私は男なので、彼女の指示に素直に従うか、それとも裏を掻いて反対の扉を開くか考える立場ですが、女性の皆さんでしたらどうされるのでしょうか?お聞きしたいものです。あなたなら、どうされますか?ここで、あなたの心を覗き込んでみませんか?