カテゴリ:建築
工場一面に置かれている鉄骨を見ると建物がどんどん出来てくるリアルな感覚 が沸いてくる。出来上がる過程を実感するのがうれしいのは何故だろう? 確認申請制度の厳格化がなぜ不況になるのか?その一因を考えてみた。 設計事務所が設計を行う際、建築部材のメーカーを特定しないで設計を行うこと が多い。それは、メーカーを特定すると競争の原理が働かず建設費が高くなって しまうからである。メーカーを特定するとメーカーは図面をサービスで書いてく れるが、そうすると競争の原理が働かず建設費が下がりづらくなる。 しかし、確認申請に提出する図面や書類が膨大になってきたため、設計事務所は 膨大な図面と書類をそろえるために。メーカーに無料で、図面の作成を依頼す る。そうすると、メーカーは設計事務所の図面枠にメーカーを特定する図面をただで作図しくれるのである。 ・エレベーター、外壁、ガス設備、防災設備、鉄骨の部材 などのメーカーが図面の手伝いをしてくれる。 こういった工事種目が多岐にわたることで、メーカーは特定され競争の原理は働 かず、結果的に建設費は下がらなくなる。 ■事業主(消費者)の不況 その結果、工事費全体が高くなり、建て主が本来、もっと適正な建設費で手に入 れることが出来たはずの建物が、高いものになってしまい事業計画が成り立たな い。→不況になる ■施工者の不況 事業計画が成り立たないため工事が発注されず仕事が減ってしまう→不況となっ てしまう。 ここから先は、元請けのゼネコンや工務店はもとより、サブコン、専門業者、職人にいたる幅広い不況へとつながる。 ■メーカー(作り手の)の不況 メーカーも自社の製品が特定されて利益が出るのかというとそうではなく、本来 設計事務所が書くべき図面を書くための経費がかかる。 また、そういったサービスする余力のない中小のメーカーは、図面で指定しても らうことは困難になり、受注の機会がなくなるのである。→不況になる この問題は、実はさらに深刻な問題をはらんでいる。中小のメーカーによる製品開発、販路開拓が非常に困難になってくることで、特定のメーカーへの寡占化が進み価格の下方硬直性が高くなる。その負担は、やはり消費者にかぶさってくるのである。 まともな競争が行われれば、消費者も施工者もメーカーも得をするのだが、誰一 人喜ばない不毛な競争が展開され、その結果建設費も高くなるという、百害あっ て一利なしの経済活動が繰り広げられているのが現状である。 過度な規制を加え、その先の対応を設計事務所等に押し付けるやり方は、「良い ものを安く」つくるための建築設計の市場原理を破壊し結果的に消費者への負担を増 やしているのである。こうして消費者は価値以上に高いものを買わされていくの である。 役所の担当者は言う。「図面を書くのが大変ならば、施工者やメーカーに手伝っ てもらえば良いでしょう。」 国交省の役人の方々や、各検査機関の担当者は、膨大な書類や図面の提出を求め る前に、こういった建設の世界の仕組みを理解して欲しい。 僕の事務所では、メーカーに図面を手伝ってもらわない。腹を立てながらも、確認 申請の為だけに必要な図面や書類を書いている。もちろん、それが施主の利益になるからで ある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年06月27日 20時58分54秒
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