カテゴリ:建築
東京の多くの建築は正しい断熱がされていません。僕が最初に設計の修行をしたのは北海道の設計事務所でしたが、北海道といえば、極寒の地のイメージで、住んでいる人にとって寒いのは当たり前なので断熱も当たり前。いい加減な断熱の建築なんて、カレーができたのにご飯が炊けていないくらい有り得ない話なのです。東京で設計をしていて感じるのは、北海道での標準仕様が本州での先端技術になっているなということです。決して大袈裟ではなく常に20年くらいは遅れていると感じます。
例えば鉄骨造の建築の場合、鉄は熱を伝えやすいので断熱材を正しく使い熱を伝えにくくする配慮が必要です。木造の場合は、外壁面に木の柱を配置しても問題は起こりませんが、鉄の柱を外壁面に配置すると、冬の場合は室内の熱が鉄骨の柱の部分からどんどん外に逃げていきます。これは木と鉄の熱の伝わりやすさが違うからです。鉄の熱伝導率は48.05W/m・Kで、杉の熱伝導率は0.097W/m・Kなので、鉄は木よりも約500倍も熱が伝わり易いのです。ですから、鉄骨造での断熱は木造とは違った注意が必要になります。これを間違えると、結露が発生し、壁にカビが生えてしまいます。 あと、良く見かける失敗が、エレベーターシャフトの断熱をしていない建物が多いです。東京で仕事をし始めてエレベーターシャフトも断熱するように図面に描くのですが、工事業者の内、8割位の業者が、「エレベーターシャフトに断熱はいりませんよ」と言ってきます。しかし、ここの断熱を怠ると、通常のエレベーターはエアコンが付いていないので、夏はエレベーターがとても暑い、冬はエレベーターシャフトの壁面が結露し、ひどい場合は結露水がエレベーターホールにしみてきたり、目に見えないエレベーターシャフト内の鋼材が錆びたりします。 更にいうと、ピロティー部分の上の断熱不足、屋根の断熱不足、床暖の下の断熱不足。あげるときりがありません。鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合、正しく断熱するのはコツがあります。設計の際、平面図や断面図の断熱材の部分に色を付けてみるのです。そして、その色が途切れないように室内と外を仕切っているように配置すれば断熱の欠損がなくなります。建築は、見た目も重要だけど、目に見えない断熱も重要。人と同じですね。見た目は良くても中身が冷たい人ってイヤですよね。長く付き合うなら暖かいのが良いです。 現代風水建築家?金谷直政 かなや設計 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年07月05日 16時01分02秒
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