詩人たちの島

2005/01/23(日)11:15

連詩7

連詩(33)

A Time to Mourn   老婆の悲嘆のように鈍くてかすかな脈拍が聞こえる 暗いジャングル 妨害電波の網を潜り抜けたかすかな脈拍が声になる Muy Buenos Dias! 未明の声がよびかけるとき、忘れられた朝がよみがえる 暗い谷間に響くサウンドトラック 英己 05/1/9 アイルランドでは 妖精は「良い人たち」 いたずらの上手な「良い人たち」だ アジアでいたずらが上手なのはだれか? 大津波にさらわれ 二週間インド洋を漂流して 助かった青年が けさのニュースの主役   健二 05/1/11 スクナヒコナは小さい神さま 粟の穂をぴょんと飛んでいく蚤のような神さま 波の果てにあるというまぼろしの 常世の国から来て穀物の種子をくれた善意のひと でも善意のひとはつねに時代の異端者、歴史の端役 波間に消えて忘れられた神さま 豊美 05/1/13 飢饉や戦争も一回だけってことはなかったのにね 「一回性」の神話にとらわれて「悲歌」が地下室で歌われ 厚着をした人たちが自分たちの神様を祭っているよ 動くことが大切なのに どう動けばいいのかわからないままに あるいは動かされるままに 多くの忘却を歌いすぎたので思い出すのに疲れて 英己 05/1/15 むこうからも こちらからも 作戦のたてようがない 愚かさのかたまりとなって 漂流する夢を見る ボートも来ない 筏も来ない この部屋の 結露でくもった窓の外を だれかが通った 自信のない神様のように通った 健二 05/1/16 ザラザラしたもの カビの生えたものでノドをいっぱいにして もう壊れるしかないという不幸 戦争が終わったとき一番元気だったのは誰? 信じられないだろうが 一番元気だったのは飢えた蚤たちだった 空腹の言葉たちだった                  豊美 05/1/18 森の入り口で 洞穴のそばで 引き返せない歩みを歩む人よ きみの牙はまだとがっている やさしい仕草に満ちた愛らしい獲物の罠にかかり 生きているが死んでいる 死んでいるが生きている 英己 05/1/20 夢のなかの 洞穴の奥は テレビカメラが去ったあとの神戸だ テレビの嘘を信じない瞳に見つめられ きょう さらに壊れてゆくもの ――十歳ずつ年をとった さまよう家族の心のなかに 幼い死者が生きているほどに 私たちは生きていない 健二 05/1/22

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