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2008.06.25
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テーマ:ニュース(99476)
カテゴリ:カテゴリ未分類
写真 洋上(左、6月16日)や台北の交流教会前で抗議活動をした(右、6月12日)のは少数派だが、馬総統は少しずつ中国寄りに舵を切る


東アジア 沈没事故が浮き彫りにしたのは世論の変化により、馬新総裁の外交手腕への不安だ
  ジョナサン・アダムス(台北支局)

 台湾ではあまり見かけない光景だ。6月18日、台湾における日本の窓口(事実上の大使館)である交流協会の台北事務所の前で、怒れる人々が「釣魚台を守れ」と記されたプラカードを掲げ、日の丸の旗に火をつけた。
 怒りの原因は6月10日の事件。日本と中国、台湾の間で領有権が争われている尖閣諸島(台湾名釣魚台列島)の沖で、日本の海上保安庁の巡視船と台湾の遊漁船が接触し、遊漁船が沈没した。
 この事件を機に台湾は突然、反日になったのか。そうとは言いがたい。18日に集まった抗議活動家はわずか15人ほど。警備の警察官のほうが多かったくらいだ。
 しかも参加者の半数は、台湾住民ですらない。彼らは香港に拠点を置く「保釣(釣漁防衛)行動委員会」のメンバー。この団体の活動家は頻繁に台湾を訪れて、この島々に対する中国・台湾の領有権を訴える活動を主導している。「事件には憤慨している。中国の人々の意見を表明するためにやって来た」と、陳多偉(チェン・トゥオウェイ)会長は言う。「釣魚は中国領だ」
 一般の台湾人のほとんどは、陳ほど激しい怒りを感じていないようだ。確かに、日本側の行動は行きすぎであり謝罪すべきだと考えている人は多い。与党・国民党の一部議員は世論の反日感情をあおり、もっと断固たる姿勢を取れと政府に要求。13日には劉兆玄(リウ・チャオシュアン)行政院長が「開戦の可能性も排除しない」と発言した。
 しかし全体としてみれば、対日世論はきわめて好意的なままだ。「不幸な出来事だったが」と、台湾の駐日代表機関「亜東関係協会」の会長を務めた羅福全(ルオ・フーチュアン)は言う。
「この8年間、台湾と日本の関係は歴史上最も良好な状態にある。今回の事件でそれが変るとは思わない」
 強い反日感情をいだくのは、おおむね中国本土出身者(外省人と呼ばれる)。人口に占める割合は約14%にすぎない。台湾人意識より中国人意識の強い層ほど反日感情をいだきがちだが、最新の世論調査によれば、「台湾人」ではなく「中国人」という自己認識だけをもつ人は全体の5.4%でしかない。

日本より中国が大事?

「軍艦を送り込むべきだと考えている人はあくまでも少数派」だと、羅は言う。「ああいう勢力はこの事件を利用して半日感情をたきつけようとしているが、その試みは無駄に終わるだろう。私に言わせれば、現代の義和団の乱(清朝末期に外国勢力排除をめざして失敗に終わった動乱)だ」
 今回、一時的に対日感情を悪化させた台湾住民がいたとすれば、その一因はメディアの過剰報道にある。マスコミの競争が激しい台湾では、視聴率や販売部数をかせぐために、対立や紛争はセンセーショナルに取り上げられる。
 遊漁船事故も例外ではなかった。テレビ局の記者は外交部(外務省)当局者に群がってコメントを求め、日本に敵対的な国民党議員の発言を延々と紹介。トーク番組のコメンテーターは日本の行動を激しく非難し、政府の当初の「弱腰」を攻撃した。メディアの関心が次の事件に移ると、反日フィーバーはたちまちしぼんだ。
 世論の反日感情はすぐに沈静化したものの、一連の出来事は別の長期的な問題を浮き彫りにした。今年3月の台湾総統選挙で当選した馬英九(ハー・インチウ)総統の対日政策と危機管理能力に疑問が持ち上がっているのだ。
 馬が総統に就任して、台湾外交に変化が起きはじめている。馬が重視するのは中国との関係改善。とくに台湾経済のてこ入れのために、本土との経済関係の緊密化を急速に推し進めている。
 問題は、対中接近と引き換えに日本との関係が軽んじられるのかという点だ。馬自身は、日本を軽視するつもりはないと主張。総統選では、日本に関する知識が乏しいとの批判に対して、自分は「知日派」だと反論した。
 この説明に、すべての人が納得しているわけではない。馬は5月20日の総統就任演説で一度も日本に言及しなかったうえに、外交部内に05年に設置された対日政策チームまで解体してしまった。
 香港出身の馬は中国ナショナリズムと、1930年代後半の日本軍の中国侵略以来の激しい反日感情の伝統のなかで育った。日本軍占領下にあった第2次大戦中の中国を舞台にした映画『ラスト、コーション』を見て、馬は中国の群衆が「中国は滅びない」と叫ぶ場面で涙を流したといわれる。若いころは、尖閣諸島問題で台湾の領有権を訴える活動に参加していたこともあった。

新総統の危うい綱渡り

 遊漁船沈没事件をめぐる馬政権の危機管理能力の欠如と対応のまずさを批判する声もある。台湾の人々の目には、ある日は政府が日本に対してあまりに弱腰にみえたかと思うと、次の日には軽率に戦争の可能性を口にしているようにみえた。
 台湾のテレビ局TVBSの実施した世論調査によると、馬政権の対応を評価している人は38%。一方、評価しないと応えた人は45%に達した。
 問題の一端は、この新総統の対日政策の全貌がまだ見えてこないことだ。国民党内の強硬派は、日本ではなく中国と関係を強化することが台湾の長期的な利益になると考えているが、話はそう単純ではない。実際には、馬は中国との関係改善を進めつつ、日米との事実上の同盟関係を維持するというむずかしい綱渡りを強いられる。
「中国と日米に等距離で接したいというのが馬の意向だ。それが台湾の利益を最も拡大できる道だと考えているからだ」と、野党・民進党の外交政策責任者、林成蔚(リン・チョンウェイ)は言う。「ただし、馬政権がそのバランスをうまく取れるかどうかはまだわからない」
 いずれにせよ、馬の外交政策が前政権と大きく変るとは考えづらい。台湾の安全保障は、日米に大きく依存している。もし中国が台湾を攻撃した場合、アメリカによる台湾防衛の中核を担うのは在日米軍基地だ。
「国民党は対日政策を変えるかもしれないが」と、ある国民党関係者は言う。「もし変化があったとしても小さな変化にとどまる。日本の存在はあまりに重要だ。日本と良好な関係を保つことは、台湾の安全保障にとって欠かせない」
 台湾メディアにとっては、悪いニュースかもしれないが。
 (ニューズウィーク 2008.7.2)


 
 尖閣諸島・魚釣島沖で台湾の遊漁船が日本の巡視船と衝突後沈没した事故で、16日未明に台湾の抗議線と巡視船の計10隻が尖閣沖の日本領海に侵入した。台湾当局の船まで尖閣の日本領海侵犯するのは初めてという。
 6月25日付読売新聞は「馬英九政権の対日政策」を掲載、対日政策の要点は次の2項であるとする。
(1)陳水扁政権から一転、馬政権は日本と距離を置く一方、対中改善の姿勢を見せている。
(2)親日派世代が政財界から退きつつある現実を踏まえ、対話を強化する必要がある。

 記事は下記のように述べている。

 主権を日本に強く主張しなかった李登輝、陳両政権とは異なり、国民党の馬政権が、厳しい対日姿勢に傾きやすい体質であることをうきぼりにした。今後も、主権問題や歴史認識問題では強い姿勢を示す可能性が高い。
 日本は、李、陳両政権と比べて「中国寄り」(民進党)になった台湾の現実と、日本に複雑な感情を抱く住民がいる実情を直視し、安全保障上重要な台湾との関係構築と対話に真剣に取り組む必要がある。馬政権は、自由貿易協定(FTA)や漁業協定の締結、留学生交流の拡大を日本に求めている。日本も台湾の知日派の養成を急ぐとともに、孤立感を深めている台湾を、世界保健機構(WHO)など国際的な枠組みに参加できるような支援を強めるべきだろう。(6月25日 読売新聞)





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最終更新日  2008.06.26 00:45:30
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